グローバル商品開発の基本④「世界市場で売るための食品添加物の使い方」
~食品添加物はINS番号で管理し、多くの国で使われているものを使う~
今回は『世界市場でヒットする食品』を開発するための一番のキモとなる話を説明します。世界市場でヒットする食品を作るには、美味しくて・安くて・販売期限が長くても、そもそも食品添加物がその国で認められていないと、どうしようもない・・・という話です。
食品添加物は国毎に使えるものが違います。モノ作り国家である日本は、食品添加物メーカーがどんどん新商品を作ります。そして許可を得て日本で販売しています。そんな新しい食品添加物は、広く海外で使えるわけではありません。また、日本独特の食品添加物も海外でも使用が認められていません。
世界でヒットする商品を開発するには、そもそも世界で広く販売できる食品を開発する必要があります。そのためには、世界各国で使用できる食品添加物情報を知る必要があります。海外で認められていない食品添加物を使用すれば、その国に輸入することができないからです。
香港やシンガポールやマレーシアやカンボジアなど、例外的なルール(香港は年間3万個以内の販売は簡易ルールで輸入可能)がある国や、国のルールと運用が異なるために輸入できてしまう国もあります。更に、闇ルートで食品を輸入する会社もまだ存在します。そのため一部では食品添加物を海外対応しなくても海外に輸入できたりする例外もありますが、基本は食品添加物しっかり管理する必要があります。
日本で使用が認められている食品添加物は828(指定添加物365・既存添加物463 :)ほどあります。当社が作成した『食品添加物海外対応ガイドライン』で記載している世界の主要18の国や地域の平均数は307ほどです。各国で認められている食品添加物の数は日本が突出して多いのが現状です。そのため日本の感覚で商品を開発すると必然的に世界で販売できる商品には出来上がりません。つまり世界で食品を広く売るためには、添加物をグローバル対応する必要があり、商品開発の時点で食品添加物をどう使用するか設計する必要が出てきます。
食品添加物はINS番号で管理するのが一般的です。日本100ヵ国以上に食品を輸出する日本最大の食品輸出商社では、商品提案にいくと、商品を海外に提案する以前に商品登録が必要となり、仕様書の提出が求められます。そしてその仕様書にはINS番号を記載する必要があります。
食品メーカーが自社で使っている食品添加物をINS番号で管理していないと、営業に行っても門前払い扱いとなってしまいます。逆の言い方をすれば、INS番号管理をしていて、販売期限が長くて、リーズナブルな価格の商品であれば、取り扱ってもらいやすくなります。
INS番号(INS NO.)とはCodexの食品添加物の国際番号システム<International Numbering System for Food Additives>のことです。そのため食品を海外に輸出する際には、食品添加物をINS番号で管理する傾向にあります。
INS番号とほぼ同じ番号を使用するEU式のE番号や、米国式のCFR番号もあるためEUや米国に輸出する場合はそちらの提示が求められることがありますが、少なくとも使用している食品添加物のINS番号を知っておく必要があります。なおE番号とINS番号は数字部分は共通であり、E番号はINS番号の前にアルファベットのEが付きます。EUで認められてない添加物で各国が使用する添加物にも番号を付しているためINS番号の方の数がE番号よりも多いです。
しかし、日本国内の食品メーカーには自社がどんな食品添加物を使用しているか知らないのが現状です。それは、日本が食品の原材料表示の裏面に一括表示を採用しているからです。多くの日本の食品メーカーさんは、食品添加物メーカーや添加物卸から食品添加物MIXを原料として仕入れ、その際に一括表示で使用する表示を教えてもらうために、実際自社がどんな添加物を使っているか知らないのです。
それだけ食品添加物メーカーや卸の機能が日本では発達しています。海外の食品メーカーは自社工場にラボがあり、食品添加物MIXではなく、純粋にINS番号のある食品添加物を原料として仕入れ、そこで自社オリジナル商品につかう食品添加物の配合を開発します。
日本の食品メーカーは、食品添加物卸から、既に食品添加物を複数以上MIXしてある原料(食品添加物MIX)を原料を購入するので、実際どんな食品添加物を使用しているか知らない場合が多いのです。
輸出するためにINS番号の開示を、食品添加物メーカーや食品添加物卸に依頼すると拒否をされるケースも多々あるので、食品メーカーは本格的に海外に自社商品を売ろうとすると、食品添加物の仕入れルートを変更する必要が出てくる場合があります。それは既存の食品添加物メーカーや食品添加物卸が、INS番号管理を出来ないため、又は情報開示しないからです。
要は、日本と海外では使用できる食品添加物は異なり、国内向けに作った商品を広く海外に輸出できるとは限らないというのが実情です。海外のディストリビューターや小売や飲食チェーンからすれば、そもそも自国に輸入できるかどうか分からない商品を営業されるのは甚だ迷惑な話です。しっかり海外向けに商品開発をして、自国に対応した食品を紹介して欲しいと海外のディストリビューターは考えています。
そんな食品グローバル商品開発の手順を全て飛ばして、展示会で行政に紹介された海外のディストリビューターに日本で売っている商品をそのまま営業し、添加物情報の提示を求められ、INS番号が分からず、あえなく初回商談で撃沈する食品メーカーが後を絶たないのです。この食品添加物のグローバル対応が海外攻略のキモとなります。
そして多くのディストリビューターから「なぜ、日本の行政はそういう添加物教育や販売期限教育をしないでマッチング支援ばかりしているのか?山崎に教育してもらいたい!」そう何度も私は話を受けてきました。イオン在社時に行政の上の方々10人くらいからヒアリングをされ、この話をしたが全く無視をされた経験もあります。
具体的にどうすれば良いのか、という話ですが、主要国で使用が認められている食品添加物を使って商品開発をすれば良いだけです。そんな食品添加物のグローバル対応をするための「食品添加物グローバル対応マニュアル」を食品メーカー・食品卸向けに当社は販売しています。
詳しくは「食品輸出の学校」で解説しています。ぜひご確認ください。
株式会社グローバルセールス 代表取締役 山崎次郎
食品輸出の学校 学校長
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?