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171) 5-アミノレブリン酸は健康寿命を延ばし、がん細胞を死滅する

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術171

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。


【老化に伴ってミトコンドリアのATP産生能は低下する】

老化に伴う運動能力や脳機能(認知機能や記憶力)の低下の原因としてミトコンドリア機能の低下が重要です。
 
体の老化に伴って体内の細胞のミトコンドリア機能が低下し、これが、心臓や骨格筋や神経系やその他の臓器の機能低下の主な原因になっています。心臓や骨格筋や神経系は組織の酸素消費量が多い臓器です。これらの臓器ではミトコンドリアで酸素呼吸(酸化的リン酸化)によってエネルギー(ATP)を産生しています。

老化に伴って、これらの臓器の酸素消費量が減っていきます。ミトコンドリアの働きが低下し、酸素消費が減り、ATP産生量が低下するからです。その結果、運動機能や脳機能が低下します。
 
したがって、体の老化に伴う生理機能の低下を予防するには、ミトコンドリアの量と機能を維持することが重要です。ミトコンドリアの量と機能を高めることができれば、体を若返らせることができます。


運動中に体内に取り込まれる酸素の最大量を「最大酸素摂取量(VO2MAX)」と言います。VO2MAXはV = 量(volume)、O2 = 酸素、MAX = 最大限(maximum)に由来しています。
 
加齢に伴って最大酸素消費量(VO2MAX)は低下していきます。加齢に伴って骨格筋の筋肉量が減少し、心臓や骨格筋のミトコンドリアの量と機能が低下し、ミトコンドリアでの酸素呼吸が減少するからです。その結果、歩行速度が遅くなり、歩行距離が短くなり、持久力が低下するのです。(下図)


図:加齢に伴って骨格筋の筋肉量が減少し(①)、骨格筋や心筋のミトコンドリアの量と機能が低下する(②)。その結果、最大酸素摂取量は低下し(③)、運動機能は低下する(④)。



【5-アミノレブリン酸はミトコンドリアの機能を活性化する】

5-アミノレブリン酸はヘムの前駆物質です。私たちの体内には、体重60kgで平均4g程度(2〜6gくらい)の鉄が存在します。鉄は全て食事から体内に摂取しています。 
 
鉄は酸素などの小さな分子と強く特異的に結合する性質があります。体内の鉄の60%くらいはヘモグロビンのヘムとして存在し、酸素を運搬する働きを担っています。 


図:ヘモグロビンはα鎖とβ鎖と呼ばれる2種類のサブユニットから構成される四量体構造をしている。各サブユニットには1つのヘムが結合している。ヘム(Heme)は2価の鉄原子とポルフィリン(プロトポルフィリンIX)から成る錯体で、赤血球中のヘモグロビンは、ヘムの鉄原子が酸素分子と結合することで酸素を運搬する。


5-アミノレブリン酸はミトコンドリアを活性化する作用があり、抗老化作用を発揮するサプリメントとして人気があります。5-アミノレブリン酸 (5-aminolevulinic acid:5-ALA) は、炭素数5で分子量131の動物および植物のミトコンドリアによって生合成される天然のアミノ酸です。5-アミノレブリン酸はミトコンドリアの中でアミノ酸の一種のグリシンと、クエン酸回路(TCA回路)で生成されるスクシニルCoAという2つの物質から作られます。


図:5-アミノレブリン酸はグリシンとスクシニルCoAからミトコンドリアで合成され、ミトコンドリア機能を活性化する作用がある。


生成された5-アミノレブリン酸は一度ミトコンドリアの外に出て行きます。細胞内で何種類かのポルフィリンという物質に変化し、再びミトコンドリアに戻ってきます。そして、最終的にプロトポルフィリンIXに変わります。このプロトポルフィリンに鉄がくっついてできたのがヘムという物質です。(下図)


図:ミトコンドリアの中でグリシンとスクシニルCoAから合成された5-アミノレブリン酸は、ミトコンドリアの外に出て、細胞内で何種類かのポルフィリンに変化し、コプロポリフィリノーゲンになって再びミトコンドリアに取り込まれ、最終的にプロトポルフィリンIXに変わる。このプロトポルフィリンに鉄が結合してヘムという物質が作られる。


プロトポルフィリンIXは、植物の細胞内ではマグネシウムと結合してクロロフィル(葉緑素)になります。クロロフィルは植物が光合成をする上でなくてはならない物質です。
 
プロトポルフィリンIXに鉄が結合したヘムは、生物の体内で多くの重要な機能を果たす化合物です。ヘムは主に以下のような役割を果たします。


1)酸素輸送: ヘムはヘモグロビンとミオグロビンという2つのタンパク質で中心的な役割を果たしています。ヘモグロビンは赤血球内に存在し、肺で酸素を結合して体の他の部位に運びます。一方、ミオグロビンは筋肉組織に存在し、酸素を保管して筋肉の運動に使用します。
 
2)エネルギー生成: ヘムは細胞内でのエネルギー生成に重要な役割を果たします。特にミトコンドリアの電子伝達系(呼吸鎖)という部位にあるシトクロムというタンパク質はヘムを含んでおり、これがエネルギー生成の過程で電子を輸送します。
 
3)解毒作用: ヘムは肝臓に存在するチトクロームP450という酵素群の一部であり、これが体内に取り込まれた様々な有害物質や薬物を無害化または分解する役割を果たします。
 
4)一酸化窒素の生成: ヘムは一酸化窒素(NO)の生成に関与しています。一酸化窒素は血管の拡張、神経伝達、免疫応答など、多くの生物学的プロセスを調節します。
 
以上の機能は全て、ヘムが鉄イオンを含む能力に起因します。この鉄イオンは酸素や電子や様々な有害物質と結合することができ、それにより上記のような多くの生物学的プロセスを可能にします。(下図)


図:5-アミノレブリン酸はプロトポルフィリンIXになり、鉄が結合してヘムになる。ヘムはヘモグロビンやシトクロムなど多くの重要な働きを担っている。




【5-アミノレブリン酸は加齢とともに減少する】

私たちの体内にある5-アミノレブリン酸は、約90%は体内で作られており、残りの10%は食物から摂取されています。生体内では1日に1グラム程度の5-アミノレブリン酸が合成され、同時に消費されていると言われています。
 
体内で合成される5-アミノレブリン酸の8割程度が赤血球のヘモグロビンに含まれるヘムに使用され、残りの2割の5-アミノレブリン酸がミトコンドリアの電子伝達系を構成するヘムやシトクロムに代謝されると考えられています。
 
5-アミノレブリン酸の1日の合成量は17歳前後をピークにして徐々に減少し、50歳以上になるとピーク時の数分の1に減少します。5-アミノレブリン酸の合成量が減少するとミトコンドリでのATP産生量が減少し、持久力や運動能力や脳の働きも低下します。
 
5-アミノレブリン酸のサプリメントは以前はかなり高価でしたが、最近はかなり安価になっています。5-アミノレブリン酸は水溶性で消化管からほとんど吸収され、細胞内に取り込まれます。5-アミノレブリン酸はミトコンドリアの代謝そのものを活性化するため、様々な疾患の予防や治療に役立つと考えられています。



【5-アミノレブリン酸はがん細胞を酸化傷害で死滅する】

前述のように5-アミノレブリン酸はミトコンドリアを活性化して抗老化作用や美容効果を発揮するので、アンチエジング(抗老化)のサプリメントとして人気があります。さらに、がん研究領域では、5-アミノレブリン酸はがん治療薬として注目されています。
 
がん細胞では、ミトコンドリアの異常によって酸素を使ったエネルギー(ATP)産生の過程で活性酸素が発生しやすいという特徴があります。活性酸素の産生が増えると、がん細胞は酸化傷害によってダメージを受け、増殖が低下し、細胞死が誘導されます。
 
以下のような報告があります。奈良県立医科大学泌尿器科の研究グループからの報告です。

5-Aminolevulinic acid overcomes hypoxia-induced radiation resistance by enhancing mitochondrial reactive oxygen species production in prostate cancer cells.(5-アミノレブリン酸は、前立腺がん細胞におけるミトコンドリアの活性酸素種の産生を促進することにより、低酸素誘発性放射線抵抗性を克服する)Br J Cancer. 2022 Jul;127(2):350-363.

前述のように、5-アミノレブリン酸(5-ALA)は、ミトコンドリアで生合成されるプロトポルフィリン IX(PpIX)の前駆体です。蓄積された PpIX が光(波長 625~635 nm)によって励起されると、活性酸素種が生成されます。

この研究では、光によって励起されなくても、5-ALA がその代謝物である PpIX を介して活性酸素種を生成することで、前立腺がん細胞の放射線療法に対する感受性を高めることを報告しています。
 
5-ALAは、放射線照射直後にミトコンドリア内の活性酸素種産生を増強し、ミトコンドリアの機能障害を引き起こして細胞死を増強しました。この結果は、5-ALA と放射線療法の併用療法が 前立腺がんに対する放射線療法の抗がん効果を改善するための新しい戦略であることを示唆しています。
以下のような報告もあります。

Antitumor Effect of 5-Aminolevulinic Acid Through Ferroptosis in Esophageal Squamous Cell Carcinoma. (食道扁平上皮がんにおけるフェロトーシスを介した 5-アミノレブリン酸の抗腫瘍効果)Ann Surg Oncol. 2021 Jul;28(7):3996-4006.

この論文は鳥取大学医学部外科部門消化器・小児外科の研究グループからの報告です。
 
フェロトーシス(Ferroptosis)というのは鉄介在性の細胞死です。がん細胞には鉄が多く含まれ、その鉄と反応して活性酸素が発生し、細胞膜の脂質を酸化して細胞を破壊するという細胞死です。
 
マウスに食道扁平上皮がんを移植する動物実験のモデルで、マウスに5-ALAを投与すると、がん細胞にフェロトーシスを誘導して抗腫瘍効果を発揮することを実証しています。
 
体外から投与された5-アミノレブリン酸(5-ALA)は、ヘム生合成経路を介してミトコンドリア内で酵素的にプロトポルフィリンIX(PpIX)に変換されます。蓄積したPpIXが活性酸素の産生を高めて抗腫瘍効果を発揮することが知られています。
 
5-ALAはがん細胞に多く取り込まれる性質があるので、がん細胞に選択的に活性酸素の産生を高めて、がん細胞を死滅することができます。



【5-アミノレブリン酸+クエン酸第一鉄ナトリウムの組み合わせが寿命を延ばす】

まだ基礎研究の段階ですが、5-アミノレブリン酸+クエン酸第一鉄ナトリウムの組み合わせが、老化性疾患を軽減する可能性が指摘されています。
以下のような報告があります。

Sodium ferrous citrate and 5-aminolevulinic acid improve type 2 diabetes by maintaining muscle and mitochondrial health.(5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムは健全な筋肉とミトコンドリアを維持することで2型糖尿病の症状を改善する)Obesity (Silver Spring)
. 2023 Apr;31(4):1038-1049.

この研究では、生後6週齢の雄 C57BL/6J マウスに、通常食、高脂肪食、またはクエン酸第一鉄ナトリウムと5-アミノレブリン酸リン酸を添加した高脂肪食を 15 週間与えました。
 
高脂肪食を与えたマウスに5-アミノレブリン酸+クエン酸第一鉄ナトリウムを同時に補給すると、筋肉量の減少が防止され、筋力が向上し、肥満とインスリン抵抗性が減少しました。
 
5-アミノレブリン酸+クエン酸第一鉄ナトリウムは、ミトコンドリア形態の異常を防止し、グルコース取り込みやミトコンドリアの酸化的リン酸化関連遺伝子の発現など、骨格筋細胞の遺伝子発現に対する高脂肪食の影響を元に戻しました。
 
さらに、5-アミノレブリン酸+クエン酸第一鉄ナトリウムは、ミトコンドリアDNAの維持と抗酸化転写活性を強化することにより、ミトコンドリアDNAのコピー数の減少を防ぎました。

つまり、5-アミノレブリン酸+クエン酸第一鉄ナトリウムの補給が骨格筋とミトコンドリアの健康状態の改善を介して2型糖尿病の予防効果を発揮することを示唆しています。
以下のような論文もあります。

5-Aminolevulinic acid and sodium ferrous citrate ameliorate muscle aging and extend healthspan in Drosophila.(5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムはショウジョウバエの筋肉老化を改善し、健康寿命を延長する)FEBS Open Bio. 2022 Jan;12(1):295-305.

ミトコンドリアの機能低下は老化と関係しています。5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムの組み合わせは、培養細胞のミトコンドリア機能を改善します。
 
この研究では、ショウジョウバエの成体に、さまざまな濃度の5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムを含むコーンミール餌を与え、運動機能、寿命、筋肉構造、加齢に伴うミトコンドリア機能の変化が分析されました。
 
その結果、5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムを与えると加齢に伴う運動機能の低下が軽減され、生物の寿命が延びること示されました。さらに、5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムの投与は高齢動物の筋肉構造を保存し、ミトコンドリア膜電位を維持しました。
 
5-アミノレブリン酸+クエン酸第一鉄ナトリウムの組み合わせが、ミトコンドリア機能を高め、糖尿病や肥満など代謝性疾患を改善し、健康寿命を延ばす可能性が多く報告されています。


図:5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムをサプリメントとして補充すると、ミトコンドリア機能を高め、糖尿病や肥満など代謝性疾患を改善し、老化性疾患の進行を抑制し、健康寿命を延ばす可能性が示唆されている。




【5-アミノレブリン酸+クエン酸第一鉄ナトリウムの組み合わせはがん細胞を死滅する】

5-アミノレブリン酸+クエン酸第一鉄ナトリウムの組み合わせには抗がん作用も報告されています。

5-aminolevulinic acid and sodium ferrous citrate decreased cell viability of gastric cancer cells by enhanced ROS generation through improving COX activity.(5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムは、シトクロムcオキシダーゼ活性の活性化を通じて活性酸素種生成を促進し、胃がん細胞の細胞生存率を低下させる)Photodiagnosis Photodyn Ther. 2022 Dec:40:103055.

5-アミノレブリン酸(5-ALA)は光線力学療法に使用されます。この光線力学療法では、5-ALAから変換されたプロトポルフィリンIXが活性酸素種を生成してがん細胞を死滅させます。
 
5-ALAは、活性酸素種自体を生成する可能性のあるシトクロムcオキシダーゼの活性を促進することが報告されています。また、クエン酸第一鉄ナトリウムがシトクロムcオキシダーゼ活性を高めることが報告されています。

そこでこの研究では、5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムの組み合わせが、シトクロムcオキシダーゼ活性の活性化を通じて活性酸素種生成を促進し、胃がん細胞の細胞生存率を低下させるかどうかを検討しています。
 
その結果、5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムの治療により、細胞内ヘムとヘムタンパク質が増加することが示されました。さらに、シトクロムcオキシダーゼ活性が促進され、細胞内活性酸素種の生成が増え、最終的にヒト胃がん細胞株 MKN45 の細胞生存率が低下しました。
 
つまり、5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムの併用投与が、がん細胞内で活性酸素の産生を増やして、死滅することができるということです。
 
5-アミノレブリン酸+クエン酸第一鉄ナトリウムの組み合わせはミトコンドリアの働きを良くして、体の働きを良くします。しかし、ミトコンドリアの働きを良くすることは、がん細胞にとっては活性酸素によるダメージを増やし、細胞死を引き起こします。
 
ミトコンドリアの活性化における正常細胞とがん細胞の反応の違いによって、正常細胞ではミトコンドリアでの酸素呼吸を促進すると元気になり、がん細胞では活性酸素の産生が増えて死滅するということです。


図:5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムをサプリメントとして補充すると、ミトコンドリア機能を高め、糖尿病や肥満など代謝性疾患を改善し、老化性疾患の進行を抑制し、健康寿命を延ばす可能性が示唆されている。一方、がん細胞に対しては、酸化ストレスを高め、がん細胞の増殖抑制とフェロトーシス誘導による抗がん作用を発揮する。

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