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続・下町音楽夜話 0297「さらばジーサン」

師走の恒例行事、GINGER PARTYが今年も無事開催された。毎月1~2回開催している音楽イベントは、テーマに沿って自分が選曲して一方的にお聴かせするものだが、年一回のこのパーティでは参加者全員がプレイヤーとなる。オススメ曲を無理やり聴かせ合うだけのものだが、これが意外なほど盛り上がる。2~3曲持ち寄ってということになっているが、皆渾身の一曲を紹介する。好きな理由やどういう曲・アーティストなのかということも簡単に解説しながらなので、こちらも勉強になる。たかが10数名であれ、半数以上全く知らない曲を聴くことになる。若いスタッフのオススメ曲など、場違いなほど未知の世界である。

3日前からパーティ用のおでんに入れる大根やこんにゃくなどを煮込み始め、夜の客入りが少ないことをいいことに、用意周到、パーティの準備は整ったと思ったが、意外なところに落とし穴があった。常連さんのお一人がDVDで持ち込むというので、普段繋いでいないDVDデッキを繋ぐ作業をやったのだが、この中で大きなミスをやらかしてしまったのだ。普段はオーディオ・アルケミーの昇圧トランス経由でアナログ・レコードを再生しているため、アンプのPHONO端子は使っていない。DVDを普段ターンテーブルが繋いである端子に繋ぎ、昇圧トランスを使わずにターンテーブルをPHONO端子に直繋ぎしただけの作業だ。その最中に何とアース線が抜けてしまったのである。

アンプ側はしっかりと繋ぎ込んだのだが、ターンテーブル側はかなり苦しい姿勢のまま、以前から繋いであったアース線を確認しただけだった。軽く引っ張ったところしっかり繋がっていたようなので、定位置に戻して当日を迎えたのだが、パーティ直前の音出しでも、どうもアナログ・レコードの鳴りが気に入らない。アナログだけ妙にざらついた音で、時々静電気を感じさせるバチッというノイズが入る。アース線はしっかり繋いだのにと不思議に思いつつ、バタバタと準備を進めてパーティに突入してしまったのだが、状態は悪化する一方、パーティの最中もノイズを拾っていることがお客様にもわかるほどになってしまった。終了後に覗いてみたところ、見事にアース線が外れていたというわけだ。せっかく年一回のイベントが、ちょっとしたミスで台無しになってしまった気分だった。

それでも新たな発見もあった。外部の昇圧トランスを使わなくとも、アンプ内蔵のもので十分鳴ることに気がついたのだ。考えてみれば20年以上も使い続けている昇圧トランスと、先般買い換えたばかりのアンプ内蔵ものでどちらがいいかというと、好みの問題もあろうが、やはり新しいものは進化しているのだろう。ケーブルも新品に繋ぎ変えてみて試しているのだが、かなりいい音で鳴っているようだ。しばらくはこちらの繋ぎ方で行ってみようと思う。

それにしても、見事にノイズが消してあることにもあらためて気がついた。アースが大事なのは承知していたが、これほどとは驚いた。昔はしっかりアースしていても、ジーーーーーというノイズが、多かれ少なかれ、聞こえていたものだ。ボリュームつまみを11時のあたりまでガッと上げてみても、ほぼノイズは聞き取れない。これは凄いなと思い、つい「ジーサンいなくなっちまったよ」などとくだらないことをクチにしてしまった。さっきまで凄いジーサンがいらしたからねぇ…。

あらためて新しい機器の良さを実感したとき、毎度思うことがある。古い高級機と新しい安物、さてどちらがいい鳴りなのか?ということだ。程度の差と言うべきなのだろうが、やはり高級機は高級機の鳴りだが、最新技術も侮れない。どこのオーディオ・メーカーも最新技術をまず高級機に導入し、翌年、翌々年あたりには低価格の普及機にも同様の技術を投入してくる。技術がこなれてくれば、価格も下げられるのだろう。日々の積み重ねというものは恐ろしいもので、10年20年と経ったときに、大きな差になって顕在化する。最新のオーディオ機器はやはり侮れない鳴りを聴かせる。


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