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続・下町音楽夜話 0288「選曲!選曲!選曲!」

次回のラジオ番組のお題が「Play The Piano」と決まった。早速にいろいろ好きなピアノ曲にあたってみたが、どうもいけない。当たり前すぎる曲しか思い浮かばないのだ。まずはキャロル・キング「イッツ・トゥ・レイト」がどうしても出てくるのは仕方がない。如何せんこれまで最も多く聴いている曲だろう。出だしのピアノの音は決して忘れられるものではないし、今でも聴き飽きたりすることなく、精神安定剤的に登場する回数も多い。憂いを帯びた音も秋向きだし、文句なかろう。

…しかし、待てよ。あえて自分が限られた曲数の中でご紹介するまでもない気もする。せっかくなら別の曲にするか、などと思い立ち、キャロル・キングの曲を片っ端から聴いたりしている。ソロ・デビュー直前のThe Cityというバンドでのアルバムも大好きだから合わせて迷う。「スノー・クイーン」も大好きな曲だ。でもこの曲ならロジャー・ニコルズ&スモール・サークル・オブ・フレンズのカヴァーも好きだなぁ。ああ、決められない…。困った、困った。

シカゴのロバート・ラムも大好きなピアニストだ。80年代以降のシカゴにはさほどそそられるものがないが、70年代は好きな曲が山ほどある。さて、困った。どの曲にしよう。文句なしに一番好きなのは「サタデイ・イン・ザ・パーク」だけど、この曲は歌詞に繰り返し「7月4日」と出てくるのでサマー・ソングと捉えるべきだろう。これからの季節に聴くべき曲とは言い難い。残念だが他の曲にするか…。次点候補は「ぼくらの世界をバラ色に Colour My World」か「渚に消えた恋 Wishing You Were Here」か。…悩ましい。…決められそうにないので、シカゴ、やめとくか?

世間の常識からすれば、ピアノマンと言えばビリー・ジョエルかエルトン・ジョンということになろう。この2人は季節感さえ誤らなければ、もうどの曲でも問題なくオーケーだろう。しかし、待てよ…、アゲイン。どちらも好きな曲が二桁はあるぞ。候補曲を書き出してみたところ、エルトン・ジョンに至っては20曲以上出てきてしまった。これは、…あかん。決められない。決められないなら、やめとくか?やれやれ、困ったことになってきたぞ。

ともあれ、自分はギターが好きなので、普段はあまり意識してピアノを聴くようなことはしていない。人前で演奏したのはドラムスとベースなので、メロディや曲構成ではなく、演奏を聴くときはベースのフレーズなどに意識が行ってしまう。ピアノに関しては、むしろ手数が多くないほうが好きだったりもするので、上手いピアニストが好きではないかもしれない。とりわけ、グランド・ピアノの低音が苦手なので、左利きのピアニストは好まない。ピアノは高音が好きだ。トイ・ピアノの音も大好きと言えば、傾向はお分かりいただけるだろうか。

実は相方の小松氏の予定セットリストはすでに提示されているので、番組の方向性はある程度掴めている。面白いのは、小松氏のリストに並ぶアーティストは皆好きだが、自分では絶対に選ばない曲ばかり並んでいることだ。曲の好みなんぞ人それぞれ、本当に千差万別だ。店にいらっしゃるお客様からリクエストを受けるにしても、「え、そっち?」みたいなことはしょっちゅうある。小松氏の場合、好きなアーティストばかりかけてくれるので、番組自体は非常に楽しめているのである。

自分はせっかくなので、7インチ盤専門店をやっていることも話題にしたいので、すべてアナログ・レコードで、それも極力7インチ・シングル(ドーナツ盤)でかけるようにしている。これはこれで、リードタイムが長かったり、音量レベルも一定ではないので迷惑な話かもしれないが、こうしていることで自分の楽しさは倍増するので止められない。そういう意味では1990年代2000年代の音源はほとんど無理と言ってよい。ただその時期にリリースされている盤が全く無いというわけではなく、アナログ・サウンドに拘りのある連中が枚数限定でリリースしてくれたものは、ほぼ当たりだったりする。機会があれば自分のトーク・イベントで特集してみたいものだ。

イベントであれ、ラジオ番組であれ、毎度、毎度、選曲には非常に苦労する。その辺は拘る性質なので仕方がない。でもしょっちゅう書いていることでもあるが、苦しみを伴うとはいえ、非常に楽しい作業なのである。当たり前過ぎてはつまらない、あえてその曲をかけるからにはそれなりの理由も必要だろうし、同時に説明できなければ意味がない。正直なところキーボードは専門外だが、だからこその拘りもあれば、好きなフレーズもある。先般亡くなったギター・ヒーロー、エディ・ヴァン・ヘイレンが弾くキーボードは、鍵盤奏者に言わせれば、普通は使わない変なコード進行だと言う。ギタリストであるが故のフレーズなのだろう。そういうものが見えてくるのも面白そうだが、さあこの手の話題で会話が弾むのだろうか?嗚呼、その前に選曲、選曲。

今現在、エディ・ヴァン・ヘイレン追悼文がウェブ上に溢れているので、自分は少し落ち着いた頃にでも書くとしよう。ともあれ、R.I.P.

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