リングフィットが与える経験 ―人生がRPGだということ―
コロナ禍での生活。運動不足。リングフィットアドベンチャーは多くのひとにプレイされた。
実際に遊んでみて得られた経験は、私にとって新しいものだった。
どんな経験だったか。
多くのゲームは、キャラクターを動かすとき、コントローラーで信号を入力する。動かす必要があるのは、指くらい。十字キーを押しこむと、キャラクタが移動する。
翻ってリングフィットでは、実際に全身を動かしながら、キャラクターをコントロールする。
自分の動きに対応するキャラクターと画面に映る景色を眺めていると、あたかもゲームの世界に入り込んだかのような一体感がある。
リングフィットでは現れる敵を倒すと経験値が入手でき、レベルが上がったり、新しい技を覚えたりする。そのあたりはRPGゲームのような仕様だ。
しかし、多くのゲームと違うのは、経験値を得ることによって、キャラクターだけではなく、実際の身体が変化していくことだ。
1日プレイしただけで大きな変化があるわけではない。しかし、適度なプレイ時間を遊んだ後でも、体が温かくなったり、体が軽いように感じたりする。翌日は軽い筋肉痛になったりもする。もちろん根気強く続ければ、体型も変化するだろう。
上記のように、ゲームのキャラクターに経験値が入るのと別軸で、現実の体も変化していく様は、ゲ―ムの世界と現実の世界を滑らかに繋いでいる。あたかも自分がキャラクターになってしまったかのように。
そのような気分は、ゲームを切ったあとも続いていく。
話がそれるが、私は最近趣味でボイトレをしている。
このときも、ゲームをしているわけではないのに、自分がキャラクターになり、経験値を稼いでいるような感覚が残っている。
先週できなかったことが、少しずつできるようになる、変わっていく。そのような変化に敏感になり、さらには変化を楽しめるようになってきた。
この経験は、自分に新しい価値観を与えてくれた。
自分自身が、自分自身を行動させ、変化させていく。そのように考えると、いままで何気なく過ごしていた1日が、どんなものにでもなれる、可能性を秘めた1日のように感じられる。あたかも自分はゲームの主人公であるかのように。
確かに人生は、ゲームではない。
ゲームのように、一夜漬けでLvをあげまくったり、行ったことに対して目に見える報酬が直ちに与えられるわけでもない。攻略本もない。
しかし、時間をかけて向き合うことができれば、自分は変わっていく、育てることができる。いつのまにか、そんな気持ちになっていることに気づく。
もう自分は成長期をとっくに過ぎてしまった(無駄にしてしまったと感じる)人間だけれど、これからもどんどん育てていけるんだ、というような希望を感じる。
リングフィットアドベンチャー、ありがとう。
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