世界保健機関(WHO)の保健システム分野における求人情報の記述統計的分析

私自身がJPOとして国際機関で生き残らなければならない立場であることを踏まえ、WHOの、特に私の関心領域である保健システム分野の求人情報を分析してみた。残念ながら商業誌に投稿する程のものではないのだが、将来はWHOで仕事がしたい!という方には有益な内容であり、本noteにひっそり公開することにした。

公開から年数が経ち多少データが古くなっている点は否めないが、採用に関して同様の傾向は今でも続いている。有料記事ではあるが、ぜひお手に取って頂けると幸いである。


追記:記事投稿から約1年が経過したので、減価償却のつもりで値下げしました(2019年9月)。



背景

世界保健機関(World Health Organization; WHO)はすべての人が、人種、宗教、政治観、社会経済的状況によらず最高水準の健康を享受することを目指し、1948年に設立された国際連合の専門機関の1つである(1)。2018年5月に開催された第71回世界保健総会ではWHOの第13次総合事業計画(thirteenth general programme of work; GPW13)が承認された(2)。このGPW13ではWHOの2019年度より5年間の戦略的優先課題の1つとして加盟国のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(universal health coverage; UHC)達成を挙げている(3)。UHCとは、ある国において全ての人々が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、必要な時に支払い可能な費用で受けることができる状態であり、そのために保健システム(保健財政制度、保健ガバナンス、サービス提供体制、等)を強化することが求められている(4)。日本政府もWHOのUHC達成への取り組みを支援している。

Junior Professional Officer (JPO) 制度とは、国際機関と拠出国の合意に基づいて、拠出国の資金により、主に拠出国の国籍を持つ若者を対象としたエントリー・レベルのポストを当該機関に作成することができる制度である(5)。日本では主として外務省国際機関人事センターが運営している(6)。JPO制度を利用して国際機関で勤務する若者は、同制度からの卒業後に国際機関において正規ポストを獲得することが期待されている。しかし国際機関の正規ポストは競争が激しく、その獲得は容易ではない。そこで国際機関の求人情報から、どのような技能・経験を有する人物が正規職員に期待されているのかを把握することは重要である。WHOにおいては、UHC関連領域には今後資金が集まりポストが増加することが期待されており、同領域の求人情報を精査する意義は大きいと言える。

方法

本研究の目的は、WHOの保健システムの領域において、どのような技能・経験を有する人物を正規職員として求めているか理解することである。そこで著者は2018年6月から9月にかけてWHOの求人サイト"Stellis"に掲載された求人情報のうち保健システムにカテゴライズされたものを抽出した。本研究ではinternational staffを対象とする正規ポスト(fixed-term及びtemporary appointment)を組み入れ、national professional officer及びコンサルタントの求人は除外した(7)。これらについて記述統計的に分析を行った。解析にはMicrosoft Excel 2016を用いた。

結果

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