デザインリサーチの授業をしてみることから得た、良いワークショップのヒントとかリサーチの意義とか
こんちはノムラです。
今年は「大学で非常勤講師をする」という(私としては)ビッグなチャレンジをしまして、振り返りがてら学生相手にデザインリサーチを教えることで得た気づきを書いていきたいと思います。ゆるっといきます。
この記事で述べたいこと2つ
良きワークショップのヒント
リサーチしつつものづくりする意義
授業と言っても座学ではなく、130分 x 7回のワークショップをした、という感じです。いろいろトライしてみました。
リサーチャーの皆さんはワークショップすることも多いかと思うので、何かしらお役に立つ内容になるかと思います。(こんな長尺のワークショップはそうそう無いでしょうけど)
そして、インタビューやプロタイピング検証を行いつつモノ(コト)を作ることの意義などにも触れていきたいと思います。
母校の大学でデザインリサーチを教えてきました
2022年10月アタマから11月半ばにかけて、母校の千葉大学工学部デザイン学科で「デザインプロセス演習」という授業を行わせていただきました。
(授業名に「リサーチ」という単語を入れない方が学生が受講しやすいかと思って、あえて「プロセス」という言葉に差し替えてます。)
授業概要
デザイン学科の3年生向け、週1回135分、全7回という授業です。
授業プログラムの詳細は以下の記事にて述べてるので、ここでは「模擬インタビューしてソリューション提案作ってプロトタイピングまで行った」とだけ申しておきます。
授業の元ネタ
2017年あたりからいろいろワークショップに参加してきたのですが、その中で特に「これ学生の時に経験したかったなぁ」と思った2つをベースに、授業プログラムを組んでます。以下二つです。
課題内容(提出物)
学生みなさんには以下二つを提出してもらいます。
ビデオプロトタイプ
リサーチからビデオ作成に至るまでに行ったことの(ざっくり)レポート
また、基本的にグループワークで動いてもらってまして、途中の議論の記録とか中間生産物をfigjam上になるべく貼り付けてもらってます。
これってリサーチ?
提出物が映像ということは、これはリサーチというより制作の授業なのでは?とお思いの方もいるかもしれませんが、私としてはプロトタイプ検証もリサーチの一部と解釈しており、ビデオプロトタイプから疑似体験を得ることもリサーチ活動に包含されると考えています。
さらに言うなら、インタビュー等を踏まえて何らか制作して検証するまでがリサーチの1サイクルであり、原則としてリサーチ活動には何らかの制作工程が伴うものだと思っています。
木浦氏(@kur)もそんなようなこと仰ってますし。
授業を計画・実施する中で意図したこと
私自身が社会人になってから得た様々な学びを学生のみなさんに伝えたることを意図して授業プログラムを組んでいるのですが、その主たるものは「他者の視点を活かす」「良きチームワーク」の2点です。
他者視点を取り入れたモノ(コト)づくり
社会人なってから、「他者のアイデアをベースにものづくりする」「他者からのレビューを受けて方向性を定める」といった、他者からの視点に強く影響されるデザインワークを多く経験しました。
基本的に「他者の視点をうまく活用すること」が成功への重大なキーであったと考えています。
学生の頃も先生から講評を得たり、ユーザビリティテストやアンケートなどで他者の視点や行動に触れたりはしましたが、積極的に他者の視点を取り入れる、そしてそれを活用する、という感覚は持ち合わせていませんでした。
インタビューやディスカッション、学生同士のレビューなどのフェーズを設け、他者の視点を活用するパートをなるべく授業プログラムに盛り込みました。
うまく回るチームワーク
これまで経験したデザインワークにおいて、チームで動く機会はたくさんあり、失敗も成功もありました。
振り返るに、ものづくりにおいて「分業して効率よくスマートに」は失敗パターンであり、「各々が主体的にドタバタと」が成功パターンであったように思います。
前者は、1つのものを分割して各メンバーに無駄なくタスクをアサインするイメージであり、後者は、各メンバーが各々で1つ以上のものを作って、その良いとこ取りをするイメージです。
効率的な分業がうまくいくのは、すでにワークフローが確立されている場合です。新規性のある何かを提案・制作するようなタスクでは、無駄を恐れず「各々いろいろやってみる」の態度が有効です。
このあたりのことを考えていた時に、ちょうどある学生のグループワークについての愚痴が話題になっているのを目にしました。
グループのメンバーが全然やる気なくて、1人に過剰な負担がかかっている、みたいな内容です。
複数人で1つのアウトプットを出すのは、単独で行うよりも各人の負担が下がるように思われがちですが、実際には分担を検討したりコミュニケーションコストがかかったりと、負担の増す部分もあります。
モチベーションのギャップや作業ペースのミスマッチから、アウトプットのクオリティが下がることも多いです。
前述の通り、「他者の視点を活用する」を大事にしたかったので、授業はグループワークの形で進行しようと決めていました。
ただ、「一つのものをみんなで作る」ではなく、「各々が作ったものの良いところ取りをする」という形にするよう、配慮しました。
また、最終提出物も、グループごとでまとめて出すのでなく、以下のような形をとっています。
提出する動画は、グループでのアウトプットに対して各人でアイデアや観点を盛り込んでアレンジしたものととする(1人1作品提出する)
グループワークの中で各々が行ったことをレポートに書く(これも1人1つ提出)
このようにして、チームワークでありつつも、各人が主体的に行動できるよう授業を組みました。
(そしてこの形は成績評価がとても大変でした。。。)
意図したことに対する結果
他者視点を制作に取り入れられた?
インタビューメモやアイディエーションといった中間生産物とアウトプットのビデオプロトタイプを照らし合わせるに、結構うまいこと他者視点を組み込んでデザインしてもらえたと思っています。私としては満足。
ただ、学生たちがその意義や面白さを感じ取ってくれたかはちょっとわからず。いくらか私の意図に合致する感想をレポートに書かかれてはいたのですが、リサーチ&制作を1サイクル回しただけではピンと来ない学生も多かっただろうと思われます。
以下は、意義を感じ取ってくれたっぽい感想の抜粋。
授業の中では繋がりが見えたなかったけど、レポート書くために見返したら意義を理解した、みたいな感想があって「おー、確かにそういうこともあるよね」となりました。振り返り大事ですね。
チームワークうまく回った?
結構いい感じにチームワーク回ったと思います。多くの学生をチームのテーマを自分ごととして捉え、良い具合に協調しつつ力を発揮してもらえたように思われます。
上記のような感想を多数いただけました。
ただ、チームワーク苦手な学生のために「1人とか2人の少人数チームでもOK」というルールにしていたのですが、少人数チームではイマイチ楽しめなかった&しんどかったみたいで、そこは反省。次期の授業では1チーム3人以上とします。
ビデオプロトタイプという成果物形態について
映像の形でアウトプットしてもらうことに関しては、概ね好評でした。
イマドキの学生と動画はやはり相性いいですね。撮り慣れてる。
編集に苦戦してる学生はいましたが、それでも全員動画を提出してくれました。
観光地でのサービスを提案してるチームが撮影のために遠出してて、「いや、そこまでんせんでも良いのよ…」と思ったりもしましたが、撮影旅行的なノリを楽しんでいたようで、まぁ良かった。いいな青春。
学生からの評価
授業の終わりで、学生みなさんにSD法チックな授業評価をしてもらいました。結果は以下のような具合。(figjam上で「+1」スタンプつけてもらってます。)
そこそこ斬新で意義あって楽しかった、大変さはまぁ普通、という反応。
わざわざネガティブな反応返す人はあまり居ないと思うので、100%率直な感想では無いと思いますが、とはいえ概ね好感触と思って良さそう。頑張って準備して良かった。
まとめ
そんなこんなで、デザインリサーチの授業を実施してみて工夫した点と、それに対する気づきやフィードバックをつらつらと書かせていただきました。
良きワークショップのヒントや、リサーチプロセスに則ったモノ(コト)づくりの意義がいくらか盛り込めたのではないかと思います。
授業としては概ねうまくいったものの、反省点もてんこ盛りでした。これらについては次期授業に向けて改善していきたいと思います。
ライフワークにしていきたいな、て気持ちで居ます。
ある程度回数こなしたら、デザイン学生向けだけでなく、非デザイナーの社会人向けバージョンとかもやってみたいところです。そしてリサーチ&プロトタイピングハンドブック、的なものを書きたいなぁーという野望があったり。(書くとは言ってない)
ではでは。お読みいただきありがとうございました。
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