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不倫裁判百選92用意されていた夕飯がゆでたジャガイモ1個のこともあっても夫婦は破綻していない

0 はじめに

オフ会で知り合い、不貞行為に至ったのち、165万円の支払いが認容された事例をご紹介します。

このケースの被告と原告の配偶者はいわゆるオフ会で知り合って不貞行為に及びました。その際被告は、夫婦関係が破綻していると聞かされていました。

1 事案の概要と当事者の主張

 (1) 争点(1)(Aと被告の不貞行為開始時に原告とAの婚姻関係は破綻していたか)
 (被告の主張)

 被告は,平成23年頃,インターネットゲームのいわゆるオフ会でAと知り合い,平成26年1月からメールのやり取りをするようになり,同年2月下旬からはファミリーレストランで食事をするようになり,同年3月頃からAと性交渉を含む交際を開始したが,その時点で,原告とAとの婚姻関係は既に破綻していた。
 (原告の主張)
 原告とAは,婚姻後,2人の子をもうけ,Aは原告の前夫との間の子とも養子縁組をして,被告がAと不貞関係をもつまでは家族5人で幸せに暮らしていた。Aは,平成25年までは原告の誕生日に原告の好きなチーズケーキを買ってくるなどしており,夫婦関係にも問題はなかった。Aと被告の不貞行為時に原告とAの婚姻関係が破綻していなかったことは,以下の点からも明らかである。
   ア 原告は,Aの不貞を疑った後も,家庭が崩壊することを恐れて1か月以上もAを問い詰めることをためらっていた。
   イ 原告は,Aの不貞発覚後もAとの婚姻関係継続を望み,Aも被告と別れる旨述べていた。
   ウ Aは,平成26年6月末にいったん原告と別居した後も,同年10月末には再度原告の元に戻って同居を再開した。
   エ 原告とAとの間には,同居を再開した後である平成27年にも性交渉があった。

  (2) 争点(2)(原告がAとの間で慰謝料の支払合意をした際,原告が被告には請求しない旨の合意をしたか)
 (被告の主張)
 Aは,本件公正証書において,原告に対し慰謝料として300万円を支払う旨合意した際,原告との間で原告が被告に別途慰謝料の請求をしない旨の合意をした。
 (原告の主張)
 否認する。原告代理人は,本件公正証書作成前に,Aに対し,Aが原告に慰謝料を支払った場合,その分被告が原告に対して負う債務が減額される可能性があるが,原告が被告に対して慰謝料の請求をすることができなくなることはない旨明確に伝え,かつ原告が被告に対して慰謝料請求をする予定であることも伝えていた。

  (3) 争点(3)(信義則違反の成否)
 (被告の主張)

 原告代理人は,本件公正証書作成に際し,Aに対して,Aと被告は二人で同公正証書5条にある300万円の慰謝料を原告に支払う義務があると説明した。そのような説明をしていないとしても,Aが300万円の支払い義務を負えば被告は原告から慰謝料の請求をされない旨認識していたことを知りながら,この誤解を利用して本件公正証書を作成させた。被告は,Aから上記Aの認識による説明を受けたため,Aに対し,上記300万円のうち100万円については被告が負担する旨の合意をした。このような経緯からすれば,原告の被告に対する本件請求は信義則に反して許されない。
 (原告の主張)
 事実関係については否認し,法的主張は争う。

2 裁判所の判断

(1) 原告とAは平成21年8月31日に婚姻した。Aは,原告の前夫との子(現在15歳)と養子縁組をし,また原告とAとの間にも2人の子(現在6歳及び4歳)をもうけた。Aは,平成25年○月の原告の誕生日には,原告の好きなケーキを買って家族でお祝いをし,同年12月初旬には家族を連れて名古屋のアンパンマンミュージアムに出かけ,同月のクリスマスも自宅で家族そろって食事をし,平成26年の1月には,お互いの実家に新年の挨拶に行って過ごすなどしており,家族5人で平穏な生活を送っていた。
  (2) 被告は,平成23年頃,インターネットゲームのいわゆるオフ会でAと知り合った。被告は,平成25年頃,Aが同オフ会に原告及びその子らを連れてきた際に,Aの妻である原告やその子らに会ったことがあった。被告は,平成26年1月からはAとメールのやり取りをするようになり,同年2月下旬からはファミリーレストランで食事をするようになり,遅くとも同年3月初旬頃にはAと性交渉を含む交際を開始した。
 Aと被告は,同年4月頃までは2週間に1回くらいの頻度で,同年5月頃からは毎週,土曜日か日曜日の午前中から夕方ころまで一緒に過ごすようになった。
  (3) 原告は,平成26年5月頃から,Aの様子の変化から不貞を疑い,Aの携帯電話のメールを見たことによってAの不貞を確信した。原告は,約1か月の間,家庭が壊れることを恐れてAに対して不貞行為の事実を問い詰めることをためらっていたが,同年6月頃,Aに対して不貞行為の事実を問い詰めた結果,同年6月28日に,原告とAの二人で時間を取って話し合いをすることになった。
 原告は,同年6月28日,Aから,被告と別れて原告とやり直したい旨告げられた。原告は,翌日開催予定のオフ会に出向いて,直接被告に対してAと別れるよう話をしたい旨Aに伝え,Aもこれを了承して,同オフ会にはAは参加しないこととなった。
  (4) Aは,翌29日,原告や子らと昼食を外食する予定でいたが,被告と連絡を取らないため携帯電話の番号を変更するとして外出したまま昼までに戻らなかった。原告は,昼過ぎにAから連絡を受け,指定された場所に向かったところ,Aが被告と一緒に待っており,Aは原告に対し,別れてほしい,被告とは別れない旨告げた‥(中略)‥

 争点(1)(婚姻破綻後の不貞か)
 以上の認定事実によると,原告とAとの婚姻関係は,Aと被告との不貞行為を原因として破綻に至ったものであることが認められ,被告は,原告に対して,原告の被った損害を賠償すべき義務があるというべきである。
 被告は,原告がオフ会に参加した際,子どもが階段から転げ落ちた際に,子どもを見ていたAを皆の前で叱責していたこと,Aから被告〈原文ママ〉の料理の手抜きが酷く,Aに用意されていた夕飯がゆでたジャガイモ1個のこともあったことや,子に対する養育態度が酷く,毎日子を怒鳴っているという話を聞いたことから,原告とAの夫婦関係は被告が不貞行為に及んだ時点において既に冷え切っており,破綻していた旨主張するが,仮に被告の指摘する事実があったとしても,そのことから原告とAの婚姻関係が破綻していると評価することはできない。

3 若干の検討

裁判所の価値判断を前提とすると、
原告がオフ会に参加した際,子どもが階段から転げ落ちた際に,子どもを見ていたAを皆の前で叱責していたこと,Aから被告〈原文ママ〉の料理の手抜きが酷く,Aに用意されていた夕飯がゆでたジャガイモ1個のこともあったことや,子に対する養育態度が酷く,毎日子を怒鳴っているという話を聞いたことについて、仮にこれらの事実が真実であったとしても、夫婦関係の破綻を認めることはできないと指摘しています。

ただ、夕飯がこの状態であれば、、、破綻には極めて近いのではないか?


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