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それがいつから始まったのか
心のすみに住む鬼が表れて
脳みそに貼られたシールを
一枚ずつ剥がし
頭皮にこびりついたまっ白なボンドを
取れるまで 流してくれる

医者はマジックで書かれた暗号をみながら
「このあたりが少し異常ですね」と
いつものように言う
長い時間 味気ない茶色の長イスで待っていたのに
答はいつも同じだった
答なんてもともとないのだ だから答があるふりをしているんだ

帰りの電車の中で
いつも誰かの目線を気にしていた
気にしていたという形を
装っていた
こんならウソ もっともっとみんなの前でバラしてしまえばいい!
沈黙の隣でどうしてここに座しているのかと思い続けた
尾崎豊の歌の歌詞のようなドラマはなく
制服の裾はいつも少し汚れているような
唯の固まりに過ぎなかった

その時 異形の鬼は
言葉を失い
ウガウガウガウガ
赤く青い
マスターベーションの中で
剥ぎとったシールの染みの微かな文字を
拒否することを決めた
18歳
鬼を捨て 生きると決めた

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