見出し画像

「それ傷つく」と伝えるのが怖い問題

傷つくときは黙って一人で傷つきたい。わたしがそれに傷つくことを知られなくない。そこがわたしの痛点だって知られたくない。

今日、知人と会話していて、そういう種類の「つよがり」を、自分が無自覚に演じてきたことに気が付いた。

Photo : DEUCE

いつもへらへらしてきた。男の人たちが無意識に、面白いと思って投げかける、数限りないセクハラ、プライベートに土足で踏み込む質問や決めつけ。

「だからおまえは彼氏ができないんだよ」

端的に言うと、これだ。わたしは約10年、会社でこう言われ続けてきた、いろんな場面で、いろんな言葉で。だからわたしは、男社会で働くようになってから、「恋愛で失敗し続けるのはわたしが悪いんだ」という確固たる自己イメージを持つようになった。自分に魅力がないからだ、自分の性格が歪んでいるからだ、自分の恋愛偏差値が低いからだ・・・

そういうふうに、言われてきた心ない言葉を全て内面化して、自分の中でさらに強化してきた。

そして次に、自分を守るために作り上げたスタンスが「そんなことわかってるけど気にしてない」、だった。

何を言われてもへらへらして、わかってるわかってる、わたしってそういうやつだよねと自虐で応じて、「そんなことで傷つくようなメンヘラじゃない」という顔をしてきた。

そうすると、実際に、だんだん傷つかなくなった。その瞬間には、何を言われてもだいたい「はいはい」とか「またまた」と思えるようになる。

でも、わたしはその態度の裏側で、「そもそも自分の考えていることを何も言わない」ようになっていた。何か言えば、何か言われる。だからもう、自分の意見は言わない。どうせ「おまえが間違ってる」って返ってくる。そしてたぶん間違っているのはわたしだし、もうそれでいいから。そうだよ、男の人とうまく恋愛できないわたしが間違ってるよ。あんたたちみんなが正しいよ、あんたたちが女の価値を決める側だからね。それでいい、それでいい。

たとえば、わたしはいま、ボーイフレンドがいなくて心の奥底から快適だ。占いの先生に42歳まで結婚の予定は全然ないと言われて心から楽になった。ひとりでいることを選択し、心からそれを喜べている。

だけどその喜びは、まわりの男たちにはきっとわからない。この生き方が快適だなんて言おうもんなら、つよがりだと言われるか、モテないからだと言われるかのどちらか。だから、そんなこと言わない。

男の子たちのなかに交じって、男の子たちの仲間内のジョークにへらへらしてきたことが、わたしのなかでこんなに蓄積していたことに、わたしの態度や姿勢をこんなに強く潜在的に決定していたことに、今日気が付いて驚いた。

今日、知人から聞かれたのはすごくシンプルな質問だった。

「そういうこと言われると傷つくって、周りに伝えたことある?」

確かに、伝えたことない。考えたこともなかった。男たちはそういうことを言うものだ。だから避ければいい。やめてほしい、って伝えるなんて確かに思いもしなかった。そう、傷つくって知られたくなかったんだ。そうだった。

女として生きることの生きづらさが、こんな形でも蓄積しているんだな。わたしは、男たちが自分を扱う扱い方を、どんどん内面化していたんだな。そんな必要ないのに。

すべて男の人が悪いとは思わない。でもやっぱり、無意識に、日常的に、「職場」という世界でこういう抑圧が起きているんだということに、改めて思い至る。やっぱり、言わなきゃわからないんだよ彼らは。

「そういうことはやめて」と。勇気を出して言っていかないとね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?