ポカリとゼリーとプリンと呪い

昨夜熱が出た。

彼の実家に泊まっている最中だった。

当然のことだが病院は開いていない。


一人暮らし歴7年目。いつもは風邪を引くと

とりあえず一番近くのコンビニにポカリとゼリーとプリンを買い込みに行って、自宅にある市販の風邪薬を飲んで籠城するのだが

悲しいかなここは彼の実家。一番近いコンビニがどこか分からない。薬がどこにあるかも分からない。

知ってる範囲の中で一番近いコンビニには歩いて10分ぐらいかかる。ドラッグストアに至っては検索したところ、一番近いところで徒歩20分と出た。

とても行けそうにない。

別部屋で寝ている彼に「申し訳ない」と言う気持ちと戦いつつ

「発熱した」とLINEをした。

彼はすぐに車イスごと飛んできてくれた(※彼は車イスユーザーです)

すぐに薬を持ってきてくれ、部屋に加湿器を置いてくれた。

ありがたい。物凄くありがたい。

しかし私には他に欲しい物があった。ポカリとゼリーとプリン。

彼はベッドの私をのぞき込み、心配そうな顔で「何か欲しい物あったら言って」と言ってくれている。

(「ポカリとゼリーとプリンを買ってきて欲しい」)

この言葉、ほんの一息で言える短いフレーズ。

これが言えず、私は泣き出した。

小さい頃から「自分のことは自分で」と言われて育ち、小学生で40℃の熱があっても

保険証とお金だけ渡され

「大人になったら1人で生きていかなきゃ行けないんだから、今のうちから自分のことは自分でやりなさい」

意識朦朧になりながら病院に行き、看護士さんやお医者さんに驚かれたこともある。

「1人で生きていかなきゃ行けない」

「自分のことは自分で」

私に染み付いた呪い。

頭では「それは違う。人間は協力しあって生きるもの」と理解している(気付いたのは30歳過ぎてからだけど)。

そして今目の前にいる彼は婚約者で、一緒に住む物件を探している段階の人。

まさに私は「1人で」の呪いから脱しようとしている。

だからポカリとゼリーとプリンをお願いしたところで、嫌われたり捨てられたりはしない。

分かってる。

でも怖い。

実に30分ほど泣いてる私を見て彼はどんどん心配そうになり、でもずっと私の手を握っていてくれた。

私が呪いの殻を破るのを、急かさず焦らず待っていてくれているようにも見えた。

散々泣いて声をしゃくりあげながら私はついに

「ポカリとゼリーとプリンを買ってきて欲しいー…!。゚(゚´Д`゚)゚。」

殻を破った。

彼は「なーんだ、そんなことか!買ってくるよー」とコンビニに出掛けて行って

「何人分だよ!」とツッコミを入れたくなるレベルの量のポカリとゼリーとプリンを買ってきてくれた(笑)

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人は1人で生きるんじゃない。いや、1人では生きられない。

頭で理解していても、30年縛られた呪いはなかなか解くことが出来ない。

でも、これから「協力しあって」生きる生活が始まろうとしている。

今回破った殻は、分厚くて何層にもなった殻のほんの一部分だけだと思う。

目の前の彼に見守られながら少しずつ、殻を壊していきたい。


もしサポート頂けたら、行く離島を増やします!…嘘です(笑)車いすユーザーの婚約者との結婚資金に使わせていただきます😄