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21)ミトコンドリアの活性化による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化予防(その3):ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン含有栄養ドリンク

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術21

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。

【ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンは一部の栄養ドリンクに含有されている】

 ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン(diisopropylamine dichloroacetate)はビタミン様物質として知られ、食品ではゴマやビール酵母などによく含まれるパンガミン酸の構成成分です。

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図:ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンの化学構造


一般用医薬品(第3類医薬品)では、肝臓の働きをサポートし、肉体疲労時の滋養強壮・栄養補給を目的とする栄養ドリンク剤などに配合されています。

リゲイン、新グロモント、ヘパリーゼ、リポビタンDなどのドリンク剤やレバウルソ、ヘパフィット、レバオールDXなどの一般用医薬品に配合されています。これらは薬局でも購入できますし、第3類医薬品(薬剤師または登録販売者による情報提供についての義務のない医薬品で、ビタミン剤や整腸剤などが含まれる)なので、通信販売でも購入できます。インターネットで「ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン サプリ」などで検索すると、ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンの入った栄養ドリンクや一般用医薬品が多数見つかります。

医薬品としてはリバオール(Liverall)があります。50年以上前から慢性肝疾患の治療薬として使用されています。リバオールは第一三共が製造販売していました(現在は製造販売権をアルフレッサファーマに譲渡されています)。20mg1錠の薬価が5.9円と極めて安価な薬です。

栄養ドリンクのリゲイン(第一三共ヘルスケア)には、1本にジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン(リバオール)30mg、ビタミンB1(ベンフォチアミン)10mg、ビタミンB2リン酸エステル5mg、ビタミンB6が10mg、ニコチン酸アミド30mg、無水カフェイン50mg、タウリン1000mgなどが含まれています。

ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン(リバオール)+ビタミンB1の組み合わせはミトコンドリアの酸素呼吸を活性化するので体力を高める効果があることが医学的に証明されています。

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図:ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンは多くのドリンク剤や一般用医薬品に配合されている。医薬品としてはリバオールがある。


【サイトカインストームがCOVID-19の病状悪化に関連する】

 新型コロナウイルス感染症(Coronavirus Disease 2019:COVID-19)から分離されたコロナウイルスはSARS-CoV-2(Severe Acute Respiratory Syndrome CoronaVirus 2)と命名されています。
SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)は日本語では「重症急性呼吸器症候群」と訳されています。つまり、重症の肺炎を引きおこすウイルスです。

SARS-CoV-2感染で死亡する場合は、肺と全身で重度の炎症反応が起こって、急性肺損傷、急性呼吸窮迫症候群、敗血症、多臓器不全が起こることが主な原因となっています。これは他のコロナウイルス(SARSやMERS)や新型インフルエンザでも重症例は同じです。

急性呼吸窮迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome:ARDS)は、肺炎や敗血症などがきっかけとなって、重症の呼吸不全をきたす病気です。さまざまな原因によって肺の血管透過性(血液中の成分が血管を通り抜けること)が進行した結果、血液中の成分が肺胞腔内に移動して肺水腫を起こします。このような病態は、サイトカイン・ストームが関与していると考えられています。

体内に細菌やウイルスが侵入すると、体に備わった免疫システムが、これらの病原菌を排除するために働きます。このとき、サイトカインやケモカインというタンパク質が免疫細胞や炎症細胞から産生され、免疫細胞が活性化され、病原菌を排除します。敵が排除されれば、免疫システムは自らオフになるように制御されています。

しかし、一部の人では、炎症反応や免疫応答が過剰に発現し、サイトカインが過剰に産生され、そうしたサイトカインが誤って肺や肝臓など複数の臓器を傷害し、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や多臓器不全を引き起こします。

このようにサイトカインが過剰に産生される状態がサイトカイン・ストーム(cytokine storm)です。ストーム(Storm)は嵐という意味です。

サイトカインストームはあらゆる年齢の人を襲う可能性があります。1918年のインフルエンザのパンデミック(スペイン風邪)や、もっと最近のSARSやMERS(中東呼吸器症候群: Middle East respiratory syndrome)や2009年の新型インフルエンザ(H1N1インフルエンザ)の流行の期間に健康な若者が亡くなったのは、サイトカインストームで説明できると言われています。

つまり、若くて強靭で、免疫力に自信があっても、COVID-19で死亡する可能性があることを理解しておくことが重要です。


【サイトカインストームはミトコンドリア不全によるエネルギー・クライシスを発生する】

 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や多臓器不全は、究極的には細胞レベルのミトコンドリア呼吸の破綻によるエネルギー・クライシス(energy crisis)によって細胞死が起こるので、全ての細胞のミトコンドリアの酸化傷害を軽減し、ダメージから保護し、ミトコンドリア機能を高めることはARDSや多臓器不全の予防と軽減に有効性が期待できます。

その観点からミトコンドリアを酸化傷害から保護する作用が強いメラトニンは有効です(20話参照)

さらに、ミトコンドリアの呼吸機能を高めことによってエネルギークライシス(Energy crisis)を避ける方法としてジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンの有効性が報告されています。以下のような研究報告があります。

Energy Metabolic Disorder Is a Major Risk Factor in Severe Influenza Virus Infection: Proposals for New Therapeutic Options Based on Animal Model Experiments(エネルギー代謝障害は重度のインフルエンザウイルス感染の主要な危険因子:動物モデル実験に基づく新しい治療法の提案)Respir Investig. 2016 Sep;54(5):312-9.

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と同様に、重度のインフルエンザも、サイトカイン・ストームと多臓器不全を特徴とします。基礎疾患を持つインフルエンザ患者は、疾患の重症度が急速に進行します。

感染の進行による多臓器不全の根底にある主要なメカニズムはミトコンドリアのエネルギー危機(energy crisis)です。つまり、ミトコンドリアの機能が破綻して、エネルギー(ATP)産生ができなくなって、細胞が死滅するのです。

この論文では、インフルエンザ感染によってピルビン酸脱水素酵素キナーゼ4の活性亢進が誘導され、ジクロロ酢酸ジイソプロピルはピルビン酸脱水素酵素キナーゼ4活性を阻害することによってミトコンドリアの酸素呼吸を回復させることを報告しています。

このメカニズムを理解するにはピルビン酸脱水素酵素キナーゼ4とミトコンドリアの関係を理解する必要があります。


【サイトカインストームはピルビン酸脱水素酵素活性とATPレベルの低下を引き起こす】

 インフルエンザウイルスに感染したマウスでは、ピルビン酸脱水素酵素の活性とATPレベルの著しい低下があり、骨格筋、心臓、肝臓、肺でのピルビン酸脱水素酵素キナーゼ4(PDK4)の選択的な発現亢進が認められています。COVID-19の場合も、重症化してサイトカインストームが起こっている状況では、多くの臓器で同様にPDK4の発現が亢進していると考えられます。

ピルビン酸脱水素酵素キナーゼ(pyruvate dehydrogenase kinase; PDK)はピルビン酸脱水素酵素をリン酸化して不活性化する酵素です。ピルビン酸脱水素酵素キナーゼにはPDK1〜4の4種類のアイソフォームが存在します。

ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンにはPDK4の選択的阻害作用があり、この作用によってミトコンドリアの代謝を活性化して、エネルギー危機を阻止することによって多臓器不全を防ぐというメカニズムが提唱されていま。

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図:細胞内に入ったグルコースは解糖系でピルビン酸に変換され(①)、ミトコンドリアに入ってピルビン酸脱水素酵素でアセチル-CoAに変換される(②)。アセチルCoAはクエン酸回路で代謝され(③)、呼吸酵素複合体(呼吸鎖)における酸化的リン酸化(④)でATPが産生される(⑤)。重症インフルエンザでは骨格筋、心臓、肝臓、肺でのピルビン酸脱水素酵素キナーゼ4(PDK4)の選択的な発現亢進が認められている(⑥)。PDK4の発現亢進はピルビン酸脱水素酵素を阻害してアセチルCoAの産生を阻害し、ATP産生を低下する。ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンはPDK4を阻害することによってミトコンドリアにおけるATP産生を維持する(⑦)。

 

ビタミンB1はピルビン酸脱水素酵素の補酵素として必要なので、ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン+ビタミンB1の組み合わせはミトコンドリアでのTCA回路を促進し、ATP産生を亢進し、細胞機能を高めることができます。

ミトコンドリアの酸化障害を防ぎ、ミトコンドリアの機能を高めるメラトニン、コエンザイムQ10、R体アルファリポ酸、L-カルニチン、アセチル-L-カルニチン、ビタミンD3、ニコチンアミド・リボシド、ニコチンアミド・モノヌクレオチドなどを併用すると、COVID-19の重症化を防ぐことができます。

さらに適度な運動や食事からの栄養摂取や肥満を防ぐなどで、ミトコンドリアの機能を日頃から良くしておくことは、新型コロナウイルス感染症の発症や重症化の予防に役立つと思います。

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図:新型コロナウイルスのSARS-CoV-2(①)の感染によって肺炎(COVID-19)が発症する(②)。肺炎は炎症反応を引き起こして炎症性サイトカインやケモカインの産生を亢進し、炎症応答が制御不能になると過剰なサイトカイン産生によってサイトカイン・ストームを引き起こす(③)。さらに、活性酸素の産生が亢進して、細胞や組織の酸化傷害が引き起こされる(④)。サイトカイン・ストームや酸化傷害は肺組織にダメージを与え、血管内皮細胞の透過性亢進を引き起こして、急性肺損傷や急性呼吸窮迫症候群を引き起こし(⑤)、さらに悪化すると敗血症や多臓器不全を引き起こして死に至る(⑥)。このような病態では、多くの細胞のミトコンドリアがダメージを受けて機能障害を起こし(⑦)、ATP 産生が低下してエネルギー・クライシス(Energy crisis)に陥り、多臓器不全を促進する(⑧)。ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン、メラトニン、コエンザイムQ10(CoQ10)、L-カルニチン、アセチル-L-カルニチン、NAD前駆体のニコチンアミド・リボシドやニコチンアミド・モノヌクレオチドはミトコンドリアの機能障害とATP産生低下を阻止することによって多臓器不全への移行を阻止する可能性が報告されている。

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術 記事まとめ

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