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人は断片的な情報だけで映画を探すことができるのか? -失われた映画を求めて-


それはあるイラストレーターとのやりとりから始まった……

 ある日、twitterのDMで映画談議に花を咲かせていた最中、唐突にY先生(仮名)は俺に聞きたいことがあると云った。いつもは俺のほうが料理のことやイラストのことを訊いたりするのだが、Y先生のほうから俺に質問をしてくるのは珍しかった。

 話を聞くと、どうやらY先生はある映画を探しているという。その映画とは……

①オープンスタイルのレストランで
 ウェイターの運んできた皿のカバーを開けると
 男の生首が乗っていいて「やあ!」と挨拶する。
 驚いて見直すと料理に戻っていたので幻覚だと思われる。

②古城か下水道のような冷たく暗い場所で
 『濡れ場かな?』と思ったら女がゴリラだか狼男だかに変身し男は逃亡。
 女の変身は影の変形と部分的な映り込みがあるので恐らくCGではない。
 逃亡シーンは全体的に青い色調だった。

③恐らく95年前後

④Y先生は家で観たと記憶しているのでTV放送かレンタルかは不明

⑤古い記憶なのでもしかしたら①と②は別の映画かもしれない。



 俺は思った……! こ、これはまさか……!


 熱心なヘッズは既にご存知の通り、俺はあらゆる場所で映画好きを公言している。同時にY先生も(別ジャンルではあるが)相当数の映画を鑑賞しているという。彼は、俺と同等かそれ以上の映画を観ているはず。そんなY先生が俺に映画の質問をしたということはつまり……映画マニアとしての品格を試されている……?

 さらに俺とY先生はイラスト制作者と依頼者(クライアント)の関係。出会ってまだ一年も経っていないが信頼関係を計るには丁度いいタイミングだ。

ということはつまり……


 これは他のクライアントと差を付けるチャンスだ! そして何よりY先生の信頼と好感を同時に得る絶好の機会でもある。

 そんなわけで俺はY先生の記憶に埋もれてしまった映画を掘り返すべく、空いた時間を使ってそれを調査する『映画探偵』となったのだ。(つづく)

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