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食品輸出の基本知識⑥「食品メーカーの海外展開3段階」

~食品メーカーの海外展開戦略を立案する~

海外で自社商品を本格的に売るなら、海外展開戦略を立てる必要があります。戦略と言うと難しそうですが簡単に言えば3つをはっきり明確にすることです。

それは「誰に売るか?」「何を売るか?」そして「どうやって売るか?」ということです。今日はこの3つの視点について、そして食品メーカーさんが本格的に海外展開をした先には何があるのか、という説明をします。

「誰に売るか?」ということは、『国内の輸出商社』と『海外のディストリビューター』と『海外のEC企業や小売業や大型飲食チェーン』というのが結論なのですが、どんな企業に売るのかという視点だけでなく、どんな消費者に売るのか、どんな飲食品に売るのか、どんな国やエリアに売るのかという話もあります。

そこを最初にはっきりさせないと後の対応が変わってきます。それをはっきり決めないでいきなり営業に行くから、そもそも輸出できない商品や海外で受け入れられない商品を営業してしまい成果が上がらないのです。

「誰に売るか?」ですが、どんな企業に売るのだがこれは答えはほぼ2つにです。『日本国内の輸出商社』と『海外のディストリビューター』この2つが主なターゲットです。

海外のディストリビューターには日本食品を取り扱うディストリビューターもあれば、日本食品を取り扱っていない日本以外の輸入食品を取り扱うディストリビューターもあります。酒や生鮮の専業ディストリビューターを狙う方法もあるのでしっかりどんな会社に売るのか検討をしておきたいです。

商品によっては多くの食品メーカーさんが売りたがる日本食品のディストリビューターではなく、未開拓の専業ディストリビューターも検討されることをお勧めしています。

次に、小売用商品の場合、どんな消費者に売るのかを検討するのですが、欧米の高所得者に売るのか、アジアの富裕層に売るのか、今後爆発的に人口が増えるアジアの中間層に売るのか、現地の日本人に売るのか、誰に売っていくのか決める必要があります。

日本の店頭価格の2倍や3倍の値段の商品が本当に現地で大量に売れるのか国毎にしっかり検討した上で、無理だと思うなら現地OEM製造などの対策を講じる必要もあります。

菓子などのかさばる低単価商品が輸出で大量に売れるのは、香港・台湾・中華人民共和国・シンガポールくらいです。

そして輸入するのにハードルが高い国と低い国があります。香港やシンガポールやマレーシアやカンボジアは輸入規制が少なく比較的商品が入りやすい国です。そんな商品が入りやすい、ある意味、競争の激しい国を狙うのか、インドネシアのような規制が厳しく競争が少ない国を狙うのか、どの国を中心に狙って成功事例を作るのかを決める必要があります。誰に売る、ということだけでも、調べて決めることが色々とあります。


「誰に売る?」というだけでも検討することは多いですが、次の「何を売るのか?」ということは更に奥が深いです。

まず、小売用商品を売るのか業務用商品を売るのかという大きなポイントがあります。日本は自炊が多いので小売用食品と業務用食品の市場は2:1です。輸出市場は、全く逆の1:2です。小売用商品の2倍の市場が業務用食品にあります。ここは要検討です。

次に、日本で売っている商品をそのまま売り付けようとするのか、海外用に開発した商品を売るのか、という視点があります。

日本の消費者向けに設定した日本の賞味期限を付した商品を売るのか、海外の消費者を意識してCODEXで言うところの有効期限表示(最終消費推奨日)を付した商品を売るのかという視点や、食品添加物は日本対応のままで輸出できる国を狙って売るのか、食品添加物をグローバル対応して世界に向けて売っていくのかということを事前に決めておく必要があります。

そして「どうやって売るのか?」ということですが、『国内の食品輸出商社』に商品を国内取引で売るなら、国内営業をすれば良いだけです。JETROのサイトに輸出商社情報が掲載されているので、しっかり準備してアプローチをすれば良いだけの話です。

商品がグローバル対応していて価格的リーズナブルで魅力的な商品であれば、間違いなく売れます。それも一気に多くの国に売れ、引く手あまた状態になります。グローバル対応というのは食品添加物と販売期限のグローバル対応できていているということです。

しかし、海外のディストリビューターに直接売るには、色々準備が必要になります。海外PL保険へ低コストで加入することや、国際売掛取引のリスクヘッジのための保険へ低コストで加入すること、売手が強く相手がついついサインしてしまう国際売買契約書を準備すること、多言語での商品提案書仕様書(食品添加物情報・製造工程表・原材料成分表)の準備などです。

そういう準備をしっかりした上で営業を開始する必要があります。そのため、海外に直接輸出営業するには少しだけハードルがあります。

「どうやって売るのか?」ということに対する一つの例があります。私の友人にケルビン君という華人がいます。菓子製造メーカーの跡取りで、オーストラリアに留学しその後父親の会社に入社しました。担当したのは海外販売でした。部下なしで1人で海外自社商品を売るという仕事が任され、最初は展示会に出展していたのですが、効率が悪いため直接ディストリビューターに営業するスタイルに変更し、3年で60ヵ国・地域にコンテナ単位で自社商品を輸出するようになったある意味伝説の営業マンです

食品輸出商社の業界TOP3の3番目の会社が70ヵ国くらいですが、1人で3年で60ヵ国というすごさをご理解いただけると思います。

私はこのケルビン君と仲良くなり彼の営業方法を3日間かけて聞き出しました。そして5年ほど前、マスコミの方にその対談を聞いていただきまいたが、ケルビン君の話のレベルが高すぎて記事にできないということでした。

しかし、考えてみると現在は行政のマッチング支援も充実していますし、営業先を見つけることは特に難しいことではありません。難しいのは、最初に食品添加物と販売期限をグローバル対応し、リーズナブルな価格の商品を現地で販売できる仕組みを作るということです。

こうやって、「誰に売るか?」「何を売るか?」そして「どうやって売るか?」そして時間軸と量や金額を加えた「いつまでにいくら」を加えたものが、初期段階の海外展開戦略となります。それを経営者と共有して、海外展開をスタートする必要があります。


また、食品メーカーが本格的に海外展開することを考えると、過去の食品輸出の歴史も知っておく必要があります。

食品メーカーの海外展開の歴史はある意味、キッコーマンさんの海外展開の歴史と言えます。キッコーマンさんの取り組みは書籍にもなっておりネット上で記事にもなっているためぜひ確認していただきたいです。

醤油という調味料はもともと海外では全く認知されていない日本独自の調味料でした。それをメニュー提案や試食に力を入れられて、普及をされたことは素晴らしいことであり、とても参考になります。海外で認知されていない日本の食品を売るのは本当に大変なことです。

既に認知されている商品と認知されていない商品では海外に売っていくにはハードルの高さ・難易度が全く異なります。

例えば、お菓子と言えば世界中お菓子です。どこでも誰にでも認知されています。青汁やフリカケやダシなど、そもそも海外では全く食べられていない商品は全く海外では認知されていません。

その商品がいったい何なのか、そこから説明する必要があります。既に知られている(認知されている)商品と認知されていない商品を売っていくにはそれだけ認知してもらうことに労力を使う必要があります。

マレーシアでは「サンバル」という全国民が大好きな調味料があります。日本なら麺つゆのような存在です。麺つゆは、どんな麺にもかつ丼や親子丼や料理調味料としても使える万能な調味料です。サンバルもそんな感じのものなのですが、例えばこのサンバルを日本に輸出しようとするとそもそもサンバルって何なのか。どうやって使うのか。どうすれば料理に使えるのか。そうやって、認知されていない商品を輸出するにはそんなことも考える必要が出てきます。


食品メーカーが海外展開を成功した事例を記載した本は多いですが、成功事例には共通点が2点あります。それは「最初は輸出をして市場を確認したこと」、そして「本格展開時は自社工場を海外で設立し内販しただけなく周辺国への輸出に取り組んでいること」です。

私がマレーシアで勤務し、海外で初めてトップバリュの海外販売を開始したのが1995年の当時のジャジャジャスコのバンダウタマ店の開店の時でした。私はイオングループで初めて海外でトップバリュを販売しました。当時はバンダウタマ店の食品の責任者と日本食品の仕入バイヤーを兼務しており、自分で調査し西濃運輸さんと組んで、日本からコンテナでトップバリュを混載してマレーシアに輸入し、輸入ステッカーを自分で1枚ずつ商品に貼りながら店頭に並べて販売しました。

トップバリュは価格が安く大人気商品となりました。トップバリュのマヨネーズやインスタントラーメンは市場価格の半額以下だったのでケース単位でどんどん売れました。

その後2018年までイオンで海外の仕事に勤務しながら多くの食品メーカーの海外展開を見てきたましたが、食品メーカーの海外展開は3段階で行われることが多いと分かりました。

第1段階は「輸出」であり、第2段階は「現地OEM製造販売とブランド浸透」であり、第3段階は「法人と工場設立による本格進出」です。

第1段階では、①輸出の本格的な取り組みを開始。②できるだけ多くの国への輸出しながら各国の市場を把握。③本格参入するターゲット国を決定し、代理店を開拓して代理店との絆を深める。

第2段階では、④ターゲット国で自社ラインを確保しOEM製造を開始。⑤ターゲット国で本格的な販売を開始してブランドの認知を進める。⑥ターゲット国の周辺国で代理店を開拓し輸出販売を開始。⑦次の段階を見据えターゲット国に駐在員事務所を設立。

第3段階では、⑧ターゲット国で法人を設立し、販売している商品の自社配送を開始して自社物流網を整備。⑨ターゲット国に自社工場を設立し、製造した商品を自社物流網に乗せる。⑩ターゲット国で製造した商品を周辺国への輸出を開始。⑪日本からの輸出実績を確認しながら新たなターゲットとなる本格参入国を決め、その国で代理店を開拓。

そしてそれを繰り返し、ターゲット国を増やして世界に商品を広げていく、そんな形で世界展開を進めていく食品メーカーが多いです。しかし、第1段階はあくまで輸出であり、世界戦略の最初の段階は輸出であるのは共通です。輸出は終わりではなく、あくまでその先に世界展開があることを意識する必要があります。

そうして世界展開戦略を考えた上で、輸出に取り組んだ企業に世界市場を攻略する機会があるのです。

そういう世界展開に成功した食品メーカーさんの書籍を4冊紹介しておきます。(アマゾンのリンクを貼っておきます。)
キッコーマンのグローバル経営
勝つまでやめない!勝利の方程式(日清食品)
AJINOMOTOグローバル競争戦略
「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?

株式会社グローバルセールス 代表取締役 山崎次郎

日本食品を世界で売る会 チーフコンサルタント

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イオンで31年勤務し海外業務に28年関与。2か国9年海外駐在。海外業務・海外商品開発・品質管理のスペシャリスト。食品輸出事業の責任者経験から海外営業・海外商品開発を多数コンサルティング。2020年業界紙「食品新聞」1面最上段で食品輸出ノウハウを20回に渡り連載。食品海外展開支援。

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