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帰国子女のアイデンティティ

以前、何かの音楽番組で見た宇多田ヒカルのインタビューを見て、すごく印象に残っている言葉がある。

「アメリカにいる時は日本人。日本にいる時は外国人みたいな日本人。アメリカ人にも日本人にもなりきれなくて、自分がどういう位置にいる人間なのかがよく分からなかった」


それまでのわたしの人生では、「帰国子女=海外経験が豊富で語学も堪能=かっこいい」くらいのイメージしか無かったので、
「どちらにもなりきれない」という何だか苦しそうな表現にすごく驚いた。


でも、今はちょっとだけその気持ちが分かるような気がする。

6歳長男の苦悩

我が家はアメリカ在住歴五年目で、長男は現地の幼稚園年長。
幼稚園生といえば色んなお喋りが上手になってくる年頃で、子供同士の会話でも大人がびっくりするような話を展開していたりもする。

ただ、まだまだ日本語の方が得意な長男は、家でのお喋りノンストップモードに対して学校ではシャイボーイスイッチが入るようだ。

性格のせいもあるとは思うけれど、学校では「先生や友達にほとんど文句を言わない優しい子」とコメントをもらったことがある。

実際は、「言わない」というよりかは「どう伝えたらいいのかが分からない」だけなんだと分かるので、先生と話す機会にはいつも「まだ英語で自分を表現するのが苦手だから、どう思っているか、どう感じているかを聞くようにしてもらえたら嬉しい」ということを伝えている。

ちなみに、通っている学校では、英語が主言語でない生徒に対して、英語を学ぶための補習授業のようなものを開催してくれるので、その授業を受けるようになってから長男の英語力はどんどん伸びている気がする。

英語の先生も言っていたけど、子供の言語学習能力というのは本当に目を見張るものがあって
大人がやるのとは別次元のスピードで新しいことを吸収していく。

きっと、あと数年もたてば今度は日本語の勉強が嫌いになって、
「漢字難しいからやだ~覚えられない~~」とか言うんだろう。

ただそれでも、今の彼が『英語環境に置かれた日本人』として毎日必死で戦っていることは確かだ。

外国人みたいな日本人?

一年~一年半に一度ほどは日本に帰国して、数か月を実家で過ごしている。

日本にいる間、ずっと家にいるのも刺激がないので、実家近くの保育園に一時保育の形で通わせてもらうこともしばしば。
(定員も多く対応が厳しい中、いつも受け入れてくださる保育園にはとっても感謝しております)

去年の夏も、そんな感じで一週間に1~2回保育園に通ったものの、保育園に行く日の朝は浮かない顔をする長男。
どうも、以下のようなことがあって保育園が嫌だった模様。

・プール遊びのある日は、みんながいるところで着替えをする。
(アメリカでは人前で裸になる=普通しないこと、恥ずかしいことというイメージがある。小さい子でも親とお風呂に入ることを嫌がることも)

・お昼ご飯の給食は全て食べきらないといけない。
(アメリカの給食は好きなものを取るビュッフェスタイル。また、食べない分は捨ててしまう)

・おうたの時間の歌がよく分からない
(昔からあるような童謡は知っているけど、新しい曲や流行りの曲が分からない。)

3歳の頃に通っていたときには気にならなかった、長男の常識≠日本の常識になってしまっているギャップが、わたしが考えていたよりも大きくなってきているようだった。

長男が少しでも楽しく学校へ行けるよう、どういうところが困るのか、どうしたらいいと思うか、学校へ行った日や行く前日には出来るだけたくさん長男と話をするようにした。

結果的には、嫌がったり喜んだり浮き沈みをしつつ、最終日には「もうこれで終わりなんて嫌だ!」なんて言うほどには満喫できたようだけど、このギャップは恐らく年々激しいものになっていくに違いない。


アメリカで暮らすとき、現地の生活になじめるよう
アメリカのことば、アメリカの文化、アメリカの風習に慣れようと必死に頑張っている長男。
なのに、そこで努力した分だけ、日本に帰ればそれが今度は障害となって新たな戦いを連れてくる



・・・こういうことか、と思った。


彼はこの先も、わたしが想像するよりももっとたくさんのギャップに苦しみ、悩んで、泣いたり笑ったりすることになる。

でも、それは彼にとって確かな財産であり、彼をつくる大事な一部になるはずのもの。
彼の境遇でしか得られなかった経験が、彼にしかできないスキルや彼にしか分からない価値観を生んでくれるはず。


彼がそれをポジティブに捉えられるよう、
この境遇をハッピーなものにしていけるよう、
母親の自分ができることをちゃんと考えていきたい。



記事だけでなく、こんなところまで目を通して頂いてありがとうございます^^ 普段は肝っ玉母さんを演じていますが、こんなわたしをサポートして頂ける方の前ではごろにゃん甘えたい欲望が抑えきれません(:Д:) 何よりも、応援したいと思ってくださったそのお気持ちに感謝いたします