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生きることと幻想の間

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2022年4月の記事一覧

海底の鯨

海底の鯨

ロックバンドPhishがライブで披露した空飛ぶクジラドローンを見て思い出したこと。

昔テレビでクジラが海に潜っていく光景を見たときから、ずっと、生まれ変わるならザトウクジラがいいと思っていた。

なぜクジラの中でもザトウクジラなのかはわからないけど(造形、フォルムが好きなのかな?)、今調べてみるとザトウクジラの学名は「メガプテラ」といって「大きな翼」という意味で、翼があるからだで深い海に潜ってい

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人魚港

人魚港

空目して、人魚港、と読んでしまう。たびたび人魚があがる漁港だろうかと空想する。その次は昔話のように男の妻となる人魚たちの想像。

何か違うなと感じ、そうでなければ人魚たちはどうするだろうと考える。妻でもなく不老不死の肉でもなく、求められるようにあるのではなく。自らが望むように。彼女たちが陸にあがれば。どう生きるか。

その漁港の隅には海へと続く石造りの小さな階段があり、海からあがる人魚はそこから現

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雨の草原の貴人

雨の草原の貴人

くさはらに横たわっている。雨が降っていることに気づく。雨音はやわらかい。傍には白い狩衣を着た見知らぬ貴人が座している。薄暗い影が目元を覆い、私からは口元だけが見える。うつくしいものだけを数えてここまで参りました、と言う。

「しかしそれは同時に醜悪なものも数える、ということではありませんか?ふたつはおそらく表裏一体なのですから」私が言うと貴人は少し首を傾げ、それから頷く。幼いような仕草に、私が思う

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空で機を織る

空で機を織る

空には巨大な機を織っている人がいる。その糸は細いものもあれば太いものもあり、明るい色もあれば暗い色もある。透明なものも光り輝いているものもあるし、血の乾いたようなものも病室の隅の闇より暗い色もある。

機を織る人は生活の合間にゆっくりとその仕事を行う。自分で選んだ仕事であり、神様が決めた仕事でもある。地上に住む人間の祈りやありとあらゆる想いが込められた糸で機を織る。光の粒や精霊と共に。時には神様と

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