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詩 大切なものたち 記憶の中で

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形象化と現実は、少しズレていて、本当の出来事より印象に残ったりします。
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2021年10月の記事一覧

詩)白でも黒でもなく生きる

詩)白でも黒でもなく生きる

仕事先でなんだかわからない書類に判を強制され
自分は反社会的なことに手を染めているのではと怯え 恐れ 
会社からの呼びだし 真面目だけが取り柄だった娘は拒食症で痩せてしまって
かわいそうに一歩も家から出られなくなった

トラックの運転手の松本さんが
今年も税金相談お世話になりますと連絡して来た 来週の水曜日4時頃来るという わかりましたと答えた
今日その松本さんのフィリピン人の奥さんから たどたど

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詩)あの日の手のひら

詩)あの日の手のひら

あの日の手のひら。まだ熱は下がらないのかな 氷枕変えたほうがいいよ のぞき込まれ 顔が近寄って来る。ワイシャツの匂い おでこに当てられた肉厚な手 消毒液の匂い 往診の鞄 「扁桃腺が赤いですね。風邪でしょう」あの日のひんやりとした手のひら 
あの日の手のひらは 僕の潜在意識で一瞬の神のように在った。額の上に乗せられた手のひら 地球に座って安心しているそんな安堵
僕の根っこに宿る「人の在処」としての手

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