7インチ盤専門店雑記757「マイケル・ブレッカー3:ステップス(・アヘッド)」
マイケル・ブレッカーとマイク・マイニエリの双頭バンドSteps Aheadがあります。3作目まではAheadがつかないSteps名義だったのですが、どうも同じバンドという扱いのようです。Stepsの頃はアコースティックなジャズ寄りの音を聴かせていたのですが、Steps Aheadになってからは、マイケル・ブレッカーもウィンド・シンセを使ったり、エレキ・ベースになったりで、いかにもフュージョンという音になってしまいます。
初期のStepsはベースのエディ・ゴメスとピアノのドン・グロルニック、そしてドラムスのスティーヴ・ガッドという大好きなアーティストが集まったようなバンドです。しかも彼らの1stアルバムという位置づけのピット・インでのライヴ盤「Smokin' In The Pit」には渡辺香津美がゲストで出てきます。ホント大好きな盤でして、ジャズ系のアルバムでは最も多く聴いている一枚です。
如何せんマイク・マイニエリの大名曲「Sara's Touch」の最良のテイクがここにあります。上手い人たちが集まってバチバチやるのも確かに魅力的なのですが、ここで聴かれる抒情性、センチメンタルなテイストは日本人にはウケるなぁと思うのですが、海外での評判は特別なものでも無さそうです。意外です。
Steps Aheadになっていった頃からマイケル・ブレッカーはウィンド・シンセで独特の音を出し始めましたが、途中でお遊び的にドラムス的な音を出してみたりして、シンセというかMIDIの可能性を披露するような傾向も出てきました。ランディ・ブレッカーが一緒にやっていないのは、こういう部分で意見が合わなくなったのかなという気もしておりましたが、まあ何をやらせても超一流の人たちです。
ドラムスがスティーヴ・ガッドではなくジャーニーにいたスティーヴ・スミスだったりするあたりで、音の傾向も知れますが、ライヴで観たときは、後にローリング・ストーンズのツアー・メンバーになるダリル・ジョーンズがベースを弾いており、あまりの上手さに絶句したものでした。「…誰や」という感じでしたね。そして、まさかのローリング・ストーンズでしたからね。「…ちゃうやろ!」といったところでした。
マイケル・ブレッカーはこの時期、ドイツ人指揮者のクラウス・オガーマンとのコラボ作品もありまして、クラシック寄りの音楽もやりたかったのかなと思わせるわけですが、結局この人ってジャズ一辺倒ではない部分が個性なのかもと思うようにしておりました。
Steps Aheadに関しては、自分が観た日のライヴがレーザーディスクで発売され即買いましたが、その後なかなかDVD化されなくて、時代のはざまに取り残された重要音源と思っておりましたが、かなり経ってからDVDも出ましたけどね。ステージのセッティングやら使用機材など詳細がインナーに書かれており、インパクトが大きかったことを物語っております。80年代を象徴する音の一つかとは思います。そこで演奏された「Trains」「Beirut」あたりは、いまだにフュージョン系の最高の瞬間ではないかと思っております。
Steps Aheadはメンバーが流動的で、マイケル・ブレッカーが亡くなった後も活動を継続しておりますが、80年代の頃とは別物ですよね。個人的にはまだAheadがつかなかった頃が大好きだったので、何とも残念な印象のバンドになってしまったのですが、如何せん上手い人たちの集まりではありますから、メンバーの動向に関しては要チェックといったところです。
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