見出し画像

歌うのが怖くなった日の話

「いつからか歌うのが怖くなった。」

最近K-POPアイドル LE SSERAFIMとして
人生3度目のデビューを華々しく飾った
宮脇咲良ちゃんの言葉に、驚きを隠せなかった。

華やかさと厳しさが表裏一体のアイドルの世界で
最前線を走り続ける人でも、歌うのが怖くなる日があるのか。

***

2021年。
薄手のコートが手放せなくなってきた時期に
私はとあるバンドに加入した。

ボーカル&キーボード、リードギター、ベース、ドラムの
バンドマン10年選手みたいな4人の先輩方に囲まれて

サイドギター&コーラスとして
初めてスタジオに入った。

ここまで全てのパートが揃っている状態でスタジオに入るのは初めてで
緊張と同じくらい
音の持つ力に圧倒されたのを良く覚えている。

私は歌が苦手だ。

気心の知れた友達と、カラオケに行くのは好き。
下手でも誰も何も言わないし、純粋に歌を楽しめるんだけど。

でも、今日は違う。

バンドという、いくつもの楽器が爆音で空間を満たしていく場所で
ギターを弾きながら、コーラスをしなければならない。

私が影響を受けてきた
たくさんのアーティスト達は、いとも簡単に
歌うことと、楽器の演奏やダンスを両立させる。

でも実際にやってみると、全然簡単じゃない。

それは私にとって、とても難しいことだった。


声が、聞こえない。


周りの音に埋もれて
自分の声が、全く聞こえなかったのだ。

もともとの声量問題もあるけれど、
そもそも腹式呼吸とか、マイクのこととか
歌に関することはギター以上に、よく分かっていなくて。

自分の声が聞こえないと、
人は上手く歌が歌えないということをはじめて知った。

あの日から、私は歌うのが怖くなった。

私のマイクの音量を上げてもらっても、
ちゃんと歌わなきゃ、、とか
なんか音外れてる気がする、、とか。

バンドでギターを弾くのは楽しいけれど
歌を歌うことだけは、憂鬱でしかなかった。

ボーカルトレーニングを受けたら、
練習を重ねたら、
歌うことを楽しめる日がやってくるのだろうか?

趣味で加入したバンドだったけど
私にとっては“楽しい!”だけではなかった。

バンド初心者が、キャリアの違い過ぎる先輩方と一緒に活動するというのは
こういうことなのだろうか。

そんなバンドマン1年生に、
加入後間もなく、大きな挑戦の機会がやってくる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?