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青井
2024年4月20日 08:26
わたしの犬が死んだ日に湖畔にうちすてられた小舟のひとつに住むことにした 湖の上を行き交う無数の舟たち青く香る深い霧の向こうで手を振っているひとがいる ( あなたは誰だったか ( わたしの母か ( それとも父だったのか ( 年老いた親族 ( それともきょうだい ( 生まれてこない子どもだったか 湖畔の砂地から遠ざかると森があるそこに咲く白い花を摘んで
2024年3月10日 16:36
未分化の白い腕が木蓮の枝をいっぱいに抱えて。 原初の闇を匂い立たせる雪原に、そこはわたしたちの、(あなたたちの) 墓だと誰が。 誰が知っている。 見つめ合う瞳は小鹿の瞳、猟師に撃たれて血と命を流し続ける生物の瞳。腐り落ちた肉と血のあとに残った、いのちの 鉱石のキュクロプスが森を歩く夜の、まばたきを忘れた瞳。 ( 沈んでいく 青という遺跡( 落ちていく 烏
2023年1月9日 08:11
心が静かであるとき洞窟の多くに眠る鉱物たちの囁きをきく声は光の粒となって金色の火の粉のように砕け散る心が静かであるとき湖の中心に立っている遠く――岸辺で真っ白い鹿がこちらを見ている月が昇る――水面が揺れる鹿の黒い眼の奥に青い水が湧いているのを見る心が静かであるとき時代と歴史と時間の流れる金色の川に触れるあたたかくも冷たくもない水――微生物、細胞の集合体――
2022年4月28日 09:07
黒い馬の群れがわたしの影を乗せて駆けてゆく並走するように飛ぶ烏は淡く燐光し光は雪となって烏の尾となり最後には消えていく、どこに向かっているのかはわからないだがわたしは彼らに護られていて導かれている、導かれているのがわかる、仄暗い空にひかる星の名の神話を烏は歌った、狼たちの遠吠え、猛禽類の高い声、遠い海鳥の羽ばたき、「ここに飼い慣らされた者などいない」疾駆する者たちよある者たちによって最果て
2022年4月1日 09:17
郷愁を知らず噛んだ舌から裂く咲く朝焼けの色の花透き通る茎に流れる小鳥の血潮溢れて落ちる根を張って増えていく( 朝焼けは夕暮れへと反転する( 夜を呼ぶ者たちの白い手( 揺れる 揺れる( 茎の長い花の群れのように揺れる尾羽から鈴の音死んでゆく命の誇り高く無垢の瞳夜に似た静寂を孕んで揺れるやまたの舌雷鳴が貫いた反転するわたしとあなた鳥籠の中の囀り「誰が殺した
2022年2月11日 19:32
暮れていく、と落ちていく、は同じクチナシの匂いがする三日月のかろやかさかろかろ、という名の犬みっつの赤い翼ほぐれる横切っていく烏の(彼らはまっすぐに飛んでいる)(いろいろな視点があること)ちいさな群れ立ち尽くすあしもとからは鈴の音がいつまでも鳴いているよるがくるねよるがくるね左の耳に囁く声よるがくるね(振り返ると赤い翼はもう白く消えていた)(21