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離婚裁判百選⑯不倫をすると親権者になれないのか

0 はじめに


一度不倫をしてしまうと、一切親権者とはなれないのか。答えはNOです。ただし、不貞行為自体は適格性を疑わせうる事情であることは指摘しなければなりません。

1 親権者・監護者と不貞行為


道垣内 弘人 編 松原 正明 編『家事法の理論・実務・判例2』(勁草書房、2018年)187頁以下は、
一般的には当然に適格性を欠くとはいえないが、これらの行為により子の監護に支障が生じたか、また、将来生じうる可能性があるかで判断されることになると指摘しています。

2 ある高裁の裁判例から

  大阪高等裁判所において平成28年8月31日に出された裁判例は、不適切な行為を指摘しつつも、別の判断枠組みを提案しています。

未成年者らの出生以降別居までの未成年者らの主たる監護者は抗告人であるが,抗告人は,平成27年の春ころから長女を実家に預け,長男及び二男を自宅に置いて,夜間外出して男性と会っていたのであって,そのような行為自体不適切であることはいうまでもない。しかしながら,抗告人の上記の不適切な行為が未成年者らの監護に具体的にどのような悪影響ないし問題を生じさせたのかは明らかでない上,別居前の普段の生活における抗告人による未成年者らの監護についての客観的な状況(長男の小学校及び二男の幼稚園の出欠状況やそこでの様子,小学校及び幼稚園と保護者との連絡状況,長女の健診の受診状況等)やその適否も明らかでない。うすると,抗告人に上記の不適切な行為があったからといって,これのみで抗告人による監護が将来的にも適切さを欠くとし,未成年者らを主たる監護者である抗告人から引き離し,相手方による単独監護に委ねるのは,子の福祉の点からは十分な検討を経たものとはいえない。

大阪高裁平成28年8月31日の裁判例より引用

3 若干の検討


 不貞行為や不適切な行為に対して非難をしつつも、お子さんの観点から物事をみていく、という姿勢は他の裁判例においても、是認されている考え方です。ただ、判示内容を前提とすると、『いかに子を放置して異性と交際をしている行為が子らに悪影響を与えているのか』についてしっかり立証できるのであれば、結論を異なるものにする余地はあるのではないか。

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