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ヌーヴェルヴァーグみたいな出会い
渡米して2年、コロナ禍になって1年あまり、英語もできないせいか、サンフランシスコに住む私に親しい友人はいません、いえ友人はいるのですが、日本人は少ない上に私が好きな話題を深く掘り下げられる人がいないのです。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58253275/picture_pc_b53225b4cd43ae6dd717dd78b43cd4f5.jpeg?width=800)
去年からZOOM授業になった語学学校には参加しているのですが、場所柄、ラティーノとチャイニーズばかりで、おまけにみんな英語が堪能なわけでなく、深い話はもちろん、趣味の話ができずにいます、つまり常に会話の欲求不満状態なんです。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58255076/picture_pc_267c0ea69c7b9bf386c057dff1b79c23.jpeg?width=800)
ZOOM授業も夏休みに入った1ヶ月ほど前、私はチェーンではない映画館に古いフランス映画がかかっているのに気づき、一人で観に行きました。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58255229/picture_pc_b04912340facf360cf8a84d811084660.jpeg?width=800)
ジャックドレーの1968年作 La Pisoine 邦題は太陽は知っている。ジェーン・バーキンがあの有名なカゴを私物として持ち込んだ映画。私は昔ビデオで見ただけで、劇場での鑑賞はなかったのでチケットを取りました。
上映30分前に劇場に行くと、
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58255504/picture_pc_2fe99717abc3f578c0041a95ed748404.jpeg?width=800)
誰もいませんでした。
チケットを予約した時点で席の予約をしていたので、あと一人は来るはずだとは分かっていたのですが、ちょっと心細くもなるこの光景。
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58257976/picture_pc_84e40c81a5c70aa691ec8813c9bb026a.jpeg?width=800)
しばらくすると後ろで会話が聞こえてきたので、ああよかった、観客がもう少しいる、と気持ちも落ち着きました。手元の携帯でこの映画の予約状況を確認したら6人でした。
6人!
どうやら私以外の観客5人は挨拶をかわしていたことからみんな知り合いで、いわゆるメジャーなアメリカン映画ではないものを好きな人たちのようでした。
『最近、なんかいい映画を見た?』
『スェーデンの映画を見たよ』
『カンヌ映画祭のサイト見た?』
この辺の会話は拾えました(全て意訳ですが、笑)
すると、誰かが『9月にディーバがサンフランシスコ市内で上映されるよ』と言い出しました。他の人が『あー監督誰だっけ?』と質問をしたら、さらに他の人も『彼、なんて名前だっけ?』『他に何とった監督だっけ?』と会話が続いていました。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58295397/picture_pc_662885ca90b09988d5b4727d459abe27.jpeg?width=800)
ずっと誰かと話したかった会話がすぐそばで、聞こえているのです。
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58295472/picture_pc_4c8eb22c61086085fb7778cef214b84f.jpeg?width=800)
ジャン=ジャック べネックス!
思わず立ち上がっていました。
いきなり声を上げた謎のアジア人に彼らはびっくりしていましたが、会話の内容が映画関係の単語で通じるものだったので、すぐに打ち解けられました。水曜日の午後6時、一回しか上映しないフランス映画 La Pisoine 太陽は知っている をわざわざ見にこようと思った6人なら、かなり映画にかける熱量と趣味は近いものがあったんだと思います。
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58296282/picture_pc_38ea525de75b6c6add8cb0aede3e7793.jpeg?width=800)
JOYと名前を教えてくれた女性は、空いてるからと私の隣に座席を移動、並んで映画を鑑賞して、観賞後は、監督、作品、年代の単語で映画について話しながら 私を駅まで送ってくれました。
それから二週間後、今度は近所の映画館でジョン カサヴェテスの SHADOWS アメリカの影が一回だけ上映されることを知り、またチケットを予約しました。
![画像12](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58342364/picture_pc_a3c23e4498b8d1f361e5cadac41cb7b3.jpeg?width=800)
すると当日、劇場に入る前に誰かが声をかけてきました。
![画像9](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58296704/picture_pc_8e4b804568cd69c26f6a9366a313c028.jpeg?width=800)
『Mami、are you going to see this movie?』
振り向くとそこにはJOYが。
おお!君もこの映画に来たのね?同じ趣味!映画を通じて、二週間前まで知らなかった人に再び会うことができました。
彼女は他にも知ってる人が来ていたみたいで、挨拶を交わしていましたが、上映まで少し時間があったので、彼女の交流の経緯を話してくれました。
彼女はポーランド系のアメリカ人で、サンフランシスコに住んで10年。いわゆるエンタメ系の映画には興味がなく(マーベルをFワードで語ってました)インディーズ系やヨーロッパの映画が好き。そんな作品を選んで、映画館に通っていたら、そこで同じ顔に会うようになって徐々に話をして友達が増えていったということでした。
『みんな映画館で出会ったんだよ、Mamiにもね』
とJOYは言いました。
![画像10](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58302332/picture_pc_c37a235107a04094f5dec21b6cf1be9a.jpeg?width=800)
その時、私が思い出したのは ヌーヴェルヴァーグ。
1950年代のパリ、フランスの古い型にハマった映画を嫌い、輸入されたアメリカ映画を見られたシネマテーク(フィルム アーカイヴ)に通っていた映画好きが、いつも同じ顔ぶれだとお互いに気付き、そこで親交を深めていきました。そしてカイエデュシネマ誌の映画批評家を経て、映画にヌーヴェルヴァーグ(新しい波)のうねりを起こしたのがゴダールやトリフォー。
最初は一人でも、好きなものを求めて行けばいつか話が合う友人ができる、そんな希望が見えた夜でした。
今はまだ英語の能力が足りず、JOYの仲間内の会話に私は付いていけないけど、帰り道の風がとても心地よかったです。
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きっとまた会える!
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