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7インチ盤専門店雑記549「ヘルプ・ミー」

ジョニ・ミッチェルは普段あまり聴きません。アルバムは段ボールにしまわれている状態です。…昔、聴き過ぎました。でも店ではリクエストも入りますし、時々は耳にします。7インチ盤は結構売れます。彼女のヒット曲「ヘルプ・ミー」の7インチ・シングルは実にいい音で鳴ります。1974年1月リリースの名盤「Court And Spark」収録曲ですが、アルバムとは格段の違いを示すシングル盤です。ジョニ・ミッチェルはあまりオーディオ趣味的な聴き方をしてこなかったのですが、この盤のせいであらためて聴きたくなりました。ただアルバムは大人しい鳴りの印象しかありません。

ギターのカッティングが集中を促す導入部、そこに仰け反らせるようなドラムスが入ってきます。この瞬間、空間認識が働きます。ギターでは特に感じられない距離感が、もの凄く近いことに気づかされ、ボリュームを絞るべきか、アンプに手が伸びるところまでいきます。その後
、ヴォーカルが出てきたところで思いとどまらせるところまでが、アーティスト・サイドの意図したことのように感じられます。LPだとこの儀式にも似た毎度繰り返してしまう行為が省かれます。A面2曲目ですから、アルバム全体のゲインが知れております。その違いでしょうか。

ただし、私の手元にある7インチ・シングルが見本盤なんです。この盤の将来的な価値が分かっていた人間の手に渡ったものらしく、ほとんど未使用に近い状態です。スリーヴのテープ痕、書き込み等もありません。赤ワーナーのカンパニー・スリーブも含め、ピンピンです。マトリクス・ナンバーは1-A-1、文句なしの1枚です。

さてこのドラムス、ジョン・ゲランJohn Guerinが叩いております。フランク・ザッパ人脈です。ビーチ・ボーイズのバックアップとかでも有名ですが、ジャズ系の人です。これまで取り立てて意識するような人でもありませんでした。ジョニ・ミッチェルのバックアップが最もポピュラーですかね。このアルバムはラリー・カールトンやらジョー・サンプルやらのクルセイダーズ人脈がバックアップしておりますから、演奏面では文句なしです。そこに起用されているので、腕はいいのでしょう。手堅いドラミングですね。

エンジニアはHenry Lewy、CSNYとかレナード・コーエンとかが実績として挙げられる人です。クセのない人です。アーティストの個性を生かすタイプでしょうか。エンジニアの好みを押し付けるタイプではありません。

こんな環境で録音されていますから、悪かろうはずもないのですが、どうしても気になるのが見本盤と通常盤の違いです。確認したいのですが、「ヘルプ・ミー」の7インチ・シングルはただでさえ超絶レアでして、簡単には手に入りません。聴き比べしたくてもできないわけです。…どなたかお持ちではないですかねぇ?でも「やはり見本盤の方がいいか」とか「変わらないね」という検証のために持ってきてくれる方なんていませんよね…。また、ストーンズの「ブラウン・シュガー」のときもそうでしたが、聴き比べるために通常盤を買うという気にはならないですよね…。

最近のオフィシャル・オーディオでも、あのイントロのドラムスのインパクトは残念ながら再現できておりません。

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