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起業家、会社員、公務員まで、秘密裏っぽく人が繋がる、アジトのようなシェアオフィス。まさに関内そのもの!?

関内のシェアオフィスG Innvation Hub Yokohama(以下G)は、2019年にスタートし、この6月で5周年を迎えました。これまで、入居者さんや、Gとかかわりの深い関内で働く方々をインタビューしてきましたが、先月から4回にわたりスタッフを紹介しています。最終回は、ファウンダーの相澤毅さんです。「焦らず、誠実に、実直に」にGを作り上げ、いつかGの文化が関内のまちに滲み出ていく日を心待ちにしています。


関内に本社を置く企業として、地域のためになる新たな事業を模索

 大手生活ブランド会社を経て、リストの社員となり15年間過ごしました。関わった業務は物件仕入れ、企画、施工、販売営業、仲介、開発のプロジェクトマネジメントや企画、広報の立ち上げ、他社との連携や海外事業のスキーム作り、新規事業、人材育成の制度設計、経営企画…と多岐に渡り、やっていない業務を話したほうが早いくらい(笑)。現在Gが入るLIST EAST BLD.を取得した時は、社長室に所属していました。当時は空室が多かったのですが、関内駅直結で利便性も良いビルですし、自社で活用してはどうかとという流れに。せっかく活用できる空間があるので、やるなら新規事業を検討できないか」という話になっていきました。
 リストは本社を関内に置いているわけだから、地元を大切にしていこうという考えが根底にありました。ローカルディベロッパーとしてやるべき使命が絶対にあると感じていましたし、地域や横浜市役所との関係構築、リレーションなどは確実にこれからの関内のためになると思ってやっていましたね。

関内で活躍する人材でチームを組成

 結果としてGが誕生しましたが、最初からシェアオフィスとしての活用を考えていたわけではありません。関内は、市が創造都市政策で多くのアーティストやクリエイターをこの地に呼び寄せたことで、クリエイティブなまちに変貌しました。開港の地でもあり、外側から人を呼び込み、呼び込んだ人たちを滞留させ、その人たちがまちに出て活躍できる状態を作ることは関内だからできることであり、よりまちが活性化すると考えました。このビルでもそれができる業態とは何かと考えた結果が、シェアオフィスだったのです。
最も重要だったのは、プロジェクトチームの組成でした。これまでのリストにはない属性の人たちとつながる機会にしたかったですし、リレーションする役割を担うべきだとも思っていました。だからわざわざ都内からメンバーを連れてくる理由はなくて、関内で活躍する方々に声をかけました。チームを組成できれば、あとは設計やデザインなどさまざまなプロたちが力を自由に発揮できるようにマネジメントをするだけ。自分の仕事は8割終わったようなものでした。

黒子のように花道を歩く役割の人を支えることが自分の役目

Gの運営に関しても、スタッフのやりたいことを尊重し、困ったときに手を差し伸べる相澤さん、後ろから見守り、影から支えている。

 実はリストにシェアオフィスとしての活用案を提示する少し前に、リストを退職していました。周囲から独立を勧められることは多々ありましたが、自分自身にあまりその思いはなくて。選択肢の一つとしてぼんやり考えつつ、独立経験がある知人2人に相談していたら、両者から「今が良い」と言われたタイミングがあったんです。独立して何をするのか決めないまま、翌週には退職願を出していました。会社との話し合いを経て退職したのはそれから半年後です。その後株式会社plan-Aを創業し、行政や企業の新規事業開発や創業支援、スタートアップ、不動産開発、まちづくりなどに伴走して成長を支援しています。
自分は前に出るタイプではないので、黒子として花道を歩く役割の人が安心して歩けるように整備することが役目だと思っています。関内のまちづくりに関わる中でも、意識的にニュートラルで黒子として立ち回ってきましたが、少しずついろいろな立場の方々にお声がけいただく機会が増えてきて。
。ただ、絶対に「黒幕」にならないように意識しています。いろんな人があちこちで「相澤に会ったほうがいい」と話してくれているのは嬉しいですし、一定の評価だと思っていますが、私に聞かないとすべてが前に進まないとなるとそれは黒幕です。腹をくくって動くところでは責任を取って立ち回りますが、必要以上に出ていくことはしないようにしています。それはGに関わる時も同じです。「事業主」という立場は「発注する側」なので一般的には「上の立場」に見られがちですが、良いものをチームで作っていることには変わりないので、前職在職時もプロジェクトの中では請け負っていただいている事業者さんとは常に同列で関わっていただいていました。だから喧嘩をすることもありましたし、日常的に教えを乞うこともあって今でも良好な関係です。

「焦ることなく関内により馴染んでいって欲しい」

関内の街づくりにも関わる相澤さん、Gを通じ関内をPRしたり、商店街のイベントに登壇したり。息抜きはハマスタでの野球観戦。

 Gはハブやシェアオフィスよりは「アジト」に近いイメージですね。行政の職員とかいろんな人が来て、秘密裏ではないけど秘密裏っぽくこの場で人と人とがつながっていますし、ここの空間のなせる業なのか、アンダーグラウンドな雰囲気もあるし。ドラクエでいうとルイーダの酒場みたいな感じ(笑)。もともとオフィスというよりも「人材流動拠点」と考えていたこともあって、あまりオフィス感がないですよね。それだけにオープン当初は運営する人の力量に不安感がありましたが、今のGは思い通りどころではなく、自分の想像をはるかに超えた状態になりました。成長しているというか、関内のまちにカスタマイズされていて今の形に変容したような。だから「他の地域でもGをやりませんか」という店舗展開の話もあったんですけど、他所でやるなら他所でやるための文化を作らなければならないからできないんです。ただ、運営ノウハウを得ることは運営会社のリストにとってとても大事で、それが今、横浜マリンタワーの運営に昇華されています。運営は人のマネジメントが全てですし、先のことを見越してないと動けません。そのノウハウが蓄積されていることはとても大きいと思いますね。
これからのGは焦ることなく関内により馴染んでほしいです。まめに交流を重ねたことで創造都市に関わる人たちの間で、Gは創造都市に関わる拠点として認識され始めています。例えばすでに仲間だと思ってくださっている関内桜通りやスタートアップ界隈の人たちとも現状で留まることなく、より馴染んでいけたら良いですね。「関内といったらGだよね」というレベルになると、ここの文化が外に滲み出ている証。そうなるとすごく強いですよ。関内の再開発は進んでいくのであと5年で大きく変わるはずです。我々世代が変えなければならないですし、Gはその時の急先鋒になり得るんじゃないかと思っています。表層的でないところがここの良さで、これまで丁寧にやってきたことが地域の人や行政から評価頂いて、今のバランスになっています。まちづくりは絶対に焦らず、誠実に、実直に。本音を言えばGを知らない人たちにも大々的に周知していろんな人を取り込んでいきたいというのはあります。でも、そこを焦ると中の人が混乱してしまいます。そのあたりのパワーバランスをこれからも丁寧に考えていきたいです。


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