デザインとは優しさと見つけたり 〜 PCDという概念に触れて 〜
8月4日に開催された、コペンハーゲン式デザイン思考を学ぶ!1dayワークショップに参加してまいりました。
STUDIO OPTさんが主催で、CIID出身者の木浦幹雄さん主導の下で1日かけてコペンハーゲン式のデザイン思考を実践する、というワークショップイベントです。
(講師は木浦さんおよび、Taishi Kamiyaさん、平野友規さん、田端俊也さんの4名。)
個人的な感想を述べようとすると「楽しかった、すげー楽しかった」というクソ単純な言葉が溢れ出るばかりなので、この記事は重要なキーワード(特にPCD)の大まかな説明と、ワークショップで自分が何をやったのかを淡々と述べる形のレポートにするかな...
と、思ってたのですが、書いてるうちに「コペンハーゲン式デザイン思考とは優しさを生み出し、優しさの上に立脚しているのだな」という気づきがありまして、最後に感想と見解を追記しています。
PCDについての説明とかワークショップ内容については他の方々のレポートでも書かれているので、その辺はもう読んだわ!という方は一番下までスクロールして感想のとこだけ読んでいただけたら幸いです。ていうか他のみなさん記事上げるの早え。
重要キーワード: PCD
コペンハーゲン式デザイン思考の最も重要な点は、PCD(People Centred Design)である、とのことでした。
UCD(User Centered Design)でなく、Peopleです。
サービスのユーザに限らず、その周辺の人や、さらにはその他大勢の人たちもひっくるめた「人々」を中心にデザインする、ということです。
そこではあらゆる人々を巻き込んで、人々から着想を得ます。
ユーザテストやユーザインタビューのような「ゲスト的な」ユーザ参加ではなく、多様な人々が一緒に考えて、アイデアを出して、検証するという共創の極みのようなデザインスタイルですね。
CIIDの資料PDF(英語)にアクセスすると、写真を見るだけでも多様な人たちが自ら動いてデザインしている様が見て取れます。(あと楽しそう)
その他キーワード
PASSION FOR PROTOTYPING
LEARNING BY DOING
BUILD TEST REPEAT
実践せよ!行動せよ!検証せよ!繰り返せ!
という感じでしょうか。
他にも色々大事なワードありましたが、書き上げていくとキリ無いのでキーワード紹介はこんなところで。
ワークショップ内容
「旅行」をテーマに、3〜4人でチームを組んで、丸一日かけてリサーチから提案まで行いました。
一日の大枠の流れとしては、「リサーチ」「分析」「ゴール決め」「アイデア出し」「サービスコンセプト提案」という具合です。
下図はPCDのプロセスを模式化した図なのですが、この図で言う所の左端から「CO-CREATION」あたりまでを実践するような流れですね。
■ASSUMPTION MAPPING(リサーチ準備① 連想単語列挙)
まずは5分間で、「旅行」から連想する単語をひたすら挙げていきます。
「予約」「飛行機」「有給」「荷物」「迷子」などなど...。
そしてそれらを大まかに分類します。「計画関連」とか「現地アクティビティ」とか「必須アイテム」とか、そんな括りで分けていきました。
■RESEARCH PLANNING(リサーチ準備② 調査テーマ決め)
出てきた単語から、チームメンバーが共通して興味を持っている点を探り、調査テーマを決めます。
私のいたチームでは旅行の計画に関する事項、特に「計画めんどくさい」というあたりが多く出ていたので、そこに着目してリサーチテーマを「どのように旅行を計画し、どのように感情が動いているかを理解する」としました。
そして、次に控えるワーク「インタビュー」で特に聞きたいキークエスチョンを3つ書き出します。
私のいたチームでは、以下の3つをキークエスチョンとしました。
- 旅行は好きか?旅行計画を立てるのは好きか?
- 一番楽しかった旅行は?それはどんな旅行だった?
- 複数人で旅行する時、役割分担はどんなか?
■INTERVIEW(リサーチ実施)
インタビュー実施にあたって、チームメンバーの役割を3つに分けます。
- インタビュアー
- 議事録
- インタビュイー
インタビュイーの人は一時的に他のチームへ移動し、他チームの人からインタビューを受けます。
インタビュー時間は1人に対して20分。
これを、役割を組み替えつつ3ターン行います。
(写真見てて気づいたのですが参加者の皆さん、STUDIO OPTさん提供のステキ空間をフル活用してインタビューしてたのですね。窓際いいなあ。)
■RESEARCH ANALYSIS(分析)
インタビューで気づいた点をポストイットに書き出し、カテゴライズします。
これらを元に、インサイト(想い・考え)を導き出します。
私のいたチームでは7つくらいインサイトが挙がったのですが、それらを整理、統合して以下3つにまとめました。
旅程の大枠(目的地とかアクティビティ)は自分で決めたい。でも移動手段とか時間配分とかの細かいとこは誰かに調べてほしい。
誰かの立てたプラン乗っかる場合、それが現地での状態・状況(疲労、気分、その他外的要因等)にマッチしていないのは嫌。
ある程度は不確定要素を楽しみたい。でもそれは自分でコントロールできる範疇であること。
(盗難に会うとか命の危険とか、想定外すぎる事態は避けたい。)
ここまでで、プロセス図の「RESEARCH & ANALYSIS」が終わったことになります。
■Opportunity(ゴール設定)
では次に、インサイトからOpportunity(= ゴール + 制約)を定めます。
前段で、「計画めんどくさい、でも自分で計画をコントロールしたい、でもきっちりコントロールできてもツマラナイ」という我儘いってんじゃねーよと言いたくなるインサイトが見えてきたわけですが、これを「どうすれば〜を解決できるか」という言い回しで書き表します。いわゆるHMW(How might we ~ ?)というやつですね。
私のいたチームでは、以下のようにOpportunityを定めました。
どうすればストレスなく旅行計画を立てることができて、
かつ現地の状況を柔軟に楽しめるか
■IDEATION(アイデア出し)
さて、次はアイデア出しです。個人的にワークショップで一番好きなところです。
ここで一つ面白い趣向がありました。
各チーム、ファシリテーター1名を残して別チームへと移動します。実質的にはチームメンバーのシャッフルです。
(いきなりバタバタとチーム組み替え、の図)
ここまでウンウンと頭抱えて叩き出したインサイトやゴール設定から一旦離れて、よそのチームのアイデア出しに取り組むことになるわけです。
「ここまで決める過程でいろいろ思考して議論しているので、それがバイアスに成り得る。ので、別チームからアイデアを出してもらう」とのこと。
アイデア出しは3分ブレスト+5分シェアを2セット行い、チームを再度組み替えてさらにもう2セット行ないました。各チーム30〜40個くらいアイデア出てましたかね。
■CONCEPT MAPPING(サービスコンセプト作成)
さて、チームメンバーを元に戻し、アイデアを分類、統合、整理します。
そして1つのサービスを形作ります。
想定ユーザー、ユーザにもたらす価値、他サービスに対しての位置付け、シナリオ... などなど検討し、1つのシート上に整理していきます。
私のいたチームでは、アイデアの中に複数あった「現地人による旅行サポート」系のアイデアを整理し、現地駐在員の配偶者に移動ルート等を相談、ガイドしてもらう「駐妻トラベルコンシェルジュ」というサービスを提案することにしました。
「現地の美味いレストランは駐妻に聞け」「駐妻は退屈してる人多いらしい」「駐妻の生活は鬱々としがち」といった情報(噂?)をベースにした、旅行者側もガイド側もハッピーに!というような提案です。
ちなみに余談ですが、コンセプトを整理する過程で「ボクの駐妻」というサービス名を思いつきました。が、他2名のチームメンバー(女性)に提案する勇気がなく、上記のような若干硬い感じのネーミングとなりました。
こんな自分が悔しい。
ここまでで、プロセス図の中盤まで終了ですね。
本来のプロセスであればこの後にPROTOTYPING・TESTINGと続くのですが、今回のワークショップはここまでで作業終了。プレゼンへと入ります。
■PRESENTATION(提案発表)
プレゼンです。各チームそれぞれの提案と想いを語りました。
質疑応答でもいろいろ気づきを得られました。
■Q&A(ワークショップ総括)
全プレゼン完了後、全体を総括するフェーズへと入ります。
ここでまた他所では見られない趣向がありました。
全員で、車座になっての質疑応答です。
とてもフランクな雰囲気で、みなさん好奇心の湧き出すままに発言してらっしゃったように思われます。
感想と個人的見解 〜コペンハーゲン式とは〜
最後に、「コペンハーゲン式デザイン思考」とはなんだったのかを改めて考えてみます。
このワークショップで、私にとって特に印象的だったのは
- PCD(People Centred Design)という言葉
- チームをシャッフルしてアイデア出し
- 車座になって反省会
の3点でした。
人同士の繋がりを強く意識してんだなぁ... と漠然と思いつつ、ツイッターをチェックしていたら講師の木浦さんのツイートに目が止まりました。
このツイートが、全てを物語っているんじゃないですかね。
みんなポジティブで失敗を恐れない。むしろ失敗を褒める。
あらゆる人の想いと行動を大事にして、あらゆる人がフラットに意見し合える場を醸成するのが、コペンハーゲン式なのであろう... と。
世界を優しくして、良いデザインが生まれやすくすること。
良いデザインで、世界を優しくすること。
この、「デザインという名の優しさ」を言葉と行動で顕したものがコペンハーゲン式デザイン思考であり、それを1日という時間に濃縮したのが、今回のワークショップであったのですね。
と、なんかソレっぽい感じのこと言って締めさせていただきます。
お疲れ様でした!
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