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清澄白河カフェのキッチンから見る風景 : Mississippi Juke Joint Blues

毎月恒例のトークイベントですが、8月にはブルースを特集する回をやることになりました。コッテコテのデルタ・ブルース聴きまくりとなると、普段とは違う参加者さんがいらっしゃるんですかね?自分が何でも屋なので、どういうテーマでも無難にやっちゃいますけど、普通はそういうわけにはいかんでしょう。いろいろなテーマでやっていますが、それでも毎月のように参加される方もいらっしゃいまして、顔を合わせるたび、お互い無言の「アンタも好きねぇ」感覚でニヤケ笑いが止まりません。

ブルースだけ特別と思っているわけではありません。ただブルースにハマったことがある方にはお分かりいただけると思いますが、他の音楽と違って人生を変えられてしまうほどに影響力がありますから、気を付けないといけません。自分もブルースにハマっていた時は、他の音楽が聴けなくなりまして、これはいかんなと覚醒し、意識して遠ざかったわけです。それでも、なかなか放っておいてはくれませんでした。

CDの価格がどんどん下落し、古い音源のコンピレーションが格安で手に入るようになったこともあって、他のポピュラー・ミュージックと同様、iTunesに取り込んで、普通に聴き続けておりました。一定の距離を保ちながらと言いつつ、マーティン・スコセッシのブルース・ムーヴィー・プロジェクトなども即購入しているざまですけどね。そして2011年のロバート・ジョンソンのコンプリート・レコーディングスの高音質化に、いままで聴いていたノイズまみれの古い音源って何?となってしまうわけですけど。

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さて、ブルースのイベントをやることになり、いろいろ引っぱり出してきたところ、見てはいけないブツがあることを思い出してしまいました。2016年6月に発売になった「ミシシッピー・ジューク・ジョイント・ブルース」という4枚組CDです。1941年9月9日にブルースの聖地クラークスデイルのジューク・ジョイント5軒のジューク・ボックスに入っていたレコードを再現したコンピレーションなんです。

書籍では1971年に出版されていたのですが、これらの音源をまとめてCD4枚にしてしまったというのですから、これはもう事件です。しかも意外なほど音質も悪くない。いや、むしろいい音で聴けるんです。そして、これがもうビックリの連続なんです。

ブルースばかり出てくるかと思いきや、ビリー・ホリデイやカウント・ベイシーなどのジャズもあれば、ジャイヴやらいろいろ出てきます。果てはビング・クロスビーやグレン・ミラーまで入っているんです。まさかの白人ものがクラークスデイルのジューク・ジョイントのジューク・ボックスに入っているとは思いもしませんでした。人種差別も日常茶飯事だったであろう時代のことですから、厳しい労働環境にありながら、酒と音楽に癒されに集まってくるブラックの人々がグレン・ミラーを聴くなんて想像できますか?

その他にも珍しい音源がいろいろ収録されており、自分が知る限りここでしか聴けないような曲がいくつも収録されているんです。これを一つ一つ調べていってみるかという思いと、そんな時間あるのか?という気持ちの板挟みで、見て見ぬふりしていたわけです。もう少し落ち着いたら、ゆっくり時間をかけて一曲一曲当たっていきますかね…。楽しい老後の夢ということで、もう少しの辛抱、辛抱…。


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