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僕はお母さんのことが大好きなカビなんだよ

夜遅く塾から帰ってくる長男とは、寝る前に「今日どうだった?」とか「最近なんか話したい事とかあったりしないの?」と訊いて話すことにしている。最近よく話題に出てくるのが小学校の図書室の司書さんの話で、ある日、「知ってる?僕、司書さんと仲いいんだよ」と教えてくれた。

どうやら長男は最近、休憩時間の度に図書室に行っているらしく、そこで司書さんと話しているうちに興味のある本が同じだったりで、何かと会話が弾むようになったのだそうだ。

それである時、図書室で集中して本が読みたいのに周りがうるさくて集中できないとこぼしたら、司書さんが普段は鍵がかかっている秘密の小部屋のような所を使わせてくれるようになったのだそうだ。長男はハリーポッターが階段下の部屋に入っていたような感じの場所だと教えてくれた。

長男はこの場所がとても気に入ったようで、静かだし、なんでもカビ臭さがたまらなく心地良いのだそうだ。

長男:かすかにカビ臭いんだけどさ、なんか、ひいおばあちゃん家の匂いみたいな、そんな感じがするのよ。でさ、仲間といると落ち着くじゃん?そんな感じなのよ。
母 :なるほど、でも仲間ってカビだよね?あんた自分をカビだって言ってる?
長男:そう、僕はお母さんのことが大好きなカビなんだよ。
母 :ほう、ありがとう。それって、お母さんにびっしりくっついてんだよね?
長男:そういうこと!

そう言って、隣で横になっていた私にぴったりとくっつくと、安心しきった表情をしていた。

可愛いなぁと思うと同時に、こんなに素敵な子なのに沢山叱ってしまって申し訳ないなと思った。こんな子が学校や大人との間で大変な目に遭ってきたなんて不憫で仕方がない気がしてしまい、なんとしても守ってやらねばだなと思った。

ところで、小部屋にいると時計もないし、チャイムが鳴ってから教室に戻るのだと遅くなるのではないかと思って訊いてみると、チャイムが鳴るより前に動けているのだそうだ。

なぜ?と訊いたら、教えないと言ってもったいぶっていたのだが、どうやらここにも秘密があったようだ。なんと、小部屋にいる長男に合図を送る目的で、司書さんがチャイムがなる少し前に、物差しをコトンと落として音で知らせてくれるのだそうだ。なんて素敵なことが起きているのだろう!

本当に魔法のような特別な世界は作れるんだと思った。