型から解き放たれて、隠れていた意味を発見する! ~新宿区立落合第六小学校×グラグリッド 参加型体験授業【2019年6年生①】 ~
「人間と同じような存在」「想像の源のような存在」「季節を教えてくれる存在」「悪魔女のような存在」「危険だけど子供をみているやさしい存在」。
落合第六小学校にたたずむ、夏みかんの木。
その木の意味が、どんどん、どんどん、6年生の生徒たちによって発見されていきました!
常識を超えて新しいものをうみだすために大事なのが、ものの意味を再定義し、新しい価値を見出すこと。
実際に企業の中では、エスノグラフィ等のデザインリサーチが「新しい価値を見出す」ための手法として注目を集めていますが、経験があるがゆえに常識に囚われ、意味の再定義に苦しむこともしばしばです。
しかし、そんな大人を横目に、生徒たちはどんどん隠れていた意味を発見し、語り合っていく。私たちも、先生も、見学にいらしていた教育系の出版社の方も、生徒たちのあふれんばかりの意味の発見に、ただただ圧倒されていました。
表現の多様さが生み出す、意味の飛躍
授業はまず、「意味を表現する」ワークからはじまりました。
とあるものの特徴を、想像して、絵を描いていくというものです。
ペンを一人一本もって、さっそくGO!
「それはどこへでも持っていけるものです」
「スマホ?」「かばん?」最初は具体的なモノを即座にイメージして、生徒たちは描いていきました。
しかし、どんどん特徴は増えていくにつれて、どんどんゆさぶられていきます。
「どこへでも持っていけるものです。たくさんのアイデアが詰まっています。それは悩んだときにヒントをくれることもあります」
「ええー!」
そして最後の問い!
「ぞれってどんな存在でしょう?(抽象的に表現してみよう)」
教室中がざわつきました。
「抽象的ってどういうこと?」「具体の反対じゃない?」「イメージだよ!」
ざわつきながらも、どんどんペンは動いていきました。
「人類のような存在」
「考え方の土台を支える存在」
「無限の考えでいっぱいという存在」
それぞれが想像し、描いて見出した存在を語っていきます。
最後に、この特徴をもったものについて、種明かし!
「三澤先生にとっての、ノート」でした!
ノートというと。授業で使うもの、絵を描くもの、漢字を練習するもの、やぶいて遊ぶものなど、色々意味はでてきますが。常識に囚われて、新しい見方をすることは難しい側面もでてきてしまいます。
でも、ノートの持つ特徴を、生徒たちが描いて表現してゆくことで。
『人類のような存在』『考え方の土台を支える存在』『無限の考えでいっぱいという存在』など、ノートの意味が飛躍し、様々な存在として捉えられていったのです。
意味を発見しよう!
次は、「意味を解釈して、表現して、発見するワーク」!
机いっぱいに、模造紙が広げられました。
「今から、とあるものの特徴をみんなで書きだします!それは…これです!さて何でしょう?」
「校庭にある夏みかんの木!」
6年間見慣れた景色に、生徒たちは即答!
早速、特徴をかきだしていきます!
模造紙全部に、32個、別々の特徴を書きださなければいけません。
制限時間は10分間!よーい、スタート!
最初、生徒たちは「二酸化炭素を出す」「緑色」「オレンジ色」「実がなる」など、写真を見たり気を思い出したらすぐ書けるような特徴をあげていきました。
しかし、半分くらい模造紙がまったところで、苦しくなっていきます。同じような意見や、繰り返しになって、手が止まってしまうのです。
ここからが正念場!
「それってどういうこと?」
「よし、みんな、視点を切り替えるんだ!」
生徒同士で、制限時間内にどんどん特徴をうみだしていく働きかけが行われていきました。
出てくる特徴は、どんどん独自性のあるものに!
10分間、終了!
続いて、特徴をふたつ選んで、2つのキーワードが表すような絵を描いていきます。
「特徴については、2つのうち1つは、必ず『他の班では出てなさそうな変わり者』を選ぶこと!」
そう伝えると。生徒達は32マスの模造紙を改めて見て、どんどん手を動かし始めました。
そして描き終わったら。
「それってどんな存在?」を考えて、絵に追加します!
こうして見出された、たくさんの意味、意味、意味、意味。
「落六の夏みかんの木」に、こんな意味があったなんて!
クラスでシェアしあうたびに、驚きにつつまれていました。
「意味の発見」を発見した!
最後はふりかえり。描きながら、授業をふりかえって、考えを深めて表現していきました。文字も、絵も。どんどん描いていきます。
一人一人が、探索して、隠れていた意味を発見して。
見ている大人のほうが、その発見に驚かされっぱなしな1日でした。
おまけ:先生たち、私たちも授業の特徴をふりかえってみた!
授業終了後、私たちもこの授業で「夏みかんの木の特徴」を考えたように。
先生たちと、授業の特徴についてふりかえりました。
生徒と同じ、模造紙に32マス。10分間の制限時間で埋めることはできませんでした…(6年生の生徒たちはすごい!)
そして模造紙を囲んで、授業をふりかえっていきました。
語られていたのは、生徒たちが型から解き放たれて、見方を自分で決めて、主体的に未来へ歩いていく力強さでした。
ものすごい速さで技術が発展し、ダイナミックに変わっている今の社会。そのなかで、生徒たちは、「既存の意味に囚われずに、自ら意味を発見してゆく態度」を学び、それぞれに会得していきました。
もちろん、学びは人それぞれ。
生徒たちのふりかえりの中には、「楽しかったけど、これがどうやって落六DASH(プロジェクト型の総合学習の時間)に役立つの?」そんな声もありました。
この問いを持ち帰ってくれた生徒がいることに、私たちはとても嬉しく思いました。
それは、やってみたからこそ生まれた問いだから。
その問いこそが、自分の足で立って、歩くことにつながるのです。
新しく生まれた問いがカギとなって、学びの扉を開き、授業にまた意味を見出すきっかけになると信じて。
私たちは生徒の未来に貢献していきたいなと改めて感じました。
ファシリテーター:三澤直加(株式会社グラグリッド)
サブファシリテーター:尾形慎哉、名古屋友紀、和田あずみ(株式会社グラグリッド)
ワークショップレコーディングフォト:逢坂憲吾
(和田)