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それぞれが活きる未来を「まとめる」~新宿区立落合第六小学校×グラグリッド 参加型体験授業【第四回】

「何やってるのー?」
中休みのチャイムが鳴るやいなや、私達が準備を進めていた家庭科室の扉の前から、生徒たちが目を輝かせながら、こちらを覗いてきました。

「今、行くよ!」
校長先生も一緒に、みんなで階段を上がって、教室へ向かいます!

今回の授業は、グラグリッドと、新宿区立落合第六小学校で行っている参加型体験授業「おえかきシンキング」の最終回です。
テーマは「まとめる」

前回の第三回目の授業「きく」では、生徒たちは自分の心の声、相手の話を受けとめて「きく」挑戦をしました。最終回の「まとめる」では、さらに一歩ふみこんで。様々な人の思いや考えをきいて、うけとめ、関係性を見出し、存在できる方法を探ってゆきます!

自分の心の中の考えをひきだして、広げよう!

今回の挑戦は、「未来の西落合のまちを描こう!」
でも、みんなで描く前にまず大事なのは、自分の考えをきいて、描くこと。まずは自分一人で、未来の西落合で自分が創ってみたいものを考えてゆきます。一つにとらわれず、何個か考えるところがポイント!

先生も一緒にトライ!
アイデアを広げたら、こんどは自分が一番つくってみたいものを選んで、「それってどんな様子?」を、じっくり考えてゆきます。


相手の考えを、描いて理解する!

次は、ペアになって、紙を交換。
相手が創りたいものを、文字を読んで、イメージして描きます!描いている間は、相手と話すのはNGです。
「なにこれー?!」と時折笑い声もあがりつつ、生徒たちは集中して、ペアの相手のイメージを描きはじめます。

描きおわったら、描いたものを相手に見せて、相手のイメージを教えてもらい「きいて描き直す」時間です。
まずはファシリテーターが、きいて描きなおす時間を演じてみます!
おやおや、描いた絵を見せたら相手に「へたくそ―!」っていわれて、絵をみせたくなってしまったようです。
ファシリテーターによるNG例・いい例のお芝居を見て、生徒たちは「きいて描き直す」態度を学んでいきます!


早速生徒たちも「きいて描き直す」にトライ。
ついペアの相手が描いてくれた絵に、自分で付け足したくなったりもしますが、そこはぐっとがまんします。

「まとめる」~未来の西落合のまちを描こう~

今度はペアが2つ集まって、4人組のチームに。
チーム内で、描いてもらった絵を使って、「自分が未来の西落合に創りたいもの」を共有します。
そしてついに、未来の西落合を描いていきますが!
その前に、大事なルールがあります!

一枚の模造紙に、それぞれ勝手に分断して描くのも、相手に話をきかないで描くのもNG。全員の創りたいものが、いきいきした世界の中にあるにはどうしたらよいのでしょうか?
ヒントは、「共通するもの」そして「世界の真ん中におくもの」!

何かがひらめいた班から、どんどん手が動いていきます!
思い思いに模造紙を囲んで、夢中になって描きます。

もちろん、そう簡単に、世界はまとまりません。
「科学の発展と、自然、どうしたら折り合える?」
「どうしたら、分断されてしまったこの二つの世界をつなげるんだろう…」

グループの中で、熱の入ったディスカッションをする姿や、手を動かすうちに1つの世界ではなく分断された世界観になったことに気づき、グループ内で世界をどう構築しなおすか葛藤する姿も見られました。

悩み、手を動かしながらも、時間終了!
それぞれの世界を、クラス内で共有していきます。
中には、立体物まで絵に入ったチームも。

最後に、「今日どんなことを感じた?気がついた?」を、自分の心の声をもう一度ゆっくりきいて、きいた内容を描いていきました。

生徒たちの声を読んでいると、相手に描いてもらったことの嬉しさ(そして描くことの難しさ)について語られている声が多く見受けられました。
それは、相手に理解してもらうことの嬉しさでもあるし、そして相手を理解することの難しさに他なりません。
その嬉しさと、難しさ、両方を楽しみながら学ぶことができた授業だったのだと、後から声を読んでいて実感しました。

「まとめる」に大事な、「イメージ」「マインド」

私たちは授業をファシリテーションすると同時に、生徒たちが「まとめる」プロセスを観察していました。その中で、「まとめる」過程や成果物に影響しているのは、「イメージ」と「マインド」だと捉えました。

イメージ:まとめ方をイメージできる
マインド:まとめようと意識が中心をむく

「イメージ:まとめ方をイメージできる」に大事なこと
「イメージ:まとめ方をイメージできる」に大事な行動は以下の二点です。
 
「関係性」を考えること
「条件」を話し合うこと

「関係性」を考えることとは、「共通するものは?中心となる/添えられるものは?意味としてつながるものは?」など、異なるもの同士の関係性を見出す行為です。絵を描く前に「関係性」を捉えられたチームでは、しばしば「まとめる」の強力な推進力になり、アイデアの飛躍につながっていました。
「関係性」については、手を動かしながら、試行錯誤で生み出しているチームもありました。ただし、その場合、アイデアが総花的になりやすい側面もあるように感じました。

「条件」を話し合うこととは、「なぜそれがやりたいのか」というルーツを探り、条件を話し合い、組み替えて、折り合いをつける行為です。「条件」は、話し合いながら折り合いをつけることが大事。その時に必要になってくるのが、「マインド」なのです。

▼「マインド:まとめようと意識が中心をむく」に大事なこと
「マインド:まとめようと意識が中心をむく 」に大事な行動は以下の二点です。

①自分以外の世界に、自分が身を投げて貢献すること
②自分以外が、自分の世界に入ってくることを許容すること

特にマインドが育まれるきっかけになったと感じたのが、「相手の考えを、描いて理解する!」のワークでした。互いに描くという貢献を通じて理解しあい、ずれを直して許容し、受けとめあうプロセスを経た結果。4人のチームになった時、相手のイメージを大事にする働きかけを行う行動が多くみられたのです。
また、最後の感想でも、「友達の考えを描くことが楽しい」「嬉しい!」「難しさを知った!」等の声を多くきくことができました。


もちろん、マインドをペアワークで育んだとはいっても。4人のチームになったとき、すべてのグループが意識を中心にむけて話し合えたわけではありませんでした。
意識を中心にむけるというマインドのサイズが、4人サイズのところもあれば、2人サイズ+2人サイズ等、全員を包括していたわけではないチームもあったのです。

「一人一人が対等で、全てを活かす」という4人を包括する問いと、実際のマインドのサイズ。4人のチームになったとき、このずれに葛藤し、ばらけてしまった2人と2人をつなげようと尽力する生徒の姿も複数見られました。

貢献と許容、そしてその中でおきる葛藤。
未来を進むときに出会う大事なことを、生徒たちが体験を通じて体いっぱいに学びとっていった姿に、私たち大人は驚きを隠せませんでした。


大人にこそ、大事なことなのでは?

授業終了後、校長先生や先生方と語る中で、生徒たちの変容についても伺うことができました。

「こうした授業の取り組みは、すぐに成果がでるというものでは決してない」そう、校長先生が前置きしたうえで。
それでも、学年横断での遠足の際、下級生をむりにひっぱらないで、見守ったり、よりそうような行動がみられるなど、うれしい変化もおきてきている…そんなエピソードを私たちはきくことができました。

年齢を超えた多様な人と一緒に取り組んだり、体いっぱいダイナミックに取り組むことは、学校だからこそ実現できることです。


「学校だからこそできることを、身体でもって味わい、たくさん積み重ねていった結果、人間性のベースが積み上げられていくと考えています。」

「でも、その人間性のベースの積み上げ、大人はできているように見えるけど、本当にできているんでしょうか?大人にこそ、実は必要なものではないでしょうか?」


ふりかえりの最後の、校長先生の問いかけ。
この問いかけは、私たちが企業の創造的活動の中で、ビジュアルファシリテーションを実践し続けている理由に他なりません。

不確実で、変化が大きく、多様な人々と共に生きていく必要がある、新しい時代。この難しい時代を切り開いていく大人のためにも、そしてさらにその先を切り開き、歩み続ける子供のためにも、私たちがビジュアルファシリテーションのマインドと技術と経験をもって、できることは多くあると考えています。


2019年度はさらにパワーアップする「おえかきシンキング」授業!

この新宿区立落合第六小学校×グラグリッドの、参加型体験授業「おえかきシンキング」。来年度はさらに、パワーアップする予定で動き始めました。

来年度へ向けて、熱く語る校長先生!

↑時間割にある「みらい総合」という科目とは?!

新宿区立落合第六小学校、グラグリッド、ともにパワーアップする内容について、また何回かに分けて、記事を書いていきたいと思います。
ぜひご期待ください!


▼新宿区立落合第六小学校×グラグリッド 参加型体験授業の記事はこちら

【第一回:「楽しむ」】
未来へ向けて「1人1本の自由」が生み出すパワー!
「楽しむ」を超越し、「解放」しあった子供たち

【第二回:「空想する」】
身近なものからヒントを得て、新しい意味を創りだす!

【第三回:「きく」】
自分の心の声、他者の声をきいて受けとめうあう

【第四回:「まとめる」】

それぞれが活きる未来を「まとめる」

(和田)

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