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103)腸内細菌叢を変えて体を若返らせる(その2):アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)の増やし方

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術103

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。

【若い個体の糞便移植で高齢個体が若返る】

超個体(super-organism)という概念があります。多数の個体から形成され、まるで一つの個体であるかのように振る舞う生物の集団のことです。人間と腸内細菌の関係も超個体の一例だと考えられています。

人間の腸内には約1000種類、1000兆個以上の細菌が棲みついており、私たちの細胞と協力して免疫システムを発達させ、ビタミンを合成し、栄養素の吸収を助け、さらにエネルギー産生にも寄与し、人間の健康において重要な役割を果たしています。

健康な人は様々な種類の腸内細菌が生息していますが、健康状態が悪い人や高齢者は、腸内細菌叢の多様性が減少し、病気の原因となる微生物の割合が高くなります。
 
腸内細菌叢の組成や生態系は加齢とともに変化します。一般に、老化が進むにつれて細菌の多様性が失われ、数種類の細菌種が優勢になり、他の種を圧倒するようになります。このような加齢にともなう腸内細菌の継時的な変化が、老化や寿命に影響することが明らかになっています。
 
健康な人の便に含まれている腸内細菌を病気の患者さんに投与する治療法は、糞便移植あるいは腸内細菌叢移植(Fecal Microbiota Transplantation: FMT)と呼ばれ、再発性のクロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患等に対して欧米を中心に行われています。

米国食品医薬品局(FDA)は再発性のクロストリディオイデス・ディフィシル感染症の治療薬として糞便微生物叢製品(Rebyota)を2022年11月に承認しています。対象は、抗菌薬による治療を終えた18歳以上の再発性クロストリディオイデス・ディフィシル感染症患者で、投与方法は、直腸への単回投与です。
 
抗老化医療においても腸内細菌叢移植の効果が検討されています。若い個体の腸内細菌叢を高齢個体に移植すると、高齢個体の寿命が延びることが動物実験で報告されています。(下図)


図:若い個体の糞便を高齢個体に移植すると(①)、糞便移植を受けた高齢個体の体が若返り、寿命が延長する(②)。反対に、高齢個体の糞便を若い個体に移植すると(③)、糞便移植を受けた若い個体の老化が促進され、寿命が短縮する(④)。
 
 
 

どのような腸内細菌が抗老化や寿命延長に有効かが解明されれば、糞便移植(腸内細菌叢移植)を行わなくても、有用細菌を製剤化して内服による治療が可能になります。

一般に若い個体の腸内細菌叢は、炭水化物を発酵させて酪酸などの短鎖脂肪酸を産生する細菌種が多いことを指摘されています。短鎖脂肪酸は抗炎症作用と免疫調節作用があります。
 
つまり、免疫系の健康状態を良くし、抗炎症効果をもたらすことができる代謝産物を生成し、宿主に有益な物質を合成することができる善玉菌を増やすことが抗老化と長寿に寄与できると考えられています。(下図)


図:大腸内には多数の細菌が生息し、腸内細菌叢を形成している(①)。ウェルシュ菌やクロストリジウム菌などのいわゆる悪玉菌(②)といわれている腐敗菌は、腸内のタンパク質やアミノ酸を腐敗させて発がん物質を産生し、老化やがん発生を促進する(③)。一方ビフィズス菌や乳酸菌や酪酸菌などの善玉菌(④)は、悪玉菌の増殖を抑制し、免疫力増強作用なども有していて、老化と発がんを抑制する(⑤)。その結果、腸内細菌叢の状態が体の老化やがん発生や寿命に影響する。



【腸内細菌のAkkermansia muciniphilaは大腸粘膜の粘液産生を増やす】

Akkermansia muciniphila(アッカーマンシア・ムシニフィラ)はVerrucomicrobia門に属するグラム陰性の偏性嫌気性細菌です。2004年に健康なヒトの糞便から分離されました。属名のAkkermansiaは、オランダの著名な微生物学者Antoon Akkermansに由来します。
 
腸管細胞から分泌されるムチン(糖タンパク質)を唯一の炭素・窒素源として利用するユニークな特徴を持ちます。muciniphila は「ムチンを好む(mucin-loving)」という意味です。
 
その名前が示すように、結腸壁の粘液を食べて、粘液の絶え間ない再生を刺激することによって大腸の粘液バリアを維持します。


アッカーマンシア・ムシニフィラはヒト、マウス、チンパンジー、馬、豚などの動物の腸管に存在することが確認されています。特に結腸に多く、健康な成人では菌叢全体の0.5〜5%を占めます。この細菌は母乳中に存在すると報告されており、生後1カ月の乳児糞便から検出されはじめ、生後1年で成人のレベルに達します。高齢者では量が減ることが知られています。

アッカーマンシア・ムシニフィラは粘液のムチンに含まれるN-アセチルガラクトサミンやN-アセチルグルコサミン、スレオニンを重要な栄養成分とし、ムチン分解に関与する糖鎖加水分解酵素を持ち、ムチンをエネルギー源として、主にプロピオン酸や酢酸を生産します。
 
アッカーマンシア・ムシニフィラはヒトミルクオリゴ糖も分解でき、乳児期の腸内定着に関与すると考えられています。

ムチンの分解自体は病原体のような挙動ですが、ムチンを分解することによってムチンの合成を刺激し、腸粘膜の粘液を増やす作用があります。 さらに、この細菌は、ムチンを有益な副産物に変換することにより、宿主の腸内微生物バランスを維持している可能性が報告されています。

腸内のアッカーマンシア・ムシニフィラの量が少ないと、粘膜が薄くなり、腸のバリア機能が弱まり、毒素が宿主に侵入しやすくなります。つまり、宿主の免疫調節に関与するだけでなく、腸上皮細胞の完全性と粘液層の厚さを高め、それによって腸の健康を促進します。



【アッカーマンシア・ムシニフィラは抗老化とがん予防効果がある】

アッカーマンシア・ムシニフィラの量が少ないほど、腸のバリアの透過性が高くなり、リポ多糖類(LPS)などの炎症性因子が体内に入る可能性があります。慢性炎症は肥満や糖尿病を引き起こす原因になります。慢性炎症は老化も促進します。
 
実際、アッカーマンシア・ムシニフィラの腸内存在量は、正常人と比較して、肥満の人やⅡ型糖尿病の患者では少なく、アッカーマンシア・ムシニフィラのマウスへの投与試験やヒト試験では、肥満やⅡ型糖尿病に対する改善効果が示され、次世代プロバイオティクスとして注目されています。
 
アッカーマンシア・ムシニフィラは老化やがんの予防にも効果が期待できることが指摘されています。以下のような報告があります。

Oral administration of Akkermansia muciniphila elevates systemic antiaging and anticancer metabolites.(アッカーマンシア・ムシニフィラ の経口投与は、全身のアンチエイジングと抗がん代謝産物を上昇させる)Aging (Albany NY). 2021 Mar 2;13(5):6375-6405.

【要旨の抜粋】
人間の腸内におけるアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila) の存在は、健康、痩せ、フィットネスに関連している。マウスの実験では、加齢を遅延し、抗肥満および抗糖尿病効果を発揮し、炎症を抑え、がん細胞に対する免疫監視機構を増強するなどの有用な効果が実証されている。臨床試験では、アッカーマンシア・ムシニフィラの抗糖尿病効果が確認されている。
 
この研究では、回腸、結腸、肝臓、および血漿の代謝産物組成に対するアッカーマンシア・ムシニフィラ(生菌または低温殺菌した死菌)および他の細菌のマウスへの経口投与による時間依存的効果を調査した。代謝産物組成の解析は、クロマトグラフィーと質量分析法の組み合わせによって実行された。
 
アッカーマンシア・ムシニフィラは代謝に大きな影響を与え、腸や肝臓でスペルミジンやその他のポリアミンを増加させた。低温殺菌されたアッカーマンシア・ムシニフィラは、ポリアミン、短鎖脂肪酸、2-ヒドロキシ酪酸、および複数の胆汁酸の腸内濃度の上昇において、生のアッカーマンシア・ムシニフィラよりも効率的であり、循環血液中でも増加した。
 
これらの代謝産物はすべて、以前は人間の健康に関連しており、アッカーマンシア・ムシニフィラの有益な効果の生化学的基盤を提供している。
 


スペルミジンは、すべての生物に存在する天然ポリアミンで、細胞の成長と増殖、組織の再生、核酸(DNAとRNA)の安定化、酵素活性の調節、タンパク質翻訳の調節など、多くの生物学的プロセスに関与しています。スペルミジンの外来性補給は、マウスを含む様々なモデル動物の加齢および加齢性疾患に様々な有益な効果を発揮します。

たとえば、スペルミジンの摂食は寿命を延ばし、心臓と神経を保護し、抗腫瘍性免疫応答を刺激し、メモリーT細胞形成を刺激することで免疫老化を回避する作用があります。短鎖脂肪酸(酪酸など)やケトン体の2-ヒドロキシ酪酸(βヒドロキシ酪酸)も、抗老化作用と寿命延長効果があります。
 
つまり、腸内のアッカーマンシア・ムシニフィラを増やすと、抗老化と寿命延長に有効な代謝産物を増やす効果もあるということです。

以上のように、アッカーマンシア・ムシニフィラは人間の腸で最も一般的に見られる細菌の 1 つですが、腸内バリアの維持に欠かせない菌であり、メタボリックシンドロームや糖尿病、肥満などのさまざまな病気の発症に重要な役割を果たしています。



【腸内のアッカーマンシア・ムシニフィラを増やす方法】

アッカーマンシア・ムシニフィラは厳密に嫌気性であり、酸素にさらされると生き残ることができません。このため、アッカーマンシア・ムシニフィラのサプリメントを作成することは極めて困難であり、細菌をプロバイオティクスとして (つまり生きた状態で) 摂取することは困難です。(ただし、米国ではアッカーマンシア・ムシニフィラ菌のサプリメントが販売されています)
 
アッカーマンシア・ムシニフィラをプロバイオティクスとして補うことができなくても、適切な食品でその成長を刺激し腸管内の量を増やすことは可能です。
 
特に、消化されずに腸に到達する水溶性食物繊維は、 アッカーマンシア・ムシニフィラを元気にするのに役立ちます。
 
さらに、ブルーベリー、クランベリー、ナッツなどのポリフェノールが豊富な食品も有益です。 ポリフェノール含有量が多いクランベリーがアッカーマンシア・ムシニフィラを増やすことが報告されています。(101話参照)
 
クランベリーに限らず、ポリフェノールなどのファイトケミカルの多い食品はプレバイオティクスとして作用し、アッカーマンシア・ムシニフィラを増やし、大腸粘膜の粘液を増やし、粘膜バリアを強化し、肥満や2型糖尿病やメタボリックシンドロームを改善します。
 
水溶性食物繊維の多い野菜や海藻と、ポリフェノールのクランベリーを日頃から多く摂取すると、アッカーマンシア・ムシニフィラを増やすことができます。(下図)


図:オクラや海藻類やサプリメント(イヌリン、ペクチン)に含まれる水溶性食物繊維(①)は、乳酸菌やビフィズス菌や酪酸菌によって発酵され、乳酸(②)や短鎖脂肪酸(③)を作る。乳酸は腸内pHを低下させて悪玉菌(腐敗菌)の増殖を抑制する(④)。短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)は抗老化作用や抗がん作用を発揮する(⑤)。ヨーグルト(⑥)は乳酸菌とビフィズス菌を供給し、宮入菌製剤のミヤBMは酪酸菌を供給する(⑦)。ポリフェノール類を豊富に含むクランベリー(⑧)はムチン分解菌のアッカーマンシア・ムシニフィラを増やし、粘液産生を刺激し、粘膜バリアを強化し、病原菌の侵入を防ぎ、体内の炎症を予防する(⑨)。水溶性食物繊維とファイトケミカルとヨーグルトと酪酸菌製剤を組み合わせたシンバイオティクスで腸内の乳酸と短鎖脂肪酸(特に酪酸)と粘液を増やすと、体の治癒力を高め、寿命を延ばし、健康寿命を延ばす効果が期待できる。


糖尿病治療薬のメトホルミンがアッカーマンシア・ムシニフィラを増やすことが報告されています。以下のような論文があります。

Metformin Is Associated With Higher Relative Abundance of Mucin-Degrading Akkermansia muciniphila and Several Short-Chain Fatty Acid-Producing Microbiota in the Gut(メトホルミンは、腸内のムチン分解性アッカーマンシア・ムシニフィラおよびいくつかの短鎖脂肪酸産生微生物叢の相対的存在量の増加と関連している)Diabetes Care. 2017 Jan;40(1):54-62.

最近の研究は、グルコース代謝に対するメトホルミンの有益な効果(血糖降下作用)が腸内細菌叢によって媒介される可能性があることを示唆しています。この研究では、コロンビアの成人における2型糖尿病、メトホルミン、および腸内微生物叢の関連を調べました。

その結果、メトホルミンは短鎖脂肪酸の産生およびムチン分解微生物叢(アッカーマンシア・ムシニフィラなど)の増加を引き起こすことが明らかになりました。
 
メトホルミンはがん予防や抗老化作用や寿命延長効果が知られており、糖尿病でない健康な人もメトホルミンを服用している人は多くいます。メトホルミンは腸内細菌のアッカーマンシア・ムシニフィラを増やす作用も、その抗老化作用と寿命延長効果に関与している可能性を示唆しています。


メラトニンがアッカーマンシア・ムシニフィラを増やすことが報告されています。以下のような研究報告があります。

Melatonin prevents obesity through modulation of gut microbiota in mice(メラトニンはマウスにおいて腸内細菌叢を変えることによって肥満を予防する)J Pineal Res. 2017 May;62(4).

腸内細菌叢の異常が肥満とその併存疾患の一因であることが示されています。この論文では、メラトニンが高脂肪食を与えられたマウスの体重、脂肪肝、炎症を軽減し、インスリン抵抗性を改善することを示しています。
 
メラトニン処理により、高脂肪食を与えられたマウスの腸内微生物叢の組成が大幅に変化することが実証されました。 メラトニン投与はFirmicutes 対 Bacteroidetes の比率を減少させ、健康な粘膜に関連するムチン分解細菌 Akkermansia の存在量を増加させました。 この結果は、メラトニンがプロバイオティクスとして作用し、高脂肪食によって誘発される腸内微生物叢の異常を逆転させる作用があることを明らかにしています。

太っているマウスと痩せているマウスの腸内細菌叢を調べた研究では、肥満のマウスにはファーミキューテス(Firmicutes)門の細菌が多く、痩せているマウスにはバクテロイデス(Bacteroidetes)門の細菌が多いことを明らかにしています。人間でも同様の結果でした。
 
つまり、ファーミキューテスが増えると肥満を誘導し、逆にバクテロイデスは肥満を抑制する作用があります。

上記の報告で、「メラトニンがFirmicutes 対 Bacteroidetes の比率を減少させる」というのは、メラトニンが腸内細菌叢を変化して肥満を抑制する効果を示しています。

その他、二次胆汁酸のデオキシコール酸(deoxycholic acid)とウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid)もアッカーマンシア・ムシニフィラを増やす効果が報告されています。肝臓から分泌された胆汁酸(コール酸とケノデオキシコール酸)は腸内細菌によって代謝されて二次胆汁酸(デオキシコール酸とウルソデオキシコール酸)に変換されます。デオキシコール酸はムチンの産生を増やす作用もあります。つまり、医薬品のウルソ(ウルソデオキシコール酸)はアッカーマンシア・ムシニフィラを増やす効果が期待できます。


低糖質・高脂肪食のケトン食がアッカーマンシア・ムシニフィラを増やすことがマウスの実験で示されています。以下のような報告があります。

Ketogenic diet enhances neurovascular function with altered gut microbiome in young healthy mice.(ケトン食は、若い健康なマウスの腸内微生物叢の変化により神経血管機能を強化する)Sci Rep. 2018; 8: 6670.

【要旨抜粋】
脳血流および血液脳関門機能を含む神経血管の完全性は、認知能力を決定する上で主要な役割を果たしている。 最近の研究は、神経血管の完全性が腸内微生物叢によって調節される可能性があることを示唆している。 この研究は、ケトン食が腸内微生物叢を変化させ、神経血管機能を強化し、それによって若い健康なマウス (生後 12 ~ 14 週) の神経変性のリスクを軽減するかどうかを特定することを目的として行った。
 
16 週間のケトン食で、マウスの血液脳関門での脳脊髄液および P 糖タンパク質の輸送が大幅に増加し、アルツハイマー病の特徴であるアミロイドベータのクリアランスが促進されたことを示す。
 
これらの神経血管の強化は、ラパマイシン標的タンパク質(mTOR) の減少および内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS) タンパク質発現の増加と関連していた。ケトン食はまた、有益であると推定される腸内微生物叢 (Akkermansia muciniphila および Lactobacillus) の相対存在量を増加させ、炎症誘発性であると推定される腸内細菌群 (Desulfovibrio および Turicibacter) の存在量を減少させた。
 
また、ケトン食が血糖値と体重を低下させ、血中ケトン値を上昇させたことが、腸内微生物叢の変化に関連している可能性がある。私たちの調査結果は、早い段階で開始されたケトン食介入が脳血管機能を強化し、有益な腸内微生物叢を増加させ、代謝プロファイルを改善し、アルツハイマー病のリスクを軽減する可能性があることを示唆している。
 


魚油や微細藻類由来オイルに多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)がアッカーマンシア・ムシニフィラを増やすことが報告されています。以下のような報告があります。

Short-term supplementation with ω-3 polyunsaturated fatty acids modulates primarily mucolytic species from the gut luminal mucin niche in a human fermentation system.(ω-3多価不飽和脂肪酸の短期補給は、ヒト発酵システムの腸管腔ムチン環境から主に粘液溶解性細菌種を調節する)Gut Microbes. 2022 Jan-Dec;14(1):2120344.

オメガ-3 多価不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸 (EPA) およびドコサヘキサエン酸 (DHA) を強化した魚油を1週間摂取した後に腸内細菌叢を分析すると、アッカーマンシア・ムシニフィラが増え、ファーミキューテスが減少していました。結腸領域において短鎖脂肪酸のプロピオン酸濃度の増加がアッカーマンシア・ムシニフィラの増加と相関していました。

以上の報告をまとめると、以下の図に示すようなサプリメントや食事がアッカーマンシア・ムシニフィラを増やす上で有用と言えます。


図:大腸粘膜上皮の杯細胞(①)からムチン(②)が分泌され、粘液層(③)を作る。腸内細菌のアッカーマンシア・ムシニフィラ(④)はムチン分泌を刺激して粘液層を増やし粘膜バリアを強化する。水溶性食物繊維(⑤)、植物ポリフェノールの多いクランベリーなどのベリー類(⑥)、メトホルミン(⑦)、メラトニン(⑧)、ケトン食(⑨)、ドコサヘキサエン酸(DHA)/エイコサペンタエン酸(EPA)(⑩)、二次胆汁酸(⑪)はアッカーマンシア・ムシニフィラを増やす。二次胆汁酸はムチン分泌を促進する作用もある(⑫)。酪酸菌など他の腸内細菌から産生される酪酸はムチン分泌を促進する(⑬)。これらの方法を組み合わせるとアッカーマンシア・ムシニフィラとムチン分泌を増やし、腸内バリアを強化する。アッカーマンシア・ムシニフィラを増やすことは肥満・2型糖尿病・がんを予防し、免疫力を高め、老化を遅延し、寿命を延ばす効果が期待できる。

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