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7インチ盤専門店雑記488「80sの音質とは…」

80sの音質となると、どうしてもU2やポリスあたりの音が中心にあるように考えてしまいます。他にも象徴的な70sとの違いを感じたものがいくつかありまして、その一つがマシュウ・ワイルダーの「想い出のステップ Break My Stride」でした。…これはアカン、自分が聴くものではないと直感的に思ったものです。でもメロディが秀逸で耳に残るんです。何年経っても脳内再生できるほどに印象的なメロディは、ミュンヘン・ディスコに匹敵する強力さでした。エレクトリック・ポップで売れていたのはオーケストラル・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダークの方が遥かに上だったかもしれませんが、OMDの曲を今口ずさめるかというと、出てきません。…聴くと懐かしいなとは思うのですが、染み付き度が大きく違います。

そんなことを言っていて、メン・アット・ワークのサックスの音なんぞが流れると、もう完全に持っていかれるんですけどね。時代を象徴するヒット曲は凄いものです。ただメン・アット・ワークの音質はそれほど新しいというものではなかったので、リズムを含めた佇まいということなのでしょう。ある意味、80sのごった煮感、何でもあり感の為せるわざでしょうか。

時代の音ということでは、ハワード・ジョーンズという超強力なアイコンもあります。エレクトリック・ポップ、シンセ・ポップというものにはさほど興味がなかった自分を思い切り方向転換させました。この人の場合は曲がよ過ぎて、他のシンセ・ポップなどが聴けなくなるところもありましたが、まあ一時期よく聴きました。

80sがお好きではないという方が、私の周辺には何人かいらっしゃいますが、真っ先にやり玉にあがるのがハワード・ジョーンズだったりします。「どこがいいんだ?」と言われるのですが、「彼の場合は曲、メロディが抜群にいい」と回答します。音が新し過ぎて当時とっつけなかった方も、メロディは憶えていたりするわけで、やはりただ者ではなかったと思います。音の陳腐化ということは言えますが、美しいメロディは普遍です。また進化するのはリズムであって、メロディが進化するというのはないと考えます。

この人の場合、自分が惹かれたのはバラード曲ばかりで、アップテンポの曲は、ロックとは違ったウルサさがあって、TPOによっては聴けないこともありましたが、彼のバラードは絶品です。ただここにもフィル・コリンズが出てきたりするので、今更ながらにフィル・コリンズの人気が凄かったことを再認識させられます。

その一方で、時代の音として思い出すにもかかわらず、音使いはさほど新しくないクラウデッド・ハウスというバンドもありました。「ドント・ドリーム、イッツ・オーバー」という大名曲は時代を超越しておりました。リチャード・マークスもその部類でしょうか。ただ「ドント・ドリーム、イッツ・オーバー」は桁外れに時代を超越しております。フェアグラウンド・アトラクションの「パーフェクト」やスイング・アウト・シスターの「ブレイクアウト」も同類ですかね。

「パーフェクト」に関して、「いつの時代の曲か分からなくなるような感じが好き」と言うと概ね同意していただけるんです。ところが「ブレイクアウト」に関してはほぼほぼ同意が得られません。「あの時代の音だ」と言われてしまいます。私は、「あれは90年代の音がする」と返します。だってあの曲、1986年リリースなんですよ。86年の音じゃないですよ。80sの雑多な感覚の象徴として、今回もご紹介する予定ですが、また猛反論を喰らいますかね…。


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