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Youは何しに遺跡に?|Netflixオリジナル映画『The Dig(時の面影)』

遺跡や博物館に行って、むかーーしのものを見る。

考ええみると不思議だ。

美術館はわかりやすい。単純に美しいものを見たい、日常から離れたい、あるいはインスピレーションを得たい、といった目的があるだろうと思う。

一方で博物館や遺跡。昔のものばかり、古びたもの、さびたもの、一部がかけたもの、決して一般的に美しいものとは言えない。
日常から離れてインスピレーションを得たい?博物館で展示されている、遺跡として公開されているものは、決して我々の日常から離れたものではない。むしろ我々の日常の基礎となるものだと言えるかもしれない。そこで展示されているものの延長線上に現代があるのだから。

ではなぜ博物館、遺跡に行こうとするのか。


その1つの答えを、Netflixオリジナル作品『時の面影(The Dig)』にみた。


『時の面影(The Dig)』は、1939年、東イングランドのサフォークの地主である未亡人のエディス・プリティ(キャリー・マリガン)が、
自身が持つ古墳の発掘をアマチュア考古学者のバジル・ブラウン(レイフ・ファインズ)に依頼することから始まる。

全編を通して、はっきり言って地味だ(戦争前後の時代、ということもある)。もちろん大発見はあるのだが、話のベースが何しろ遺跡発掘の話だ。
絵として地味にならざるを得ない。

ただし地味さと、絵としての美しさは両立する。
本作には映像なのだけれど、その中の一瞬が非常に美しい、絵として素晴らしいシーンが多くある。

実在する「サットン・フー」遺跡周辺の自然(風景と光)、
キャリー・マリガン演じるエディスの生の儚さ/死の匂い。

その一瞬一瞬が美しくて、映像が先に進んでしまうのが惜しい。


そして終盤、アマチュア考古学者バジルの口から語られる「考古学を基にした死生観」が語られる。

洞窟の壁に残された手の跡のように、我々はずっと続く。なので消え去るわけではない


ああそうか、と思った。
遺跡に、生と死を感じに行っているんだなと。


長い長い時の流れの中で自分はほーーーんの一部でしかないこと、
そんな中大きな時の中で生きていることの偉大さ、
あるいは、自分の存在など取るに足らないものであること。


錆びた甲冑や朽ちた柱、古墳などを見て体感して、
そんなことを感じ取っているのではないか、そう思った。


なかなか旅行に行けない状況が続いているが、
また遺跡・史跡に行きたいと思う。

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(ベトナム フエのグエン朝王宮/2019年)

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