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ポストを作って国際機関で生き残る

幸いなことにJPOを卒業した後にtemporary appointmentという任期付き正規職員(仮)のような立場でWHOに残留することができた。率直に言って嬉しい反面、任期は1年間でその後延長できるか不透明なので、首の皮一枚で繋がっているようなものなのだ。就活は続けなければならない。

このポストは上司と交渉して、現職場に増設してもらったポストである。他の国際機関の事情はよく知らないが、JPOから空席公募を通じてWHOの正規職員に選ばれるハードルは高い。空席公募のボリュームゾーンはP4~5のようなマチュアな専門家である。P2~3の空席公募をたまに見かけるが、実はstrong candidateが既にいたりする。なのでポストを作成してもらうのは、JPOがWHOに残留するための有力な方略である。

とは言え、そう簡単に上司が首を縦に振る訳ではないし、他にもクリアしなければならないハードルがある。以下にポスト作成~獲得までのプロセスを簡単にまとめた。

1. 上司に残ってほしいと思われる

何はともあれ、あなたに残って欲しいと上司が思わなければ何も始まらない。上司の信頼を得るためには、①仕事で成果を上げる、②上司との人間的相性、の2要素が大きいと考えている。①はあなたの努力でどうにかなるかもしれないが、②はどうにもならないかもしれない。また①は、ポストのTORとあなたの専門性が合致していることが重要だと思う。まぁこのネタは非常に深いテーマなので、いつか別個に掘り下げたいと思う。

上記を前提として、あなた自身から「私は国際機関に残りたいんだ」という希望を定期的に上司に吹き込む必要がある。元々のwork planにないポストを増設するには内部手続きに時間がかかるので、遅くてもあなたの任期が終了する半年前には動き出す必要がある。逆算すると任期終了の1年前ぐらいから、JPO終了後について話をするべきなのだろう。

ここで難しいのは、上司の信頼を得るのは必要条件だが十分条件ではないという点である。JPOは国際機関にとってタダの労働者なので、JPO卒業生を正規職員として雇うのでなく、新しいJPOを雇えばいいじゃんと考える上司もいるかもしれない。あなたを残す気がない上司に滅私奉公していても先がないので、他の手段にフォーカスした方が良いかもしれない。このように上司の人事に対する考え方を早めに見極めるのも大切である。

2. 資金を確保する

人を雇うには金が必要である。特に正規職員のポストを作成するとなると、給料以外にも保険料や年金の大半を使用者が負担しなければならない。同じ等級のコンサルタント(=契約社員)を雇うのと比較して、人件費がざっくり2倍になる。一方で、過去の投稿でも言及したが、WHOの歳入はイヤーマークされた任意拠出金が大半を占めている。つまり健康課題によって資金の潤沢さが異なる。どんなに上司があなたに残ってほしいと思っていても、必要な資金を確保できなければポスト増設は難しいだろう。

もしあなたが取り組んでいる健康課題が資金難に苦しんでいる分野なら、JPO期間中に資金が潤沢な分野に手を出すのも一考かもしれない。筆者は新型コロナウイルス感染症の流行初期からコロナ対応に(否応なく)関わっているのだが、結果的にはそれがプラスに働いた。とは言え、金のために全く興味がない健康課題に取り組むのも違う気がする。またあなたが他の分野に手を出す(=他の部署・上司の下で働く)ことを、上司は快く思わないかもしれない。ここら辺の議論は単一の正解はない。

とは言え、あなたのポスト作成の依頼を断る方便として、金がないというフレーズが用いられるかもしれない。その場合に真に問題なのは資金難ではなく、その前段階、すなわち上司から残って欲しいと思われてないことだろう。つまり"1"をすっ飛ばして"2"の金の話をしても意味がない。

3. 選考を勝ち抜く

上記"1"と"2"をクリアしたら、正式にポスト作成を申請することになる。しかし、そのポストはあなたを採用することが確約されたものではないので、注意が必要だ。自分が交渉して作ったポストを他人にかっぱらわれたら怒り心頭なので、確実に死守したい。どれくらいガチで競争しなければいけないかはfixed termかtemporary appointmentによっても、また契約期間によっても異なる。ちなみに筆者の場合はtemporary appointmentにも関わらずfull competitionになってしまった。

国際機関によって選考プロセスが若干異なるのだが、WHOの場合は筆記試験と面接の2段階方式である。詳細は暴露すると怒られそうなので割愛するが、双方ともに入念な準備が必要である。試験はeliminatoryの場合が多いので、落ちると面接に進めない。面接はコンピテンシー面接なので、(筆者の場合は)慣れるまで半年以上かかった。WHOの人事部JPO担当の皆様には大変お世話になり、どれだけ感謝しても感謝し足りない。

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