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人魚港

空目して、人魚港、と読んでしまう。たびたび人魚があがる漁港だろうかと空想する。その次は昔話のように男の妻となる人魚たちの想像。

何か違うなと感じ、そうでなければ人魚たちはどうするだろうと考える。妻でもなく不老不死の肉でもなく、求められるようにあるのではなく。自らが望むように。彼女たちが陸にあがれば。どう生きるか。

その漁港の隅には海へと続く石造りの小さな階段があり、海からあがる人魚はそこから現れる。彼女たちはどこへ行くか。

町には古い寺があって、人魚たちの信仰を集めている。寺には人魚たちが使える数珠が用意されていて、彼女たちの白い手は祈るために合わせられる。そうして祈り終わった者からまた、石造りの階段を下りて、海へと帰っていく。