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原美和子:外食が安いも今や昔。物価高騰にあえぐ韓国

2月に起こったロシアによるウクライナ侵攻から早半年が経過した。両国の戦況については様々な見方があり、まだ和平への兆しは見えない。

そんな中で、直接的でなくとも世界各国で徐々に日常生活に影響を与えているのが物価高騰である。

日本からは馴染みのある商品の値上げのニュースが絶えず伝わり、米国でも都市部を中心に家賃や生活費の高騰が著しく、物価の安いとされる他州への移住をする人が増えているという話も聞く。

ここ韓国でもやはり、例外ではなく急激な物価高騰が生活を圧迫していることを痛感している。また、異常気象による大雨が直撃し、目前に迫る旧盆にも追い打ちをかける形になっている。


▼5,000ウォン(500円)でランチは今や昔

日本の「土用の丑の日」のように夏場の暑さが厳しい時期に韓国では「初伏(チョボク)」と言って参鶏湯(サムゲタン)を食べる。今年は丁度、7月16日がその日であったが、参鶏湯の価格も今や2万ウォン(日本円で約2,000円)となり、20年前にはソウルでも1万ウォン(約1,000円)で食べられたことを考えるといかに物価が上がっているかを実感できる。

日本と比較しても韓国では特に外食と公共交通機関の料金は特に安く、会社が昼食代を支給するケースが多いものの、ここ最近は外食費も値上がりを続け、会社員達にはとっては毎日のランチも頭の痛い問題になっている。

かつては5,000ウォン(約500円)もあればビビンパやクッパ、キムチチゲなどおなじみの韓国料理をお腹一杯食べることができたものの、普通の街中の食堂であっても今やその価格でランチができる所を探すのは難しい。

ランチ代の高騰によって「ランチ」と「インフレーション」を掛け合わせた「ランチフレーション」なる言葉も登場している。



▼生鮮食品は贅沢品に?

韓国の物価高騰は光熱費や家賃といったものの他に特に著しいのは食料品全般であろう。中でも生鮮食品の値上がりはとどまるところを知らない勢いである。

特に野菜や果物は贅沢品に思える程で、例えば、ホウレン草が1把6,000ウォン(約600円)、キャベツは1玉3,000ウォン(約300円)、大根も1本4,000ウォン(約400円)といった具合である。果物に関しては韓国でも大人気のシャインマスカットは1房15,000ウォン(約1,500円)、バナナ1房5,000ウォン(約500円)、リンゴ1個2,500ウォン(約250円)である。

これだけ見ても、大した買い物をしなくてもすぐに(日本円で)1,000円、2,000円となってしまうことがわかることかと思う。

韓国の食卓には野菜や果物が欠かせないため、生鮮食品の高騰は生活を非常に圧迫していると言える。

▼100年ぶりの大雨が農作物への被害も

そこに先日、ソウルとその周辺を中心に記録的な豪雨が大きな被害をもたらした。特にソウル市の南部は1時間に100mmという100年ぶりという豪雨であり、街中に一気に水が押し寄せ、車が浸水して立ち往生するなど大混乱となった。

この豪雨では死者・行方不明者も出て、世界各地で近年起こっている異常気象が韓国でさえも「対岸の火事ではない」という現実を突きつけられた格好となった。

さらに、人的被害のみならず、ソウル近郊の農地では農作物が壊滅的な被害を受け、物価高騰にさらなる拍車をかけるのではないかと懸念が広がっている。

韓国ではまもなく9月に旧盆の連休がある。旧盆では先祖に感謝の意を込めて多くの料理を準備して供えるものの、今年は特に金銭的な負担も大きくなりそうである。

この旧盆だけではなく、数カ月後の冬にはキムチ漬けをするキムジャンも行われる。韓国の伝統行事を守っていくのもこの物価高騰は避けては通れない問題となりそうだ。

(書き下ろし)

参鶏湯が1万ウォン以下(約1,000円)で食べられたのも今や遠い昔のようだ。
スーパーの様子。こちらは梨が3個で12,400ウォン(約1,240円)。クーポンを利用して9,920ウォン(約990円)とのこと。果物も贅沢品になりつつある。

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