見出し画像

癒し手の植物環

植物と親しい、薬草を思わせる方にリースを作っていただいた。

冬という一族の王女へ、というイメージをお伝えする。毎年冬を守ってくれる“赤い竜”(のお守り)の棲み処として、という思いつきだったけれど、一晩経てから、そういえば去年の12月はアンデルセンの「野の白鳥」(白鳥の王子)のイメージで草冠を作っていただいたことを思い出した。この草冠もコールドムーンの日に来てくれたのだった。


「さあ、もうものがいえます。」と、エリーザはいいました。「わたくしに罪はございません。」

(アンデルセン「野のはくちょう」)


去年は今まで生きてきた間に積もり積もった痛みや傷が噴出するような年で、加えてどうしても大雪や日光不足による閉塞感のある季節に、植物による励ましや慰めが欲しかったのだと思う。そして「野の白鳥」をイメージした草冠を作っていただいたのだ。



素晴らしく繊細で真摯な思いで作られた草冠は、励ましや慰めのパワーがあり、戴冠すると小さな鈴の音のような、涼やかな植物たちの声が聞こえてくるようで、わたしが次の段階へと至るための力になってくれたと思う。

(輪を成していた植物の一つは、花瓶にさしていたとき根が出てくれたので、今も鉢植えで育てている)



今年お願いしたリースは、さまざまな植物と花、木の実が編まれたものだった。冬の曼陀羅、と彼女は言った。わたしは届いたリースから“生命の循環”を感じた。

リースを一晩水につけておいたら、次の日の朝、突然こどもたちがきゃらきゃらと笑うように、きらきらした輝きを放ち始めた気がした。届いてから箱を開けたときも美しかったけれど、こんなにきらきらはしていなかったかもしれない。本当に笑い声が聞こえてきそうだ。

やさしい声で、大丈夫だよ、と言われた気がした。涙が出そうになる。


「わたくしに罪はございません。」

誓いと献身により自ら声を封じていたエリザは、苦行のような献身を経て白鳥にされた兄王子たちを救い、やっと喋ることができる。自分の思いを口に出すことを許す。自分がしあわせになることを、自分に許す。解放の物語だ、と思った。


わたしの中にいる“冬”の一族の王女は、もしかしたらエリザという名前なのかもしれない。

古い城の中庭で、種や木の実や動植物たちの眠りを守る王女。
片割れのけものと、大樹の根元に棲む竜の友人。
力強い白鳥の翼を持つきょうだいがいる人。


そんな想像をしながら、美しいリースを眺めている。



("赤い竜"の棲み処として)