初めてのサイテイな日を越えて
ボックスティッシュ2箱、ポケット
ティッシュ5つ、それだけでも少しは
分かって頂けるだろうか。
地位も名誉、名声もお金も全てを
失い、「悟り」という表現にしよう。
人間、裸一貫で歩き出す勇気と力が
あるのだろうか
◇
私には、その「悟り」の境地には、一歩
踏み出す事が出来なかった。
いざと言うとき、私は弱い人間だった。
一からやり直し、いい言葉だと思うが、
ゼロ、マイナスからのやり直しという
過酷な状況でも、同じようにいい言葉を
発する事が出来るのか。
◇
私はやはり出来なかった。
どんなに泥だらけで這いつくばろうとも
「想い」「それを受け入れる人」という
一番の強欲さが、捨てられなかった。
それぞれの人生の不安というモノは
簡単には、取り除く事は出来ないもの。
◇
求めるものの大きさと、自分で解決を
出来ない「人の想い」を失いたくなかった。
そんな愚か者が、人生のサイテイな日、
心は壊れてしまった。
嗚咽とともに、今までの自分からは
想像も出来ないものが、目と鼻から
これでもかと、言わんばかりに
吹き出してきた。
失う恐怖とは、こう言うものかと
実感した。時間にして、約2時間。
手が震えるくらいで、何も手に
つかない時間が続いた。
◇
サイテイな最期を待っていた。
しかし、そこには一筋に光明が
僅かながら、私に降り注いだのだ。
考えもしなかった。
本当にこの光を辿って良いのか
答えは出なかったが、私の涙が
その答えだったと思う。
それは「死ぬまでの生きる希望」に
なった。
サイテイな日の時計は12時を過ぎ、
新しい日を迎えてくれた。
死ぬ気でやっても、死なないものだ。
そんな言葉が脳裏をよぎり、私の
一歩が生まれた瞬間だった。
頼る気も、すがるつもりもない、
泥にまみれた自分を立ち上がらせた。
「まだ、捨てられないようだ」
「もう少しだけ、チャンスを掴む力を」
その私の目には、もう涙はなかった。
「さあ、行こう!」
短編集は、ありのままの自分を投影しています。共感しうる事もあると、思います。角度を変えてみたり、心理描写を汲み取って頂けると幸いです!