7インチ盤専門店雑記339「B面の愉悦3:Rickie Lee Jones「リッキー・リー・ジョーンズの謎」」
リッキー・リー・ジョーンズの「Woody And Dutch On The Slow Train To Peking」という曲が大好きなんですけど、いろいろな意味で謎の一曲なんです。まず、1984年のサード・アルバム「The Magazine」からシングル・カットされた「The Real End」のB面に収録されております。「Woody And Dutch ~」は1981年にリリースされたセカンド・アルバム「Pirates」に収録されておりました。他にも「The Magazine」にはいい曲がいっぱいありますから、B面に古い曲を入れる必要はなかったでしょうに、何故これをB面に収録したのでしょうか?
この曲、David Kalishという人物が作った曲ということでクレジットされておりますが、この作者、このアルバムにはこの曲のギターでのみ参加しております。他の曲では弾いておりません。ところがウェブで検索しても、ギタリストのDavid Kalishという人物の情報は出てきません。キーボーダーはSocial Distortionというバンドのサポート・メンバー的な人間がヒットしますが、果たして同一人物でしょうか?とにかく、他のところでは一切見かけない名前です。シングル盤のレーベルはリッキー・リー・ジョーンズとの共作ということになっていますから、リッキー・リーが詞を書いたんですかね?
歌詞の内容は古い曲へのオマージュ的なものでしょうか?「Stax & Sun」というレコード・レーベルの名前が特に耳につきます。情景描写が妙にリアルで、ロード・ムーヴィーのようなテイストを持った曲ですが、歌詞の内容は正直なところ、何が言いたいのかよく判りません。部分的に音楽が擬人化されているような表現だったり、比喩なのか、慣用句なのか、ネイティヴでないと分からないだろうなという内容もあります。…一応昔通訳もやっていた私ですが、これは投げ出したくなる詞です。しかも、猛烈な活舌でまくしたてられますから、曲を聴いていて遠い目になってしまいます。
全くもって、ここまでよく分からない曲なら取り上げなければいいのに、何と申しましょうか、…この曲、好きなんですよ。ヴォーカル・スタイルはトーキング・ブルースがどうのとか、そもそも「Slow Train」がブルースメンにしてみれば自由への憧れのメタファーですよね。…で、何故「Peking」…Beijingじゃないんですね。この際「Slow Boat To China」は関係ないと考えるべきなんでしょうか?…誰か教えてくださいな。
語りたくても語れない、実にもどかしさMAXの一曲なんですけどね、…マッタク。
「Chuck E.'s In Love」しか語られなくなったリッキー・リー・ジョーンズのシングルですが、他にもいい曲はいろいろあるので、勿体ない気がしてしまいます。シングル・リリースにあまり熱心な人ではなかったようですが、とにかく市場に出回っている7インチ盤の少ないこと、…驚くべき少なさです。じゃあ、ミュージック・クリップがいっぱいあったかというと、そうでもないでしょう…。プロモーションの方針が見えないというか、何なんですかね?…謎ですね。
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