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2021年映画総括|濱口監督の発見と海外作品の二極化

今年観た新作映画は、昨年と同じく23作品。Netflixオリジナルは3作品、邦画は10作品だった。
※新作の定義は①日本で2021年公開 ②映画として公開されている(よってNetflix等で公開された作品も含む)

例年ランキングでその年観た作品を整理していたが、2つのトピックスで振り返りたいと思う。

■海外作品の二極化

今年、自分が鑑賞した海外作品について友人に話をすると「知らない」「聞いたことがない」という話をされることが多かった。

聖なる犯罪者
時の面影
ノマドランド
ミナリ
隔たる世界の2人
サウンド・オブ・メタル
プロミシング・ヤング・ウーマン
21ブリッジ
最後の決闘裁判
エターナルズ
パワー・オブ・ザ・ドッグ
ラストナイト・イン・ソーホー
ダーク・ウォーターズ

こうして眺めてみると、単館系、シネフィル感のある作品が多い。
かろうじて知っている人がいたのは『ノマドランド』ぐらい。

話題に出てきたのは『007』ぐらいか。
他はNetflixやアマプラのドラマやアニメの話題ばかりだった。
MCUは『シャンチー』や『エターナルズ』など若干地味で話題に出てこなかった。

つまり、話題になる作品はシリーズものの大作(MCU系、ディズニー系など)で、その他の作品はシネフィル寄りの人しか観ないようになっているのではないか。
本来は間をつなぐような作品があったはずだが、Netflixやアマプラのオリジナルドラマに製作舞台を移している。『ペーパーハウス』や『クイーンズ・ギャンビット』がその最たる例だ(この2作品は最高)。

こういう状況になると、海外作品は大作以外の公開が少なくなってしまうのでないかと不安である。
シネコンは大きくお金が入ってくる邦画に上映が集中し(今であれば呪術廻戦)、海外作品が入る隙間が少なくなっている。

■日本の若い監督

海外作品の公開が少ないということで、今年は邦画をよく観た。

花束みたいな恋をした
すばらしき世界
ヤクザと家族 The Family
青葉家のテーブル
空白
由宇子の天秤
ドライブ・マイ・カー
偶然と想像
浅草キッド
香川一区

『ヤクザと家族 The Family』の藤井道人監督は昨年までも表に出ていたが、今年の発見は何と言っても「濱口竜介」監督の発見だった。
世界でも一気に評価が高まっており、『ドライブ・マイ・カー』はカンヌ国際映画祭の脚本賞など海外の各映画祭で賞を受賞している(アカデミー賞も国際長編映画賞のエントリーに残っている)。
12月に公開された短編映画集の『偶然と想像』も同様だ。

『ドライブ・マイ・カー』は個人的にも今年一の作品だった。
この作品の良さ、面白さは、約3時間という長さの映画を通して見ないとわからない。予告映像では決して感じることができないものだ。
(不穏なピアノの音によってサスペンス作品かのように感じられる予告になっているが、それはこの作品の本質を表していないように思う)

濱口竜介監督の映画には他監督の作品にはない特徴があるように思う。

フィクションの中で展開されてるフィクション感というか、純文学作品を映像化したもの、というべきか。役者のセリフに現実感がない。
ただ嘘のように感じられるかというとそういうことでもなく、本来は言葉にならない心情が言葉になっているような、不思議な感覚だ。
通常表に出てこない感情が登場人物の言葉として出てくるので、「次は何を言い出すのだ」というワクワク感、緊張感がある。

それを、映画というフォーマットの中で成り立つように脚本を書き、撮影・編集をしている。
下手に作れば実写映画としての体を成さなくなってしまうが、それをギリギリのバランスで実現している。
すごいことだと思う。

■最後に

来年のアカデミー賞が楽しみだ。

良いニュース(濱口竜介への評価)と悪くなりそうなニュース(日本における海外作品鑑賞環境の悪化傾向)があった2021年。
2022年は、映画館で洋画をもっと観よう。

※昨年12月に『VODサービスが映画を壊す日|2021年代映画への悲観論』を書いたが、それで現状はどうなのかはまた別の機会に書こうと思う


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