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アメリカでホームレスとお友達になったよ


アメリカに留学していた時。

要領がつかめてきた2学期目、私はExceptional people という授業を選択してみた。

直訳すると、“例外な、特別な人々"。
ざっくりしすぎているけど、なんとなく想像はつく。

私には重度の知的障害、自閉症のある弟がいる。
おそらくそのような環境の人たちのことも扱う授業だろう。海外ではどんなふうに関わりを持っているのかなと、ふと気になった。

そんなちょっとした興味と、仲の良い現地学生の友達が一緒に授業取ろうよと言ってくれたことで、あまり深く考えずにこの授業を選択した。


授業で扱うことのだいたいの内容は予想通りだった。
身体的や知的なハンディキャップのある人たちの現状や関わり方。

Miley Cyrusの曲に合わせての手話ダンスみたいなものも授業にでてきて、全体的に重苦しくなくポップな学び方で、こういう入口もいいなと思った。

1つだけ、予想外だったものが、実習課題。

それぞれに割り当てられた福祉施設などへ行き、ボランティアとして実習をするというもの。講師が行き先を振り分け、生徒側に選択権はなかった。

私に割り当てられた場所は、ホームレス支援施設。

実習は何度もあり、毎回そこへ1人で行かなければならないらしい。

留学前、私は交換留学という形に徹底的にこだわっていた。
アメリカで語学を学ぶのではなく、アメリカの現地学生と同じ授業を受講したかったからだ。そのために自分なりにものすごく勉強もした。

それなのに、ホームレス支援施設へ1人でぶち込まれると決まった時には、留学生やから免除してくれよという姑息すぎる願望が1番に湧き出てきた。それくらい、嫌だった。


そんな中迎えた初めての実習日。

まだ周りが少し暗いくらいの朝早くに起きて、まだ誰も起きてきていない寮のキッチンでシリアルをかき込み、乗ったことのない路線のバスに1人で乗り支援施設へ向かう。不安しかない。

所定のバス停で降りて、歩いて向かう。

ありました。こちらです。

もうなんか色々こわい。


施設名と時間だけ与えられた状態なので何も分からず、恐る恐る入ってみる。

アメリカ人のお姉さん2人が迎えてくれて、あーボランティアの子ね!と手際よく案内してくれた。

実習の受け入れに手慣れていた様子から、きっと毎学期ここに誰かしらは1人でぶちこまれてるんだろうという頼りない安心感だけでお姉さんについて行く。

じゃあこれをお願い、と、施設の受付をするように指示され、登録されているホームレスの名前一覧のリストを渡される。

来た人に名前を聞き、リストから名前を見つけ出して、チェックをするだけの簡単なお仕事です。って一見思うんやけど、

名前の横に注意事項が色々と書いてある。

強盗、窃盗、暴行、性犯罪...

皆さんの前科がずらり。

この受付、重たすぎる。
ポップな手話ダンスの授業どこいってん。

そんなことを考えながら受付に座っていたら、ぱらぱらと登録されているであろうホームレスの人たちがやって来た。

名前を聞く。リストから探してチェックをする。
それだけでいいのだが、どうしても名前の横の前科まで見てしまう。

How are you? って言いながら心の中で、

(この人は窃盗かあ...何盗んだんやろ)
(あ、こいつ性犯罪してるやん...)
(うわ暴行きた。今はやめてな)

と、いちいち考えてしまう。集中力ゼロ。


前科がある人も、無い人も、それぞれになんらかの事情があって、今ホームレスとして今ここに支援を求めてきてる。

家族とかいるんかな、とか、バックグラウンドまで考え出すとどうしてもどよーんとした気持ちにもなってしまう。

そんな状態で受付に座っていたら、私の目が死に始めたことに気が付いたのか、お姉さんが厨房の仕事とどっちがいい?と聞きに来てくれた。

厨房。

と即答。

厨房で何するんか知らんけど、この受付よりたぶんマシなはず。

厨房へ行き、言われるがままに頭にネットをかぶり、手袋を装着。

指示をしてくれるおばちゃんのブラックイングリッシュがすごすぎて、言うてることが3%くらいしか聞き取れない。結局ここでも不安になる。

だが周りの様子を見てみると、ただただ野菜をぶった切り、でっかい鍋にぶち込み、置いてあるものと混ぜてるだけ。

無法地帯クッキング。
指示聞き取れなくてもこれはいける。

ひたすらに野菜を切り、小学生の時に給食室で見たような大きい鍋にぼんぼん放り込み、混ぜる。その繰り返し。

受付を済ませたホームレスの人たちが来たら、お皿に入れて渡す。

無言で受け取って、無言で食べる人。

小さくお礼を言う人。

フレンドリーに話しかけてくる人。

ホームレスにもいろんな人がいるんやなあ。

あたりまえやけど、今まで接する機会もなかったからこんなことも知らなかった。

結局最後の実習まで、私は厨房を選び続けた。
ご飯を渡す時にいつも話しかけてくれる人とは顔見知りにもなった。

デコレーションされているケーキが出た日は、形が崩れないように、ケーキの模様が見えるように丁寧に切って出した。

それだけでものすごく喜んでくれた人たちがいた。

こんな綺麗な状態でケーキが出てきたことない、素敵な模様がついてたの知らなかった、って。

You made my day と笑顔で言ってくれる人もいた。

たった数ヶ月のちょっとしたやりとり。
彼らはもうきっと覚えてないけど、私は考えさせられることもたくさんあって、今もはっきり覚えている。

そんな実習が終わった頃、金曜日の夜に現地学生の友達とダウンタウンに遊びに行った。

歩いていたら、施設で顔見知りになったホームレスのおじちゃんとばったり。

「わあー!!元気?」

「元気元気!金曜日やからお出かけかー?」

友達横でドン引き。

私もきっと日本に留学してる外国人の友達が、突然ホームレスとべらべら喋り始めたらびっくりすると思う。

おじさんとちょっと話してバイバイした後も友達はまだ引いていたので、見た目あんな感じやけど、悪い人じゃ無いねんで〜みたいなことを話した。

でもよくよく思い出すと彼の前科、窃盗。

ごめん、悪い人じゃないはまあまあ嘘やわ。

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