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融資契約〜融資実行

■融資の実務(契約〜実行)

□融資契約の締結

融資実行の承認が下りたら、金融機関は融資先と融資契約や担保契約を結ぶこととなる。金融機関が融資先に融資を行うことにより、金融機関は融資先に対し債権を持つ債権者、融資先は債務者となる。
融資契約によって権利内容の具体的な取決めをする。

□融資契約書類の種類

融資の内容によって、融資先から受け入れる融資契約書類は異なり、主なものは以下の通り。

□取引約定書

金融機関と融資先との間で発生する融資取引に関する法律上の事項を規定する基本契約で、次の2種類ある。

□取引基本約定書   

与信取引全般に共通する基本条項についての約定書で、金融機関の債権保全を図る機能を持つ。

(銀行取引約定書、信用金庫取引約定書)

□付属約定書   

取引基本約定書に定められていない内容について、別途融資取引別に受け入れ、取引基本約定書の内容を補完する機能を持つ。

(金銭消費貸借契約証書、当座勘定貸越約定書)

(参考)定型約款

2021年4月1日施行の改正民法で定型約款の規定が設けられた。定型約款とは、定型取引において契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう(保険約款、鉄道運送約款など)。定型約款に該当すると、相手方の個別の同意を得なくても一定の条項の変更が可能となる。普通預金規定など各種預金の預金規定は定型約款に当たると考えられているが、融資関係の各種約定書は、定型約款には当たらないといわれている。

□融資の種類ごとの融資契約書類等

代表的な融資の種類ごとの融資契約書類等は次の通り。
なお、取引基本約定書は新規取引開始時に融資申出先から徴求し、その後の融資取引ごとにその都度徴求する必要はない。

・手形貸付

取引基本約定書、融資先振出しの約束手形

・証書貸付   

取引基本約定書、金銭消費貸借契約証書

・当座貸越   

取引基本約定書、当座勘定貸越約定書

・商業手形割引

取引基本約定書、商業手形割引依頼書、融資先の受取手形

・その他必要書類

融資先の確認書類

犯罪収益移転防止法に基づく取引時確認や融資先の権限等を確認するための書類

□取引時確認のための書類   

登記事項証明書、印鑑登録証明書、定款など

□権限等確認のための書類   

取締役会議事録(借入意思確認資料)、登記事項証明書(代表者の確認)など

□担保関係の書類   

担保約定書:担保物権の成立や担保設定の条件等を証する約定書

(預金担保差入証、有価証券担保差入証、(根)抵当権設定契約証書)

□保証関係の書類

保証書、保証人の印鑑証明書、登記事項証明書、保証意思確認のための取締役会議事録 など

□融資の実行

上記の必要書類を受け入れたうえ、融資を実行する。融資実行の際の主な留意事項は次のとおり。

□必要書類の受入れ漏れ

・印鑑の相違

・約定書記載の融資先等の名称、所在地と印鑑証明書、登記事項証明書記載の名称、所在地との整合性

・担保提供および保証意思の確認漏れ

・担保取得漏れ

・手形要件の不備(手形貸付、商業手形割引の場合)

【参考書籍】

「融資業務超入門第2版」https://a.r10.to/hkBgaq 

「融資業務180基礎知識第3版」https://a.r10.to/hDDin9 

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