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FM84.0MHz Radio City presents "Saramawashi.com -The Vinyl Paradise" 064:50年前の音楽シーン:1972年特集

さらまわしどっとこむ -The Vinyl Paradise-
第64回(2022年12月16日(金)20時~
(再放送:12月18日(日)19時~)

清澄白河にあるカフェGINGER.TOKYOのオーナー高山聡(あきら)がお届けする音楽番組です。
全曲アナログ・レコードでお届けします。可能な限り7インチ盤で、しかもフルレングスでかけます。
サーフェスノイズにまみれた1時間、ぜひご一緒に。

今週のお題は「50年前の音楽シーン:1972年」特集です。今からちょうど50年前のミュージックシーンや流行、世相をご紹介して、時代の移ろいを感じてみようかという企画です。

1972年、高山は小学校から中学校に上がる年で、ズブズブに音楽にハマっていく時期です。当然ながら思い入れも強い年でして、番組ではしゃべり過ぎております。

前年から見てきますと、71年は8月に円が変動相場制になります。それまで1ドル360円だったわけです。NHKがオール・カラー化され、東京の地下鉄があちこちで開業し、首都高3号線が東名高速とつながったりで、どんどん便利になっていった時期です。マクドナルド1号店も71年です。その一方で成田空港工事の第二次強制代執行とか、まだ学生運動も盛んにやっていた時期で、一面的には捉えられません。

72年に入って、忘れられないのが、やはり2月のあさま山荘事件です。テレビのニュースで鉄球を打ち付けている映像をみた時のことは今でも鮮明におぼえています。そのまえに2月3日から札幌オリンピックがあって、日の丸飛行隊とか言って大いに盛り上がっていたんですけどね。ジャネット・リンというフィギュアスケートの選手が大人気でした。あさま山荘事件は、英語塾の先生にこの事件の背景で何が起きているのか説明してもらい、高山と言う人間の目が社会に開かれた最初の瞬間だったと申しております。

この年、5月には沖縄返還が実現します。同月、イスラエルのテルアビブ空港で日本赤軍による銃乱射事件がおこります。この時代、日本がテロをしかける側の国だったわけです。8月に開催されたミュンヘン・オリンピックではイスラエル人選手が殺害されるゲリラ事件もおきました。不安定な国際情勢の中、9月に日中国交正常化が実現し、10月末にパンダのランラン、カンカンが来日して人気になりました。アメリカではウォーターゲート事件、北アイルランドでは「血の日曜日事件」、サンデイ・ブラッディ・サンデイですね。そんなやはり慌ただしい印象しかない1972年の音楽シーン、シンガー・ソングライター・ブームやハード・ロック、プログレッシヴ・ロックが人気だった時代です。今回も少々ベタな選曲です。

1曲目
「Black Dog」Led Zeppelin (1971)

前年11月にアルバムがリリースされ、このシングルは12月2日に出ました。
今回も年表片手に進めます。前年7月のマクドナルド上陸1号店に続いて、72年3月には、東武東上線成増駅前にモス・バーガー1号店ができます。じわじわ戦後日本の貧しさから抜け出し、高度経済成長期を経て、ライフスタイルが変わっていく時期です。同じく3月には山陽新幹線が開業します。この年が、「鉄道100年」で、10月には大いに盛り上がりました。クルマの方も東北自動車道が11月に開通、また初心者マークが1972年10月スタートです。日本列島全体の近代化が進み、どんどん便利になっていった時代です。まあまだ集団就職列車とかあった時代ですけどね。

2曲目
「Back Off Boogaloo」Ringo Starr (1972)

1970年に入ってビートルズが解散してしまいました。そのため高山はビートルズにはさほど思い入れはありませんけど、70年代を通してのソロ活動は自分がティーンの時期と重なりますから、やはり忘れられません。ソロで最初にヒットが出たのはなんとリンゴ・スターでした。ジョージ・ハリスンがプロデュースしています。

3曲目
「Day After Day」Badfinger (1971)

これもジョージ・ハリスンがプロデュースした曲です。バングラデシュ・コンサートでも多くの有名アーティストのバックを務めたいいバンドでしたが、悲劇的な経歴を辿ることになりました。残念です。

4曲目
「Ziggy Stardust」David Bowie (1972)

ともあれ、3月25日にディープ・パープルの「マシンヘッド」、5月12日には「ローリング・ストーンズの「メイン・ストリートのならず者」、6月16日にはデヴィッド・ボウイの「ジギー・スターダスト」がリリースされます。デヴィッド・ボウイは当時から絶大な人気があったわけではないということを語り、英国盤「ジーン・ジニー」のシングル盤B面をかけました。

5曲目
「Tumbling Dice」The Rolling Stones (1972)

1972年を代表する盤、ローリング・ストーンズ「メイン・ストリートのならず者」から「タンブリング・ダイス」です。まだ板橋区にある国鉄アパートに住んでいた時代ですが、十条銀座という商店街の縁日で、ワゴンセール的に売られていた50円の7インチ・シングルを買いましてね。個人的にはレコードを買い始めた極々初期の1枚ですから、もう何百回、千回以上聴いているんじゃないかなという曲なんです。

ファッションはまだまだ60年代末のサイケなテイストも残っており、ツイギー人気によるミニ・スカート・ブームから続いて、ホット・パンツが大流行した年です。男性は長髪が定着した年と言われ、ヒッピー・ムーヴメントの残り香みたいな時代です。クルマではトヨタが2代目カローラにセリカのエンジンを突っ込んだ初代のカローラ・レビン/スプリンター・トレノを発売しました。この時点で、クルマで楽しむことのプロポーザルをしているわけです。ハイオク仕様とレギュラー仕様が選べ、ハイオク仕様で115馬力でした。楽しいクルマだったと思います。

6曲目
「Rocket Man」Elton John (1972)

英国からは名バラードを2曲続けてお送りしました。

7曲目
「Angel」Rod Stewart (1972)

この年公開の映画がやはり時代感覚を反映しております。「ダーティハリー(1作目)」、「フレンチ・コネクション」、「時計じかけのオレンジ」、「死刑台のメロディ」、「ゴッドファーザー」「猿の惑星・征服」「ヒッチコックのフレンジー」「バラキ」「ラ・マンチャの男」あたりです。この年の東映まんがまつりは、春休みが「仮面ライダー対ショッカー」、夏休みは「仮面ライダー対地獄大使」が中心でした。一方の東宝チャンピオンまつりは春休みが「ゴジラ対ガイガン」、夏休みが「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」、冬休みが「ゴジラ電撃大作戦」あたりです。またこの時期、フランス映画がいっぱい公開されます。「哀しみの終わるとき」「恋人たちのメロディ」「ラムの大通り」「ひきしお」「パリは気まぐれ」「リスボン特急」などなど。フレンチ・ポップスが大ブームだった時期ですから納得です。

8曲目
「Been To Canaan」Carole King (1972)

シンガー・ソングライター・ブームです。前年とこの72年、2年連続でアルバム・チャートの1位はキャロル・キングの2枚目「つづれおり タペストリー」です。71年2月のリリースでした。71年12月には3枚目「ミュージック」を、そして72年11月には4枚目「ライムス&リーズンズ」をリリースしています。どれも負けず劣らず素晴らしい内容ですが、やはり「つづれおり」の影に隠れてしまいます。ここでは「ライムス&リーズンズ」から「ビーン・トゥ・キャナーン」をご紹介しました。

9曲目
「Heart Of Gold」Neil young (1972)

フォーキーな曲も2曲続けてご紹介しました。

10曲目
「A Horse With No Name」America (1971)

アメリカはシンガー・ソングライター・ブームです。まだヒッピー・ムーヴメントも引きずってますし、ヴェトナム戦争も泥沼化していく時期です。この年の12月には米軍の北爆再開のニュースも流れますが、人々の心から離れたところでやっている戦争という状況になっております。シンガー・ソングライター連中がいろいろ内省的な曲をリリースするわけですが、ドンズバの反戦歌は売れませんから目立ちませんが、アルバムには収録されていました。

11曲目
「Black And White」Three Dog Night (1972)


この年のヒット曲で忘れてはいけないものがこれです。カヴァー曲中心とはいえ、大ヒットを連発していたスリー・ドッグ・ナイトですが、この年の8月、黒人公民権運動に道筋をつけた「ブラウンvs教育委員会訴訟」について歌ったピート・シ―ガ―のカヴァー「ブラック・アンド・ホワイト」をヒットさせます。人種差別反対が盛んに叫ばれていた時代の象徴的な一曲です。

12曲目
「Highway Star」Deep Purple (1972)

今となっては「スモーク・オン・ザ・ウォーター」が高校の教科書にも載っているディープ・パープルです。ロック史上、燦然と輝く大名盤「マシーンヘッド」がリリースされた1972年、もう半世紀、50年前なんです。いまだに銃規制だ、ブラック・ライヴズ・マターだと叫ばなければいけないアメリカという国に腹も立ちます。相変わらず武器供与というかたちで戦争をやっているわけです。学ばない政治家が悲しいとしか言えないんですけどね。一方のイギリス、EU離脱とかいろいろ言いたいこともありますが、内政的には落ち着かないですね。日本も然り、50年前のこんなの聴いて笑っていられる平和な日本が有り難くもあると語っております。

次回は「2022年に入手したレコード:7インチ盤編」です。お楽しみに。
番組へのご意見やお便りをください。
voice@fm840.jp

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