22)植物性食品がミトコンドリアを活性化する理由:植物は葉緑体とミトコンドリアの両方を持つ
体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術22
ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。
【ミトコンドリアとクロロプラスト(葉緑体)は細菌が真核細胞に共生して発生した】
既知の全ての生命体は、原核生物(prokaryotes)または真核生物(eukaryotes)のいずれかです。間には何もありません。真核細胞には2重の膜に囲まれた核と小器官がありますが、原核細胞にはそのような構造(膜に囲まれた核や小器官)はありません。
原核生物が最初に発生しました。真核生物(すべての植物、動物、菌類、原生生物)はそれらから進化しました。
葉緑体は植物の光合成の細胞小器官であり、シアノバクテリア(光合成原核生物)の子孫です。ミトコンドリアは真核細胞の特徴であり、葉緑体が発生するずっと前に宿主に生息していた別の原核生物であるα-プロテオバクテリアが先祖です。
約35億年前に発生した最初の生物は、はっきりした核を持たない(核膜をもった核が無い)原核生物です。これらの生物は、 海の中を漂う有機物を利用し、酸素を使わずに生息していました。
現在の地球の大気には21パーセントの酸素が含まれていますが、誕生したばかりの地球には酸素はほとんどありませんでした。25億年から30億年前に、光合成を行って酸素を発生するシアノバクテリアが海の中で誕生しました。シアノバクテリアは藍藻とも呼ばれ、酸素発生型光合成を行う原核生物です。酸素発生型光合成は、植物の葉緑体が行う光合成と基本的に同じものですが、それは現在の植物の葉緑体はシアノバクテリアが真核細胞に共生して形成されたからです。
光合成によって、無機物である二酸化炭素と水からグルコース(ブドウ糖)などの有機物と酸素を作り出すことができるようになりました。この光合成では水を電子供与体とし、水分子から電子を奪い、その副産物として酸素ができます。
水と光があればエネルギーと有機物が得られることとなり、当時の地球上で大繁殖しました。その結果、それまでの酸素を含まない大気に酸素を供給することとなり、現在に近い酸素を豊富に含む好気的大気に変えていったと考えられています。
大気中に酸素が増えると、酸素を利用してエネルギーを産生するα-プロテオバクテリアが誕生しました。
真核細胞の葉緑体やミトコンドリアは、ある種の細菌が原始真核細胞に取り込まれて共生するようになって形成されたと考えられています。これを「細胞内共生説」と言います。このような考えは,ミトコンドリアや葉緑体が細胞の中で分裂して増殖することや、独自の DNA を持っていることが明らかにされ、定説となっています。
原始真核生物はα-プロテオバクテリア(α-proteobacteria)やシアノバクテリア(cyanobacteria)を餌として捕食していたのですが、そのうちに寄生して細胞内小器官へと進化し、共生するようになったと考えられています。
まず原始真核生物の細胞に、酸素呼吸をする細菌(α-プロテオバクテリア)が取り込まれ、ミトコンドリア(呼吸の場)として定着した後、シアノバクテリアが細胞内共生によって取り込まれ、葉緑体(光合成の場)へと進化し、現在に至ったと考えられています。植物はミトコンドリアと葉緑体の両方を持っています。(下図)。
図:原始真核細胞に酸素呼吸をするα-プロテオバクテリア(①)が細胞内共生してミトコンドリアになった(②)。このミトコンドリア(α-プロテオバクテリア)を取り込んだ真核生物は進化して動物細胞を構成している(③)。ミトコンドリアを有する真核生物に酸素発生型光合成を行うシアノバクテリア(④)が細胞内共生して葉緑体になった(⑤)。シアノバクテリアを取り込んだ細胞は進化して藻類や植物細胞となった(⑥)。ミトコンドリアと葉緑体はバクテリアの細胞内共生によって生じた。そして、植物はミトコンドリアと葉緑体の2つが存在する。
葉緑体は植物に存在する細胞内小器官です。光合成が主要な機能ですが、その他に窒素代謝、アミノ酸合成、脂質合成、色素合成など、植物細胞における代謝の中心となっています。
光を用いて有機物を合成する光合成がなければ、地球上の全ての生命活動は成り立ちません。葉緑体で光合成するのが植物なので、細胞共生により葉緑体が生まれた時、地球上に植物が誕生したということができます。
図:植物が光を浴び、緑色の葉緑体で、気孔から取り入れた二酸化炭素(CO2)と、根から吸い上げられた水(H2O)から、有機物であるデンプン(ブドウ糖が繋がった多糖)を作り出す働きを光合成と言う。酸素(O2)は気孔から空気中に放出する。
【葉緑体の豊富な食材はミトコンドリアを活性化する】
シアノバクテリアは光合成によって酸素を発生し、α-プロテオバクテリアは酸素を使ってATPを産生しますが、両方とも活性酸素が発生します。この発生酸素の害を防ぐためにメラトニンが誕生しました。つまり、メラトニンが誕生したのはシアノバクテリアが誕生した25億年から30億年前と考えられています。
シアノバクテリアを先祖に持つ葉緑体もミトコンドリアと同様にメラトニンを合成していることが証明されています。葉緑体にはメラトニン以外にも、ルテインやアスタキサンチンなど多種類のカロテノイドや、その他の抗酸化物質を多く含みます。したがって、葉緑体の多い食材を摂取することは体内のミトコンドリアの保護にも役立ちます。
その様な食材として葉菜類の野菜や、健康食品として利用されている緑藻のクロレラや藍藻のスピルリナなどがあります。クロレラは直径3~8μmのほぼ球形の単細胞緑藻で、主に湖沼や河川などに生息しています。光合成能力が極めて大きく、細胞の半分以上を葉緑体が占めています。タンパク質や脂肪の含有量も他の植物性食品に比べて多いので、栄養補充にも有用です。
スピルリナは、藍藻類に属する全長0.3-0.5mmの螺旋状の微細藻類で、マヤ文明の時代から人々の貴重な栄養源の1つとして世界中で食されてきたという長い歴史を持っています。
クロレラが骨格筋のミトコンドリアの酸化傷害を防ぐメカニズムで、筋肉の萎縮を防止する効果がマウスを使った動物実験で報告されています。クロレラの長期摂取が加齢に伴う筋萎縮を予防する可能性があることを示唆しています。
加齢に伴って筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態をサルコペニアと言います。筋肉細胞のミトコンドリアの酸化傷害による機能低下が、筋肉量の減少と筋力の低下の原因になっています。メラトニンがミトコンドリアの酸化傷害を予防するメカニズムでサルコペニアの発生と進行を抑制することが報告されています。
クロレラやスピルリナには様々な健康作用が報告されており、そのメカニズムとして高い抗酸化力と栄養価によると考えられていますが、ミトコンドリアを酸化傷害から保護し、さらに活性化する作用が関与している可能性が指摘されています。
動物にはミトコンドリアしかありませんが、植物にはミトコンドリアと葉緑体の2つが存在します。従って、植物の方がメラトニンを含め様々な抗酸化物質が多く含まれています。これが、植物性食材がミトコンドリアの機能を高める効果が高い理由の一つです。
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