マガジンのカバー画像

弁護士ばんぶうの不倫裁判百選

114
弁護士 齋藤健博が、不倫判例を独自の理論で、わかりやすく解説しています。
運営しているクリエイター

#証拠

不倫裁判百選90調査費用全額が認められた事例

0 はじめに不倫裁判百選では調査費用についても、どの程度まで認められるのか、これもテーマとして多く扱ってきました。 全額認められる事例に特徴はあるのか?その多くがあまり検討をすることなく、慰謝料の1割にとどまるものばかりでした。 2 事案の概要と当事者の主張以下原告は、必要不可欠な主張であると調査の重要性を主張しますが、被告は、あまり調査費用額の相当性について積極的には争っていないことが理解できます。 (原告の主張) (1)被告とCは,遅くとも平成25年1月頃から親密な

不倫裁判百選89回数が少なくても悪質な交際なのか

0 はじめに悪質な交際、とは、裁判所はどのようなものを想定しているのか、不倫裁判百選ではその境界線を探ってきました。 裁判所が悪質と考える基準は、配偶者が異論を唱えても継続していることを一要素としている裁判例をご紹介いたします。 上記57番事例との違いは、結果を重視していないことです。 1 事案の概要と当事者の主張東京地方裁判所において平成27年3月27日に出された裁判例は、不貞回数が少ないと指摘しつつも悪質であると評価を下し、200万円の支払いを認容しています。 ‥

不倫裁判百選88被告との交際を望んでいたのであるから自らが既婚者であることが被告に認識されないよう少なくとも被告の面前においては同指輪をはずしていた?

0 はじめに不倫裁判百選では、既婚であることを知らず、交際関係を継続してしまった事件を多く扱っています。 その多くが、過失ありとして慰謝料請求されてしまうことが多いですが、無過失と判断されている事例を紹介します。 1 事案の概要と当事者の主張東京地方裁判所において平成25年7月10日に出された裁判例は、被告が、交際者が未婚であると信じたことにつき、過失がないと判断しています。過失がないと判断されるには、どんな事情が必要なのか? 東京地方裁判所において平成25年7月10日

不倫裁判百選87単なる友人関係であれば,深夜始発電車を待たねばならない状況にあったとしても,駅周辺の宿泊施設等を確保する?

0 はじめに妻や旦那が、不貞行為をしたことを自白する、認める音声などの証拠は、どの程度不貞行為の証拠となるのか? 一方が自白しただけでも、これを重視している裁判例をご紹介いたします。しかも、いったん自白を認めたあとは、なし崩し的にメールなどの記載を引用し、不貞行為の存在を認めています。 1 事案の概要と当事者の主張東京地方裁判所において平成25年10月25日に出された裁判例は、不貞行為によって夫婦関係が破綻したのか、それとも夫婦関係が破綻しているところに不貞行為があったの

不倫裁判百選86証拠がなくても高額を獲得した事例

0 はじめに不倫裁判百選では、証拠の存在とその内容の吟味をおおく扱ってきました。今回の記事は、「証拠が多くはない」と裁判例に言わしめているものの、それでも、385万円の支払いを命じた事例をご紹介いたします。 証拠がなくてもあきらめるべきでないことがよくわかります。 1 事案の概要および当事者の主張東京地方裁判所において令和元年6月10日に出された裁判例は、被告に対し、385万円の支払いを命じています。 (1)原告(昭和53年○○月○○日生)及びc(同年○月○○日生)は,

不倫裁判百選85原告が被告の親に手紙を送付する行為は不法行為が成立するか?

0 はじめに 不倫裁判百選では、原告の慰謝料請求に対する主張を分析し、被告の反論を検討してきました。今回は、原告が被告に対し手紙を送付する行為をもってこれが逆に不法行為が成立すると主張し、逆に訴訟提起されてしまった例を扱います。訴訟の原告であったはずの請求者が、逆に訴訟提起されてしまうことを、反訴といいます。 1 事案の概要および当事者の主張 東京地方裁判所において平成30年3月29日に出された裁判例は、原告による慰謝料請求に対し、原告が被告の親あてに手紙を送る行為によ