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国を追われた人たち

難民申請者とは?
Asylum-seekers と呼ばれる難民申請中の人たちは、紛争や迫害などの影響で母国を離れざるを得なくなり、ほかの国への移住を法的に認めてもらえるように待っている人たちを指します。

The Universal Declaration of Human Rights (Article 14) という国際法では、難民申請をすることは人権であり、国際的に誰もが難民申請を行うことができるように定められているんですね。

難民とは?

Refugees と呼ばれる人たちは母国を逃げなくてはいけない環境に立たされ、他国で安全を確保せざるを得ない人々を指します。

国際的に難民を保護することが人権保護に含まれていて、The 1951 UN Refugee Convention (+ the 1967 Protocol) という国際法では、難民が危険な状況のままの母国に強制送還されないよう、難民を保護する規則が定められています。

移民とは?

Migrants と呼ばれる人たちは、就業や就学などの理由や、法的に難民と認定されるほどには深刻ではない状況下で外国に移住する人々を指します。
The 1990 Migrant Workers Convention という国際法は、移民とその家族の人権を保護することを定めています。

地域別の難民保護

世界基準の国際法に加え、アフリカに特化したThe 1969 OAU Convention、中南米に特化したthe 1984 Cartagena Declaration など地域別の難民保護ルールもあります。

規模が地域に限定されている分、難民申請が認められやすいというメリットがあるんですね。

EUの the 2003 Dublin II regulation という決まりでは、
”EUに降り立って一年以内に難民申請をした場合、難民申請者が最初に降り立った国が申請手続きに責任をもつ” ことや、
”EUに降り立って一年以降に難民申請をした場合、難民申請者が最短5か月滞在した国が申請手続きに責任をもつ” ことになっています。

この決まりを前提にした上で、難民申請者が滞在している国は人権保護に責任をもつことが優先事項とされていて、それがなされていない場合は国連の UNHCR という機関が難民保護を代行することになっています。

難民申請の手続き

難民申請を行うとRefugee status determination (RSD) と呼ばれる手続きが始まります。

政府機関か国連の UNHCR という機関が申請者の面接と状況調査を行い、難民と認定されるために必要な条件を満たしているかどうかの審査を行うんですね。

申請手続き中の生活環境は国によって異なり、難民キャンプや特別の施設などで待機することになっていたり、一般市民と同様に暮らすことを認めている国もあります。
しかし、就業が一定期間あるいは全面的に禁止されている場合もあり、経済的には苦しい状況にあります。

国が難民申請を拒否した場合でも、国連の UNHCR という機関がその判断を不適切とした場合には、国の判断を拒否して難民認定をすることもあるんです。

移住の段階 1 - 安全を求めた移住 -

迫害や紛争などで危険な状況にある難民は、安全の確保が最優先で逃げ込む行き先地の選択肢がそもそも限定されている場合が多いです。
"安全であればひとまず場所はどこでも良い" と考えざるを得ないのが状況なんですね。

安全な移住地を決める一番の決め手となるのは地理で、世界の難民のほとんどはまず発展途上国に逃げ込みます。
紛争が起きているのは発展途上の国であることが多く、その近くの途上国や比較的安全な国に逃げ込むわけです。

紛争が続くシリアやアフガニスタンは世界でも多くの難民を生み出している国で、
近隣のパキスタンやトルコが世界でも多くの難民を受け入れている国です。

一つの国の中でも、紛争が起きている地域から比較的安全な地域へと多くの難民が移動していきます。

途上国を行き先に選ぶ場合の問題点

難民を多く受け入れている途上国は国際難民条約に加盟していないことが多く、最低限の生活水準や教育や医療、雇用へのアクセスが法的に保護されていません。

そのため、国連の UNHCR という機関が現地で活動していても、国単位の大きな規模では難民保護を行うことは難しいのです。
法的に安全が担保されていないため、難民は再び2回目の移住をするケースが多いのです。

移住の段階 2 - 生活の安定を求めた移住 -

難民申請の手続きには時間がかかるので、ひとまず安全を確保した後に2回目の選択的な移住(安全というより、安定した生活環境や経済システムを求める)が行われることが多いです。

選択的とはいっても、難民が移住先を決める際、行き先地の移民法や移民へのサポート体制などを考慮して自分で選ぶケースは少ないんですね。
そもそもインターネットなどの情報収集源が不足した環境にいる人々は、移民に関する国ごとのルールについての情報も少なく、情報があったとしても口伝へのもので不正確な場合があります。

そのため、移住に必要なものを提供してくれるエージェントを利用して渡航する難民が多く、行き先や渡航方法は知らないまま渡航することもあるんです。
こうした背景から、行くことのできる場所は金銭的な要素やどのエージェントを選ぶによっても異なってきます。

難民はどうやって行き先国を決まるの?

難民が移住の地を決める際、親せきや知り合いがいたり、経済的に自立できる環境があるかどうかで目的地を決めるケースが多いです。
たとえ移住先の国から経済支援をうけられる場合も、働く機会を得て自立したいという人が多いんですね。

ほかにも、民主的でルールを重んじる国や、言語や文化が似ている国を行き先に選ぶことも多いです。
同じバックグラウンドをもっている民族や移民の人口が多かったりするとサポートを受けやすいこともあり、過去に植民地支配を受けていた国に逃げ込むケースも多いんですね。植民地支配を受けていた国とは直行便があったりして移動手段が確保しやすいのも理由です。

先進国への移住は難しい

"紛争地から逃げてきた" という理由だけでは、先進国に難民として認めてもらえない場合が多く、自身が迫害のリスクにあることを証明する必要があります。

パスポートやビザを申請できる条件を満たしているかが先進国へすぐ移住できるかに大きくかかわってくるのですが、非正規の移住であったり、難民申請手続きの遅れによって不法滞在になってしまった場合には、"国連機関や大使館へ行くと逮捕や強制送還されるリスクがある"と思ってしまい、難民申請の機会を逃してしまう人もいます。
とくに難民と不法移民を法的に区別していない国なんかでは、難民はリスクと隣り合わせなのです。

非正規でイレギュラーな移住手段をとる人々は、より良い経済的機会を求めて移住することが多いのですが、この移住を一概に経済的な理由のみと判断することも難しく、安全や生活の保護も同時に必要としていることもあるんですね。

難民にとって、安全な地を見つけることだけでなく、生活を立て直すことのできる場所を見つけることが大事で、1回目の移住ができても、2回目の移住はハードルが高く断念せざるおえない場合が多いのです。

難民受け入れを拒む原因

多くの難民にとって故郷を出ることは、家族や仕事、様々な思い出から離れることを意味しています。
故にたとえ行き先が先進国であっても、言語や文化の違いを考慮すると生活の質は下がることがあるんですね。

それでさえも安定を求めた生活をのぞんで移住を目指すため、難民や移民に関する法整備や理解のある国への移住が集中します。

難民受け入れ国が難民対応の法改正をしても、難民はその変化を情報として知らないことが多いため、一回移住先の人気の国になると受け入れきれないほど多くの難民が来続けてしまう可能性があるんです。

新しい規制を設けたとしても、難解である政府の情報は信じてもらえないことも多く、増えていく移民の数とそれに反発する自国民とのバランスを調整するのが大変になるのです。

移民コミュニティ内での情報共有や、”安全を逃れるために移住する人” と、”より良い労働条件を求める人” を混同しないシステム作りが大事になってきます。

日本の難民対応が冷たいといわれる理由1

日本は世界でも難民対応に冷たい国と言われています。

日本は受け入れる難民の審査が非常に厳しいと世界から批判を受けていて、母国を逃げなくてはいけない理由が相当強いものでないと、日本では難民として認められないんですね。
この審査の厳しさがゆえに、審査の期間がとても長くなったり、審査を待っている間の待遇などが問題になっているんです。

難民受け入れの審査を行う上で、”難民をどう定義するか” が大事になってくるのですが、この定義が国によって異なるんですね。つまり、一国では難民として受け入れられる環境にいる人も、難民受け入れに消極的なほかの国では難民認定されない、といったことがあるわけです。

日本の難民対応が冷たいといわれる理由2

日本は外国人を国内に受け入れることには消極的ですが、国連の UNHCR という機関への資金援助など金銭面の支援に関しては積極的に行ってきました。

日本は対外国の政治において日本国民を巻き込む対策よりも、まず経済支援で解決しようとする傾向にあるだけでなく、いまだに日本という単一民族の島国に外国人を受け入れる制度が整っていないこともこの一つの理由なんですね。

海外で職を手にするのが簡単ではないことは世界共通なのですが、外国から日本に労働ビザで来る人も、言語の壁があまり影響を及ぼさない肉体労働から始めることが多いです。
ただ、賃金が低かったり待遇が悪かったりすることから、難民として申請してより良い環境や職につけることを望むケースがあり、これはアメリカなどでも起きています。

Japan’s Technical Intern Training Program (TITP) という労働を通して外国人のスキルアップ支援を行うプログラムがあるものの、参加費がかかるものがあったり、ただただ安く働かせるなどの待遇が悪いものもあります。この制度を”移民対応”の建前としているがために、移民に関する法整備が世界的にみて弱いといわれているんですね。

日本の難民対応が冷たい理由3

日本の対外国政治における傾向は、日本の国外やアジア圏の外で起きていることに対して、日本国民の関心が薄いことにも起因しています。

移民や迫害の歴史を教え込まれている国では、”難民は助けるのが当然だ” という国民の意思が強い傾向があるのに対し、日本は移民や迫害のトピックに触れることを避けることで現状の日本国内の平和を維持しようとします。

どちらの対策が平和を維持するうえで有効かは個人の判断ですが、こういった傾向から日本人は "日本に助けを求める難民がいること" を
他人ごとに感じてしまう傾向にあるのかもしれません。国民の意見や関心がなければ、政府もこれまでのやり方を維持した方が面倒が少ないので、変革も起こりにくくなるのです。

参考
Business Insider, JAR, NHK, Amnesty international, The New Humanitarian, Infomigrants, Parliament of Australia, Statista

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