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7インチ盤専門店雑記476「グラス・ルーツ '73」

グラス・ルーツは元々P.F.スローンとスティーヴ・バリの二人が覆面バンドとして立ち上げたところ、曲がヒットしてしまったので急いで寄せ集められたという、しょーもないバンドです。でもキャッチーなポップ・ロックは聴き易く、子どもの頃は結構好きでした。

1972年、中学1年のときに「涙の滑走路 The Runway」という曲がヒットして、7インチ・シングルを買ったのが最初ですが、その後は続きませんでした。LPが手に入れば聴いたかもしれませんが、如何せん売っておりませんでした。「ムーヴ・アロング」という「涙の滑走路」が入っているアルバムも、90年代にお安く売っていたカット盤を見つけたくらいです。他のアルバムは状態のいいものを見たことがありません。まあ英語版のWikipediaのディスコグラフィもシングルの一覧がアルバムよりも先に出てきます。…結構珍しいんですよ。

「涙の滑走路」の少し後にリリースされた、「恋に乾杯! Love Is What You Make It」という曲が好きでした。7インチ盤専門店を始めた頃、少し頑張ってグラス・ルーツのシングル盤を集めたのですが、そんな頃に「あったね~、好きだったね〜、でもラジオでは全然かかんないねぇ」という感じで、40年ぶりに再会した旧友みたいなイメージを持っている曲です。アコギのカッティングがいい感じのイントロが始まると引き込まれます。そして意外にも超絶高音質録音だったりします。…むっちゃくちゃ音いいです。

7インチ盤専門店をやっていて、やはり面白いのは聴き比べです。この「恋に乾杯!」、いろいろ聴き比べて遊んだりもしています。

ただし、このスリーブでありながら、つまりアルバム「ムーヴ・アロング」と同じ写真を使いながら、このアルバムに入ってないんですよ。調べたら次のアルバムでやんの。残念ながら持ってませんから、33と45の聴き比べはできません。そこで登場、7インチ盤専門店でなくともできますが、赤盤や見本盤との聴き比べと相成りました。東芝系だからできるものではありますが、案外違いました。

まずは最も一般的な黒盤マト1S、アコギの弦がいい感じで鳴っております。空間的な広がりが凄いです。かなり優秀な録音ですね。場の空気が変わる感じがいいです。この時点で企画倒れ確定かと思われましたねぇ。

ところが、新品のような赤盤がありまして、これがまた素晴らしい鳴りなんです。マト1S 4となっておりますが、黒盤と比べるとかなりブライトな鳴りです。材質の違いを感じさせる方向の鳴りでして、弦のテンションが強くなったかのような硬質な鳴りになってしまいます。

さて問題は見本盤ですね。コイツも赤盤です。マト1S 2、やはり非常に硬い音です。通常の赤盤との違いがあるかと言われると、…ほとんど無いですが、イチバン近くで歌っているように聴こえるのはやはりコレです。企画倒れと言わせない音ではありますね。しかし、ここまで硬い鳴りを想定していたんですかね?

ちなみに、エルトン・ジョンの「僕の歌は君の歌 Your Song」も赤盤黒盤の聴き比べができますが、赤盤は音が硬すぎて黒盤に軍配を上げたくなります。お値段は赤盤のほうが倍以上高いんですけどね。

ま、そんなわけで、今現在亀渕昭信さんの「お宝POPS」というラジオ番組で取材いただき出演しておりますが、2回に分けたということでもう一週流れます。オススメ曲がグラス・ルーツの「恋に乾杯」だったわけですが、さあどうなりますやら。

一応カフェめし屋という形態の飲食店であるジンジャーですが、音楽関連のメディアで取り上げていただける機会があるのは本当に有り難いです。そういえば、オーディオテクニカさんのオウンドメディアにもまたウチのレコードどもが登場しております。

さらにそういえば、オーディオテクニカさんのご紹介で海外のメディアに登場したこともありましたが、さすがにあそこまでいくと宣伝効果があるのかどうかもよくわかりませんが、訪日外国人のお客様が一定数いらっしゃるのは、ああいったものも影響しているのかもしれません。宣伝効果抜きにしても、機会が得られる限り取材協力はしますけどね。オーディオテクニカの社員さんや英国のアタック・マガジンの方とか、皆さんいい方ばかりで、気持ちよく対応できた楽しい経験です。…やっぱり音楽愛に溢れた人たちですからねぇ。ウチのスピーカーの鳴りの気持ちよさを分かっていただける、愛すべきお客様たちです。


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