人の成長する機会を横取りしない
「あ~もう!ダメ!全然ダメ!」
なんとも発狂寸前の叫びである。
「私には出来ない、decoちゃんが代わりにして!」
こう嘆いているのは、私の韓国人の友人、S氏である。
教会の牧師先生から、動画に日本語ナレーションを入れるお手伝いを依頼されたが、未だに満足いく発音が出来ないのだそう。
学習を始めて、10年近くになっただろうか。
熱心に日本語の勉強をしているS氏は、語学研修の為日本にしばらく住んでいたこともあり、すごく流暢に日本語が話せる人だ。
私ともほとんど日本語だけで会話をしている。
韓国にある本教会の数少ない語学人材であり、今は日本聖徒向けに、翻訳も行っていて、同時通訳もしている。
日本にいる牧師先生からも、とても頼りにされている。
そんな優秀なS氏なのだが、本人はちっとも自分の才能に気付いていない。
「私より、decoちゃんの方が発音が上手いし!」
「まぁ…一応日本人だしね」
「私なんて声も高いし、合わないよ」
「声は関係ないと思うけど」
「とにかく…!decoちゃんにナレーションを代りにして欲しいの!!!」
確かに、私にとっては楽に出来る仕事かもしれない。
動画にナレーションを入れる作業には慣れているし、日本語は私の母語だ。
私が引き受ければ効率は上がる。
けど、そんなことは決してしてはいけないのだ。
「先生はSさんを信じて、仕事を任せたのでしょう?」
「そうだけど、でもdecoちゃんの方が効果が……」
「きっと先生はSさんに
これを通してより立派になって欲しい
と思っているはずだよ。
それにも関わらず私が代わりに仕事引き受けてしまうと、
Sさんの成長の機会を奪ってしまうことになる。
だから、私がしてはいけないと思うんだ」
しばらくの沈黙。
ようやく「……分かった」とS氏が口を開いた。
「でも、分からないところがあったら、色々教えてもらえる?」
「それは任せて!どんどん聞いて良いよ」
その後、S氏は見事ナレーションの録音を終えた。
初回の録音結果を確認した結果、どうやら理想でなかったようで、見直しも兼ねて再度録音したいと担当者に申し込んだそうだ。
今は、私の録音例を参考に、練習しながら二度目のチャレンジに備えている。
一生懸命作業に取り組んでいるS氏はとてもかっこ良く見えた。
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(画像素材元:https://pixabay.com/ja/)
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