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7インチ盤専門店雑記417「A Holiday Carole」

「A Holiday Carol」ではなく、「A Holiday Carole」。ダジャレにもならないフツー過ぎる言葉遊びですが、キャロル・キングがやると誰もツッコミませんかね。2011年にリリースされたキャロル・キング初のクリスマス・ソング集ですが、ヘッダー写真は未開封のシュリンク付きアナログ盤です。…聴いてないわけではありませんが、この盤には針を下してません。東日本大震災の年のクリスマス、自分は夏前に狭心症で倒れ、まともに働けなくなってしまった時期ですから、音楽もあまり集中して聴けなかったような気がします。惰性でレコードは買ってましたけどね。

自分は1960年生まれで、1970年に東京に引っ越してきて、その頃からラジオ=洋楽にハマってしまうわけです。キャロル・キングは「つづれおり」の大ヒットで知りましたけど、直ぐにあの名盤を購入したわけではなく、ひととおりハードロックやプログレにハマった後に、やはりちゃんと聴きたいと思って買ったものですから、ゲートフォルドでもない再発のペラペラなジャケットのヤツでした。…でも最初に聴きこんだ盤がそれなので、今でも最も愛着がある盤ではあります。高音質盤とかいったものの価値とは全く違った価値観でとらえる一枚です。そこから数えても50年近く経っているわけで、やはり最も多く聴いたアーティストの一人であり、今でも好きな曲がいっぱいあるわけです。

シンガー・ソングライターの代表的な存在ではありますが、職業作曲家としてキャリアをスタートさせていますから、やはり作曲家としての自負がおありでしょうし、ステージ嫌いと言われますから、パフォーマーではなくてクリエーター気質なんでしょう。そんな彼女がクリスマス・ソング集を作ったわけで、しかも結構ベタな選曲です。

これをどう評したらいいものかと考えるとき、思考は停止します。とても創作意欲が枯渇したとは思えないと言いつつ、お歳もお歳ですから…。内容に関しては、もう少し後になって考えるべき盤かもしれません。でも入手可能なうちに買っておかないと、というヤツですね。しかもこれ、娘さんのルイーズ・ゴフィンがプロデュースしているんです。EPKヴィデオを観るとお母さんにそっくりで笑えます。そこらへんは流石によく分かっていらっしゃるのでしょう、家族で和気藹々と作りましたという愛すべき盤として、一枚のレコードとして作られる前から価値を見出せる一枚だったりします。

キャロル・キングも4回結婚しておりますから、豊富な人生経験から生まれる歌詞は重みがあります。それでも、彼女の曲の作詞はいろいろな人が手掛けております。最初の夫ジェリー・ゴフィンとはソングライター・コンビとして名曲を量産していますし、70年代前半から中盤の個人的には全盛期と思っている時期に多くの詞を書いているのはToni Sternという女性で、元ジェームス・テイラーの彼女だった人です。3番目の夫リック・エヴァ―スは結婚した翌年に亡くなっておりまして、その後の曲は詞を読むのが辛かったりします。

大名盤「つづれおり」はソロ2作目ですが、ソロ・デビュー作「ライター」は商業的に失敗作と言われますけど、フツーにいいアルバムですけどね。…ちょいと曲が地味ですかね?彼女はソロになる前、The Cityというバンドで1作だけアルバムをリリースしております。68年にジェリー・ゴフィンと別れてカリフォルニアに移ってきたときに、ギターのダニー・コーチマーとベースのチャールズ・ラーキーと3人で作ったバンドですが、配給業者が変わったことによるゴタゴタで69年には廃盤になってしまいました。…つまり大ヒットはいきなり生まれたわけではなくて、その前に失敗も不遇も経験しているわけですね。チャールズ・ラーキーは2番目のダンナさんになる人ですね。

このThe Cityの「夢語り」は大好きなアルバムです。冒頭2曲ロジャー・ニコルスへの提供曲「Snow Queen」からバーズへの提供曲「I Wasn’t Born To Follow」への繋がりが好きで、まあ何度聴いたことか。80年代にラジオ・ヒットして幻の名盤となり、猛烈なお値段になっていた盤です。私は再発盤が出たときに買いましたが、それも既に希少盤扱いになっているようです。そもそも、キャロル・キングの英文のWikipediaのディスコグラフィにThe Cityは出てきません。

気になるのは、この「夢語り」で2曲(「Paradise Alley」「Victim Of Circumstance」)の詞を書いているD.Palmerという人物、おそらくスティーリー・ダンの初期のメンバー、デヴィッド・パーマーなんです。彼がキャロル・キングのヒット曲「ジャズマン」の歌詞を書いていることはWikipedia等に載っているのですが、The Cityの曲に関しては記述がありません。確認しようがないんです。

でもチャールズ・ラーキーとデヴィッド・パーマーは、それ以前にThe Myddle Classというバンドを1964年から69年まで一緒にやっていたようなんです。The Myddle Classは高校生の頃からヴィレッジのクラブに出演していたりしたようですが、演奏とか上手かったんですかね?デヴィッド・パーマーは、21世紀には写真家になってしまう人ですが、スティーリー・ダンの初期のメンバーだったりしますから、気にはなるんですよね。

話が思い切りそれましたが、ホリデー・シーズンに聴くキャロル・キングの声、悪かろうはずがありません。…皆さん、よい週末を。


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