物語を活用したビジョンの深掘り? 「ストーンスープ」の物語で、ビジョンモデリングをやってみた!
ビジョンをチームで共有したいとき。物語にたとえて表現したらどうなると思いますか?深く共感しあえるのはもちろんですが、他にもさまざまなことが見えてきます。本記事では、グラグリッドの取り組んだ物語を活用した「ビジョンモデリング」についてご紹介します。
自分たちの活動と向き合うために、「ストーンスープ」を読み解いてみた
海外で民話として伝えられてきたと言われるストーンスープ(石のスープ)の物語をご存知でしょうか。日本ではストーンスープの民話をもとにした絵本として、『せかいいちおいしいスープ』(岩波書店)や『しあわせの石のスープ』(フレーベル館)などが出版されています。
この物語は、別の記事でも紹介しているとおり、「共創」的活動のエッセンスがたくさんつまっています。グラグリッドでは、この物語をもとにさまざまな読み解きが行われています。そこで具体的な話について、尾形や小野に話を聞いてみました。
「ストーリーの力を借りたビジョンのモデリング」として構想
――今回の記事では、グラグリッドのストーンスープ物語を読み解いたときのことについて紹介いただきたいのですが、そもそもどんな構想があったのでしょうか。まずは全体像から教えてください。
――尾形
全体としては、「ストーリーの力を借りたビジョンのモデリング」として構想していました。
――尾形
ざっくり描いた構想図も残っているので紹介します。この図でいうところの「アナロジー」や「アナロジー+α」が、今回お話するストーンスープ物語の読み解きとなる部分です。アナロジーとは、似ている部分を根拠に、異なる部分の意図を読み解く思考法なんですが、今回は、自分たちのビジョンの考え方に似ている物語と照らし合わせながら、「抽象化」「構造化」「概念化」することで、大事にしている思いを読み取っています。
――なるほど、ビジョンをモデリングする、つまり、捉え直すためだったんですね。ではどのように、「ストーンスープ」という物語を読み解いていったんですか。
――尾形
グラグリッドが具体的にどのような共創活動をやっていて、それがどんな構造になっているのかを検討するためにストーンスープ物語を活用しました。
具体的には、絵本をメンバー各自が最初から最後まで読んでいき、気になった文章やイラストを書き出して引用しながら、グラグリッドの活動との共通点、異なる点を書き出していったんです。同時に、物語には描かれていないけれど、グラグリッドとしてはこんな要素も共創で大事にしているよね、という気づきや発見も書き出しています。ワークにはMiroを使いました。
グラグリッドのメンバーで書き出した後、それぞれのメンバーが共感した要素に、丸印を付けていきます。この印のある部分に対して解釈を深めていくと、「自分たちがなぜそれを重視しているのか」というビジョンを創るために重要な概念的なものが見えてきます。
あり方や取り組み方に対する解像度が上がり、棚卸しにもなった
――読み解きを実際にやってみて、効果としてはいかがでしたか?
――尾形
グラグリッドのあり方、取り組み方に対する解像度が上がったのは実感しています。私たちがどんな状況でどんな風に考えて、どんな行動をしているのか。ストーンスープ物語をグラグリッドの活動に照らし合わせてみると、いろいろなことが見えてきました。今までやってきた経験が整理されて、棚卸しみたいな意味でも良かったのかなと思います。
――実際にMiroを拝見して、言葉にしづらい事柄を言葉にできているという点で、うまい活用だなと思いました。グラグリッドのメンバー皆がそれぞれに付箋を貼っていくので、他のメンバーがどう考えているのかも理解できますよね。
――尾形
「グラグリッドの共創活動」といっても、メンバーそれぞれに捉え方や着目しているポイントが異なっています。それは一緒に働いていれば何となく分かるんですが、ストーンスープ物語をアナロジーに用いてみると明確にその違いが分かりますし、共有もできるんですよね。
――小野
「共通言語が生まれたな」っていう感覚がありました。グラグリッドとクライアントで共創に取り組む場合、どのように共創に取り組むといいのか、イメージをすり合わせるのが難しい場合もあります。
でも「ストーンスープをどんな場所で作るのか」、「どんな味わいのスープを作りたいんだっけ」、「皆にスープ作りに参加してもらうにはどうすればいいだろう」といった話題なら入りやすいんですよね。グラグリッドメンバーにとどまらず、クライアントなども含めて、皆で語り合うことができるんです。「私たちなりのスープを実現するために、こんな材料を用意しよう!」みたいな、前向きな意識を持ってもらいやすくなった印象はあります。
ストーンスープ物語でグラグリッド10年の活動を振り返ったのがきっかけ
――そもそもなぜストーンスープ物語に着目したんですか?
――尾形
発端は2021年の忘年会で、三澤がグラグリッドの10年を振り返る話をした際に、ストーンスープ物語を参考にしたのがきっかけですね。その話を聞いていて、絵本なので話が分かりやすいし、共創をうたうグラグリッドと共通する世界観があるなと思ったんです。そこからストーンスープ物語を参考に、グラグリッドのあり方を皆で読み解いてみたくなりました。
共通することだけでなく、異なることや、ストーンスープ物語で何を伝えようとしているのかといった点も含めて自分たちで解釈してみようと。文脈や行間にもいろいろなヒントが隠れているんじゃないかと思ったんです。それがきっかけですね。
10周年を迎えたグラグリッドの共創型「忘年会&感謝祭」のレポート
――ストーンスープ物語の読み解きを行ったタイミングは、コーポレートサイトのリニューアルでしたよね?
――尾形
そうです。コーポレートサイトのリニューアルに着手するにあたって、クライアントである企業や組織のビジョンを実現するために、グラグリッドがどういった考え方や仕組みで取り組んでいるのかを、あらためて捉え直したかったんです。
世の中へ向けて発信したり、説明したりするためにも明らかにしたいと思いました。何かいい方法がないか考えていて、ストーンスープ物語のわかりやすさと具体性に着目しました。
――こういった読み解きは、この記事を読んだ人もできるでしょうか?
――尾形
やってみると面白いと思います。ただ、気をつけるべき点もあります。ひとつは「自分たちの企業や組織の特性に合った物語が必要になる」こと。共創というキーワードであったとしても、ストーンスープ物語が必ずしも当てはまるとは限らないんですよね。もしかしたらマンガの『ワンピース』がいい場合もある。絵本でもマンガでも映画でもいいのですが、企業や組織、チームの世界観に合っているコンテンツを選ぶのが難しいかもしれません。
もう一つは読み解くコンテンツと自分たちの活動を、上手にひも付けられるか。目の前に用意されたコンテンツを読み解きながら、自分たちの活動を明らかにしていくためには、コンテンツと活動の共通点を見出す能力が必要なので、人によっては大変さを感じるかもしれません。これらの点に気をつけてください。何かしらのコンテンツを下敷きにして自分たちの活動とひも付けていくと、面白い発見があると思います!
取材・構成・文:佐伯幸治
協力・支援:三澤・尾形
■関連note
■グラグリッドの共創
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