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最後にして最初のアイドルを読んでしまった……

とんでもないもんを読んでしまった。読んで一言いうならば、そういうほかない。

Twitterで度々話題に上がる作品。いわゆるトンデモSF系と話には聞いてたので、たぶん好みの内容だろうなとkindleのセールで買っておいてた。アイドル、ソシャゲ、声優……アイマス沼の住人として、それなりになじみのある題材のも見逃せなかった要因だ。結果としてかなり好みの作品だったので、やはりTwitterで流行ってるモノは肌に合うと実感した。

1 最後にして最初のアイドル

表題作にして問題作、一言で言うならお通しにビックバン起こされたような読後感ですかね……。アイドルを目指して日々邁進する古月ミカが、自身の才能の無さに悩んだ末に自殺をしたら、世界が世紀末状態になって宇宙もトンデモないことになり、友人の狂気によって数十年越しに蘇った古月ミカが新時代のアイドルとして進化していく過程から、「アイドルとは何か」を宇宙の進化を交えて語るトンデモストーリーなんですから。
トンデモなのにアイドルという概念を真面目に語ってるし、ラストへの着地がかなり綺麗にキマッていて驚いたし、読んだ後に「なるほどこれは短編集の最初にふさわしい作品だ」と思ってしまうのがもはや悔しい。

2 エヴォリューションがーるず

みんな大好きソシャゲのガチャが題材の短編。
大人気ソシャゲ『エヴォリューションがーるず』にドハマりした女、笹島洋子がソシャゲのやりすぎが原因で死んで、そのソシャゲの世界に転生してしまうお話。
洋子がソシャゲにハマっていく過程が、ソシャゲあるあるすぎてとても笑えます(笑えない)。これもまたトンデモなストーリーだけど、こちらは洋子が道中で出会った女の子に惚れて、その子を救いたい一心で色々頑張るお話なのでストーリーとしては百合味が強く王道。私はこのエヴォがるが一番好きでお気に入りです。洋子の「好みの女性観」が少し歪んでるのも好き。


3 暗黒声優

近未来、声優は宇宙船の動力源だしビームも撃つことができる。お前はなにいってるんだ。

宇宙最強の声優を目指す四方蔵(よもくら)アカネが、地球を滅ぼすほどのパワーを持つ『暗黒声優』を追いかけ宇宙の果てまで冒険するスペースオペラ短編。惑星から外宇宙までテンポよく大冒険していくので疾走感があふれてる。冒険のお供に後輩のサチーを連れているのだが、あくまでアカネは営業百合としてドライなスタイルなのが見ている分には美味しい百合なのが良い。

4 読者は皆、頭を抱えながら「面白い」と言うだろう

この非常に、非常にとんでもない。常軌を逸した小説。巻末の解説にはこう書かれてる。

草野原々の「悪さ」は、ちょっと常軌を逸していた。普通の悪いオタクなら百四十字の大喜利、ほんの冗談、いたずらで終わらせてしまうそれを、本気で「実行」してしまう極悪人であったのだ……。

そう、これらの小説はTwitterでよくみられる胡乱な文章群を磨きに磨き上げ考察に考察を大真面目に重ね、書き上げてしまったとんでもない作品なんだ。審査員が頭を抱えつつ絶賛したのも無理はない。実際読者も同じように頭を抱えつつこの小説が紛れもなく面白い小説だと認めるほかないだろう。

ほんと、読み返す度に頭痛くなってくるような文言の嵐なんだけど、面白くて読む手が止まらないという奇妙な体験をさせてもらった。ありがとうございます。



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